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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
ディア歴530年 妖精と妖精の加護
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神、精霊、妖精と人間のご一行は以前聖堂で聞いた泉の前に立っていた。

先ほど祈りをささげてきた聖堂は、人の目から見れば問題のない建物だったが閑散としていた。

聞いた話ではここが本来の聖堂との事だったが、アイラとセイラの目には荒れて視えた。

妖精の目を通して視る聖堂に輝きが無いのだ。


「ねぇ、ここがあの泉?」

「なんかおどろおどろしくない??」


二人が首をかしげている間に、精霊姫率いる妖精たちはちび太陽神の後ろ、つまりカインの後ろに隠れた。カインの後ろから恐る恐る泉を見ている。怖い者見たさという奴だろうか。

カインの後ろに姫、姫の後ろに妖精二人。姫の後ろに妖精というのが気になる。主従が逆になっていないか?


なんとなく禍々しい気が漂っているような気がする。

肌寒さを感じてアイラとセイラは腕をさする。

視えないはずのカイルとカインもなんとなく良くない感じのする泉だった。

カイルが信じられないというように呟く。

「なんとも聖域っぽくない泉だな。」

カインも同意見と、頷く。

しかも先ほどまで晴れていたのに、泉に到着してから急に曇天模様に代わり風も出てきた。

更に言うなら、その風が生暖かい。

(これはいわゆる幽霊が出る前触れでは・・・)

とリンド兄妹は思ったが、人外の面々も同意見かはわからない。


「「あーっ!!」」


アイラとセイラ二人が同時に声を上げ泉を指さす。

女性が姿を現したのだ。それはセイラが自分の部屋のバルコニーで見た女性で。

セイラを見たアイラに頷いた後、セイラは振り返り「バルコニーの人!!」とカイルとカインに説明する。


そうしてその女性は「助けて・・・」と乞うと苦しそうに顔をゆがめ姿を消した。

後に残されたのは静寂のみ。


「あの泉に入らないといけないのかしら・・・」

「罠っぽいわよねぇ・・・」


一同同意見である。

しかしその罠に入っていかないと彼女は助けられなさそうである。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、である。


とりあえず、泉に近寄って水中を確認しようとアイラとセイラが恐る恐る近づく。

後ろにカイルとカインが続く。

二人は泉の端に膝を折ると泉の中を覗く。

「アイラ、水は透き通っているわよ。」

「本当ね。魚が泳いでいるのが見えるわ。」

セイラが手を泉に浸してみる。

風でさざ波が立っている泉の表面に浸した手のひらから別の波紋が広がる。

二人がもっと中を見ようと顔を近づけた時、突然泉が盛り上がり波のように二人を飲み込む。

それは一瞬の事で二人は声を上げることもできなかった。

「!!!」

一瞬の判断で、カイルとカインも後を追う。間一髪二人は飲み込まれようとしていた二人の腕をつかんだ。

4人を飲み込んだ後、泉は何事もなかったかのように凪いだ。


そうして後には、ちび太陽神、精霊姫、妖精が残った。

「太陽神様。みんな飲み込まれちゃいました。」

精霊姫がこわごわと言う。

「うまく彼女を助けてくれることを祈ろう。我らには手を出せぬ領域ゆえ。」


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