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両手はアイラと握ったまま、セイラの視界は光に包まれていた。
手を強く握ると握り返してくれる手がある。アイラも意識はしっかりあるようだ。
セイラがびっくりしたのは自分を後ろから支える腕があったことだ。
身じろぎすると、耳元で声がした。
「セイラ、俺だ。」
カインは(今度は間に合ったな。)と安堵した。王家の面々がこのカインを見たら、嬉々としてカインを揶揄う材料にしただろうが、残念な事に今彼らはいない。
セイラは足にも縋り付く固い手に気づいて驚く。それは小竜の前足だった。
『僕達も一緒だよ!』
『ね!!』
これは早く戻らないと親竜達が心配するわね、とセイラは思った。
光は圧倒的で周りを見る事は叶わなかったが、今回は光に優しさを含んでいるように感じたこと、自分の意識がある中での転移、またカインの腕の中にいるという事から不安を感じる事は無かった。
(今度は何処に飛ばされるのかしら?)
しばらくすると圧倒的だった光量がだんだんと落ち着いてきた。
手をつないでいるアイラの顔が見えるようになって、彼女の後ろにカイルがいる事に気づいたセイラは微笑んだ。アイラもカイルに守られつつセイラに微笑み返した。
そしてアイラの足にも2頭の小竜が抱き着いているのを見て笑ってしまった。
一行が辿り着いた場所は、花咲き乱れる楽園のような場所だった。
『ここどこだろう?!』
『とっても奇麗な花が沢山あるね! 食べられるかな?!』
『なんかあまーい匂いがするよー』
『お花の海だねー!』
とアイラとセイラの足から離れて顔を花に突っ込む小竜達。
優しい小竜達はお花の分だけ浮いて潰さないように気を付けている。
目の前の光景に目を奪われていたが、遠くにクリスタルに輝く神殿のような建物が丘の上にあるのが見えた。
いつの間にかふよふよとカインの頭の上に浮かんでいるちび太陽神がいた。
「太陽神様!」
セイラは声を上げる。
太陽神は鷹揚に頷くと「懐かしいところに呼ばれたな。」とクリスタルの神殿を見た。
「太陽神様はここをご存じなのですか??」
太陽神は珍しく困ったようにぽりぽりと人差し指で鼻を掻きながら遠い目をしている。
「知っているというか、古巣と言うか。」
珍しくいつもの自信のある返答ではなく言葉を濁す太陽神だった。




