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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
異変
7/87

7

時はディア歴562年。


場所はセレンティアの東南に位置する公国、メギナ公国が公宮での出来事。事は公子セリルが持ち帰った珍しい輝きを発する宝石の原石から始まる。研究好きな学者肌の公子は持ち帰り研究したかったのだろう。

公子はそれを自室の机の上に置いたまま公務で部屋を2週間ほど開けることとなったのだが、その公務の間にその原石に異変が生じた。掃除に入る宮女から「誰もいない部屋で声がする」「原石が震える」という報告が複数上がったのだ。

王国内を覆っている守護の魔法に変化がなかったため、魔導士一人が助手とともに公子の部屋に行き確認することとなった。そして事件は起きる。


魔導士が確認の為に原石を持ち上げた瞬間、魔法が作動し公国は暗黒に覆われたのである。

それは一瞬の事で、隣国セレンティアの太陽宮からも見ることができるほどの大きさの覆いだった。ドーム型の覆いはすっぽりとメギナ公国を覆ってしまった。

各国が兵を集めてメギナ公国へ入ろうと試みたが、覆いは何者も通すことがなかった。

また、覆いが覆われてからメギナ公国からは誰も人が出てくることはなかった。


類を見ない規模の大魔法の発動に、また公国一つが覆われてしまった事に人々は驚愕した。

周辺国の国々はこの事件に大騒ぎとなるが、その中で一番影響を受けたのはセレンティアだった。セレンティアは太陽神アレクシオと月神アデルシアを祭神として祭っている。

王族は太陽神アレクシアの血を引くと言われている。その太陽神アレクシオと月神アデルシアの聖域、始まりの森に異変が生じたのである。


―――――――――――――――――――――――――――――――


セイラは魔導士のマントを翻し太陽宮内にある回廊を急ぎ足で歩いていた。

ここ数日胸騒ぎがすると思ったらメギナ公国の事件が起きた。

自分は魔力が多かったため、いろいろな変化を感じ取れるのだと思っていた。だから魔導士になる事を両親から勧められたと思っていたが、先ほど陛下直々に自分が時の輪の乙女であることを告げられた。 今後時の輪の乙女としての助力が問われることもあると言われ、少し混乱する。


(自分に何ができるのだろう?)


両親の教育方針でセイラは貴族令嬢では通常学ばない教育も受けている。例えを上げれば、護身術に始まり剣術。また急な野宿などにも対応できるよう様々な知識と知恵を与えられた。

(外での野宿など私には無縁で意味がないと思っていたけれど・・・。今後は必要になるのかもしれない。)

知らず胸のペンダントを握りしめる。


「兄様が聞いたら大騒ぎしそうね。」


7つ年の離れた兄を思い自然と口元が綻ぶ。年が少し離れているせいか、はたまた二人兄妹の所為か兄はとても自分をかわいがってくれている。容姿端麗な上、騎士としても名高い兄は社交界で人気が高い。そんな兄が妹に甘いというのは兄の友人・知人の間では有名だった。


セイラが近道の為に太陽宮外の庭園へ足を踏み入れた時だった。

「セイラ。何をそんなに急いでいる?」

目の前に白い球体が現れ人型を形作る。いつ見ても惚れ惚れする容姿の金髪金眼の男が現れる。

そんな彼の剣術の腕は一目置かれていて、日々鍛錬を怠らない体は無駄な贅肉が無く均整が取れている。

「カイン様」

目の前に現れた男に足を止める。


「陛下が私にもメギナ公国のドーム型の覆いを確認するようにおっしゃったの。」

「一人で転移するつもりか? それとも明日出発予定の合同救助隊に参加するのか?」

「まず様子見をするだけだから、一人で飛ぼうと思ってるの」

セイラの言葉にカインは眉間にしわを寄せ、即座に答える。

「却下だな。一人は危ない。私も一緒に行こう。」

「え。そんな。 カイン様忙しいでしょう? 私一人でも大丈夫よ」

セイラは慌てて答えるが、カインは両手を組んでセイラを睨む。

「その1,お前に何かがあれば兄のアレクが暴走する。その2.お前は私の妹弟子である。

その3.師匠が心配するだろう。それに何より・・・」


理由を続けようとしたカインにセイラが手を伸ばして口を塞ごうとするが、届かなかったセイラはぴょんと飛び跳ねる。年の割に子供っぽい行動をしていることに本人は気づいていない。

「時間の無駄だ。日が暮れる前に行って帰って来るぞ」

カインはそう告げるとセイラの腰を引き寄せ転移の呪文を唱えた。


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