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妖精もとい精霊の姫様と姫様付きの妖精が加わってなんとも賑やかな一行となった。
姫様ご一行にも目くらましの魔法をかけているので、人間の目からみたら4人の一行なのであるが、一定以上の魔力を持つ者には賑やかな一行である。
まぁ、一定以上というのは中級以上の魔導士の資格を有する者になるのでそれほど心配することはないのだが。
たまに目を丸くして立ち止まってこちらを見ている子供は将来有望な魔導士候補だろう。
妖精の目を持つようになってからアイラとセイラにとって世界は一変した。
道中訪れる聖堂の善し悪しがはっきりわかるのである。
居心地の良い聖堂とそうでない聖堂とでも言ったらよいのだろうか。
居心地の良い聖堂は空気が澄んでいて、空気中に漂う魔力が多い。
魔力がきらきらと空気中を漂っている。
カインはアイラの横を聖堂に向かって歩きながら、未来に思いを馳せる。
アイラは未来で師匠の奥方だった人で、子供の頃から面倒を見てくれた親代わりとでも言ったら良いのか。師匠と出会う前の奥方。一体師匠は今どこで何をしているのだろう。
そうして思う、未来に残してきた人々を。時折早くセイラを連れて帰らねばという焦燥にかられるが、自分は現在過去にいるのであって、この時間軸ではまだあれらの事件は起こっていない。そう、まだ起こっていないのだ。 自分の目の前で記憶を失ったセイラが双子のアイラや兄のカイルと楽しそうに会話するのを見て、未来へ連れて帰るのも躊躇われた。
ちらり、と太陽神が視線を寄越す。
「カイルもお主も難儀よの。」
「だから思考を読むのは止めてください・・・」
カインはがっくりと両肩を下げた。
アイラがカインに含みのある笑顔で話しかける。
「何か悩み事があるなら聞いて差し上げるわよ?」
「私の悩みを聞いて娯楽にしようと思っていないか?」
「真理ね。もし悩みがセイラの事だったら、喜んで助言してあげるわよ。」
カインはその言葉に動きを止める。
ここにも俺の心がばれている人がいた・・・と項垂れる。
自分は王族で王子のはずなのに、何故か振り回されている気がしてならない。
カインが項垂れているころ、後ろを歩くカイルは隣を歩く妹のセイラが、楽しそうにアイラと話しているカインを目で追っているのに気づいていた。
リラはセイラの頭の上に座って風を受けて気持ち良さそうにしている。
彼が未来から来た人間でなければ、彼を結構気に入っているリンド家の面々は二人の仲を喜んで応援するのはやぶさかではないのだが、如何せん素直に応援できないでいる。
(まぁ、それでも連れていかれそうだけれど・・・)
カイルはセイラの腰を引き寄せ、確かに今自分の隣にいる妹の存在を確かめた。




