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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
世界樹の木
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「ここは不思議なところね。」


お茶を飲みながら言葉を紡ぐアイラに頷きながらセイラも周りを見回す。


世界樹の木の下で、青年に歓迎されながらお茶を飲む二人は上を見上げる。

いつの間にか出現した木製のテーブルと3脚の椅子。3人はそこでお茶を飲んでいる。

出されたお茶は今まで飲んだ事のないものだったが、とても美味しい。

透き通った色に薄い黄色がかった花びらが浮いている。


乳白色だった世界が今は大自然の背景となっている。

アルタ山脈と思われる山々、その雄大な景色を背に聳え立つ一本の大きな大きな天に聳える世界樹の木。

セイラはふと自分の生きる世界で見た神代の風景を思い出していた。ただあの風景にはこの世界樹は無かった。

心を読んだかのように青年は説明を始める。


「ここは神代でも始めの時代だよ。創世期と言い換えても良い。」


時折風が吹いたわけでもないのに枝が揺れ幾つもの金の光が舞い降りる。

それは暖かな、心を穏やかにする光景で。幻想的な景色に二人は、ため息を吐く。


「なんて奇麗なのかしら。」


とアイラが呟いて、セイラが相槌を打とうとした時、セイラはある事に気づく。

いくつかの光がセイラに近寄ってきて優しく腕に触れてゆく。


「ただの光じゃない?」


それは無意識に出た言葉だったが、青年が相槌を打つ。


「そう。この光はこれから生まれてゆく人の子の魂たちだよ。」


(人の子の魂!!)


二人は衝撃に固まる。固まる二人に気づかず青年は言葉を続ける。


「人の子は死した後、穢れを落とし、この世界樹の木を通してまた人の世界に戻っていくんだ。

君たちも幾度となくこの世界樹を通して生まれ変わっているんだよ。」


そう語る青年は金色に光る魂たちに優し気に微笑む。

青年の視線を追い、一つの金の光が躊躇うように浮かんでいるのに気が付いた。


「おいで。大丈夫。怖がる必要はない。」


その光が近付くにつれ、セイラに衝撃が走る。何故だろう、何もかもが違う。

けれどセイラの直感がその光が巫女姫アルダであると告げている。


「アルダ様」


金の光は返事をするように光を強くするとふわりとセイラに近づいてくる。

その光はセイラに会えたことを、自分がアルダである事に気づいたセイラに喜んでいるようで。セイラは知らず両腕を広げ光を抱きしめた。その瞳から涙が後から後から零れ落ちていた。


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