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街道沿いのレストランで食事後、王都内でも有名な聖堂を訪れたが何も不思議な事は起きなかった。聖堂内で祈りを捧げ、聖堂外の庭でしばらく過ごしてみたが穏やかな時間が過ぎてゆくだけだった。
ただその聖堂ゆかりの泉が王都郊外にあるとの事で、急遽その泉を訪問予定地に追加した。
何でも元々の聖堂はその泉の傍にあったそうだが、王都の住民が祈りやすいように建てた聖堂が本堂よりも大きくなったのが王都の聖堂らしかった。
時に転移魔法を使い距離を稼ぎ、4人はセイラの前に現れた女性の導く場所を探してめぼしい場所に立ち寄り東へ歩を進めていたが現在のところまだ見つかっていない。
旅を始めてから1週間、一行は月神アデルシアの聖堂に向かっていた。
それはしとしとと小雨の降る日で。
女性の導く場所ではないようだったが、月神アデルシアの聖堂内に入るなり、リラがセイラの肩から飛び立ち月神アデルシアの聖像に向かって飛んだ。
「リラ!」
リラの妖精の羽がきらきらと光り飛んだ後が奇麗な放物線の光る軌跡を残す。
聖堂のステンドグラスから入る日光がリラの光の軌跡と混ざり合い虹色に光が交差する。
普段は祈りに来る者たちで溢れている時間帯のはずであるにも関わらず、セイラたち以外に人はいなかった。何か見えない力が働いているのか、聖堂内は静謐な静寂に満ちていた。
リラが月神アデルシアの聖像の右手のひらに触れた時、聖像から光が溢れ聖堂内を優しい光で包んだ。 それはとても幻想的で。
ただ残念なのは一行の会話である。
幻想的な光景を物ともしない会話であるのが嘆かわしい。
「セイラ・・・あなたの妖精が幻想的すぎるわ。」
「アイラ、私の妖精ではないわよ。 私たちのお友達のリラが幻想的なのよ。」
「アイラ、セイラ、リラは何をしているんだい?」
心配げに聞くカイルに双子はそろって答える。
「「お兄様、私たちにわかるはずがございません。」」
カイルは右手を上げ額に右手のひらを当てる。
この兄弟の会話はいつも緊張感が無い気がするのは自分だけなのか?
そういえば、アレクもそうだったな、と思い出す。
血筋か? リンド家の血筋なのか?
「カイル、今は聖像とリラを注視していた方が良いぞ。」
ちび太陽神アデルシオは面白い者を見る目で兄妹を眺めている。
月神は太陽神の妻なのだが・・・不敬な行動で無いことを祈るカインであった。
まぁ、太陽神の顔を見る限り面白がっていて、怒りを微塵も感じないのが救いではある。
次第に光が収まり最後にリラの体に納まった、ように見えた。
リラは聖像の右頬にキスをするとこちらに戻ってきた。
「アイラ、セイラ二人とも目を瞑って。」
二人はリラに言われるまま目を瞑る。
リラは二人に近づくと順に両瞼にキスをした。そうして告げる。
「月神アデルシアの加護と共に二人に妖精の祝福があらんことを。」




