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アイラとセイラは長の横に座り長が幻影として見せてくれる過去の出来事を感慨深く見ていた。
時に叙事詩のように、時に子供に語り聞かせるように話が進む。
竜の長の音楽的な抑揚には魔法がかかっているのか、二人の記憶に焼き付くように内容が収まっていく。
長の話は興味が尽きなかった。それは竜からの視点で語られていく。
人間と誤解が生じた時代もあった。
今は幸運にも誤解が解消された後の時代で、お互いに共存している。
竜は神の眷属と言われ高尚な精神を持つ。それゆえ人々には聖なる竜と呼ばれていた。
時代を経てもその言葉は絶えることなく次代へ受け継がれている。
「長様、私は未来の世界を少しでも良い方へ変えたいです。」
長が優しい眼差しでセイラを見つめる。
『その心を忘れるではないぞ。時の輪の乙女の心は世界に影響する。どんな時も前を向いていなさい。』
そうして長はアイラの方に視線を移す。
『お主もだぞ。時の輪の乙女の心と繋がっておるお主の心が救いとなる時が必ず来る。人の世では忘れさられておるようだが、月の乙女の安らぎ失くして時の輪の乙女の成功はないと思いなさい。』
疲れてきたのか長が体を弛緩させた。
『今日はここまでだな。我はそろそろ休むとしよう。』
遠くから覗き込んでいた小竜達がいち早く二人の授業が終わったとみて、駆けてくる。
長の休憩を邪魔しないようにと二人は駆けてくる小竜達を外へ誘導する。
黄色味の強い小竜が羽をばたばたとさせている。
『見て見て! 僕の羽大きくなったでしょう!もうすぐ飛ぶ練習を始めるんだよ。』
青色の小竜は自分の周りに水の玉をいくつも空中に浮かべている。
『僕は魔法の練習を始めているんだよ!』
私も僕も!と他の小竜達が見せてくるので、二人は笑顔で「外へ行きましょう!」と駆けだした。
アイラとセイラは親竜が見守る中、魔法で水の輪を作って小竜達がその輪をくぐって遊んだり、魔法で小竜達を空中に浮かせお手玉のようにくるくると上下に輪になるように廻して小竜達は大喜びだった。
それは誰もがこのような日々が続いてほしいと願うような優しい時間だった。




