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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
ディア歴530年 妖精と妖精の加護
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泉に呑まれた4人は水竜巻のようなすごい流れの中を為すすべもなく流されていた。


カイルがアイラを抱きしめ、カインが自分を抱きしめているのは水竜巻に巻き込まれる寸前に見た。アイラも私も手を伸ばしたが、あとほんの少しの距離で互いの手が届かなかった。

後はもう成すすべもなくすごい水圧に流された。


水流が凄く目を開けていられない。しかも息ができない。

ごぼり、と口を開いた瞬間入ってきたのは泉の水。

空気を求めて開いた口に入ってきた水に空気を求める肺は悲鳴を上げる。


((く、苦しい!!))


アイラとセイラは苦しさのあまり目の前が真っ暗になる。

急ぎカインが無詠唱で魔法を行使し、それぞれの体の周りに空気の層を作った。

魔法は使えるらしい。

カインはほっと息をついた。が、その直後、「ぽんっ」と子獅子に変化した。

予想外な出来事に子獅子カインは目を見張る。

そして3人から離れそうになったカインをセイラが抱き留める。

淡く発光しだした二つの腕輪。


4人は水竜巻の流れの中下へ下へと落ちて行った。



*******************************



ぴちょん・・・。


セイラは自分の頬に落ちてきた水滴に意識を浮上させた。


体が鉛のように重い。

セイラはゆっくりと目を開いた。


そこは深い森の中だった。

自分達は泉に落ちた後、木の葉が舞うように水中で翻弄され、深い水底へ落ちて行ったはずだった。

ゆっくりと身を起こす。

周りには人気が無く、自分一人だけだった。皆は何処に流されてしまったのだろう?

自分が水気の無い森の中にいる事を考えるに、水流に流された後それぞれ何処かに飛ばされてしまったのだろうか?


セイラがいる森は不可思議な魔力に包まれた場所だった。

何か不思議な事が起きても不思議はないと思わせる。

空と思われる上空には太陽も月も無く、ぼんやりと白く発光していた。

この森には生物がいないのか動物の鳴き声が全くなかった。

ただただ静寂のみが支配する。


セイラは勢いよく立ち上がると声を張り上げた。

「カイン様! アイラ! 兄様!」


だが、返る声は無く、むなしく自分の声が響くだけだった。


*******************************

セイラが目を覚ましたころ、時を同じくしてアイラ、カイル、カインの3人が飛ばされた場所で目を覚ました。

3人は幸運にも同じ場所に飛ばされ、ケガも無かった。

そこはセイラが飛ばされた森とは異なる景色だった。

同じ森ではあるが、枯れ木が立ち並び、大きな石がごろごろと転がっていた。

近くに活火山があるのか硫黄臭が強かった。


「兄様、カイン様、セイラは何処に飛ばされてしまったのでしょう・・・」


不安げに問うアイラに二人は答えることができなかった。


「周りに何があるかまず確認しよう。」


3人ははぐれてしまわないように一緒に行動することにした。

ここが何処なのかわからない以上、単独での行動は危険に思われた。

セイラの事が心配なのは皆同じだったが、まず場所を確認することが先決だった。


3人は1時間ほど山を下ったのち、川を見つけた。

川は下流に向かうにつれ川幅が広がり流れが穏やかになり、崖の下に延びて行っていた。

ふとアイラが崖の下を見、顔色が青ざめたのをカイルが慌てて確認する。


「アイラ?!」


アイラが指をさした先にはセイラが眠るように氷の中に閉じ込められていた。

それはとても分厚い氷の中で、どうやって閉じ込められてしまったのかわからなかったが、

セイラは瞳を閉じたまま、自分たちを見る事は無かった。


「セイラ!!」

アイラは悲痛な悲鳴を上げた。


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