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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
ディア歴530年 妖精と妖精の加護
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虹色の妖精は名をリィンディーラと言い、リラと呼ぶことになった。

セイラの頭の上が定位置らしくふわふわと頭の上を飛んだり、頭の上に乗ったり、時にはセイラの肩にも乗る。

ちなみにアイラにも懐いており、彼女が手を差し出すと嬉しそうに手に乗る。


居間にはリンド侯爵夫人、兄カイル、そしてカイン+ちび太陽神がそろっている。

余談だが、アイラとセイラは母親であるリンド侯爵夫人が居間に入ってきた時、駆け寄って子供の様に抱きつき「本物のお母様!」と喜んだ。目を白黒させたリンド侯爵夫人はなかなかに面白くそれを見逃したリンド侯爵が痛く残念がったのは後日談である。


リラはちび太陽神に近づくと首を垂れ、挨拶をしている。

神に妖精。もうなんでもありのリンド家になりつつあったのだが誰も指摘はしない。

ただそんなリンド家の光景を昔から知る古参の家令や侍女の暖かい眼差しがそこにはあった。


「こんな光景が見られるなんて長生きしてみるものですね。」

「ほんとうに。お嬢様が消えてしまわれた時は火が消えてしまったようで・・・。」

当時を振り返る者の目尻には光るものがあった。


****************************


そうして騒がしい面々は翌日の朝リンド家を旅だったのだった。


護衛や侍女を連れて行くと大所帯になることと、兄やカインの剣の腕が護衛以上な事、さらに言うならこの4人は貴族である(うち一人は王族である)にも関わらず、自分の身の回りの事が出来るので4人のみでの旅となった。ここに妖精と太陽神が加わっているが、騒ぎの元となるので姿が他の人間に見えないように目くらまし魔法をかけてもらっている。


とりあえず、今日のところは東街道をまっすぐ進むことになった。

セレンティア王都を中心に東西南北に大きな街道がそれぞれあり、流通の要ともなっているので人通りが多く両側には店などが並び賑やかな通りとなっている。

王家主導で昔作られ、定期的に整備もされているので道も整っている。国が警備の者も配置しているので安全な道となっていた。


歩きながらいろいろ街道沿いのお店や建物、そして行き交う人々を物珍しく見ていたアイラとセイラだった。さすがにカイルとカインは気を許す様子もなく二人を見守りつつ周りを自然体で警戒していた。何せ時の輪を超えた後のセイラはただいるだけで騒ぎを起こすのである。用心に越したことはない。

だんだん兄のカイルの方もカインの行動に納得する部分が出てきたのか、連携が取れつつあった。カインはふとセイラの未来の兄であるアレクを思い出していた。

(あいつもこのセイラを見たら驚くだろうな。)

何せ今は妖精付きである。あと、本人は記憶を失っているが小竜もセイラの中で眠っている。


4人は昼休憩がてらテラス席のあるレストランに入った。レストランの中は外から見たより人が入っており賑わっていた。

店内の雰囲気は洒落ていて赤を基調としたもので若い女性に人気がありそうだった。

テラス席の端の方に案内され、4人はそれぞれ席に着く。

メニューからレストランで評判の品を5,6点頼み皆で食べることになった。

アイラとセイラは席に着いた後頼んだ料理がテーブルに運ばれるまで、飽きることなく外の人通りを眺めていた。二人とも高位貴族令嬢なので通常は領地にいるか王都にいるかになるが、どちらにせよ侍女や護衛を連れての外出となる。今回のような気軽な旅が許されるものではない。

太陽神は食べないらしいが、妖精のリラは違うらしくセイラの頬を突いて自分も欲しいとアピールしていた。


「あなた人間の料理を食べれるの?!」


うんうん、と頷くリラにちび太陽神が「我は精神体だから無理だが、そこの妖精は普通に人間の食べる物は大丈夫ぞ。」と助言をくれる。


「ごめんなさい。知らなかったわ。今お皿を用意するわね。」

小皿に小さく切ったパンや取り分けた料理をセイラのお皿の横に置くとリラは小皿の前に座り自分用の小皿に手を伸ばして食べ始めた。てっきり妖精は人間と同じものは食べないと思っていた面々は興味深そうにリラが食事をとるのを眺めた。


カインはセイラとリラの様子を見つつ微笑んだ。

「お前は昔から生き物に好かれるな。聖竜に続き妖精か。」

その微笑みはとても優しげで、知らずセイラの胸がどきん、と跳ねる。

「そういえば、アイラがセイラを見つけた時も聖竜が傍にいたと言っていたな。」

カイルが思い出したようにアイラに顔を向けた。

「えぇ、そうよ。ロイが見つけてくれたのよ。で、気を失っていたセイラの上空を聖竜が飛んでいたの。ロイもセイラが好きになったみたいで気を失っていたセイラの頬をぺろぺろ舐めていたわよ」とセイラの方を見た。

セイラは領地でリンド家が飼っている犬のロイを思い出し口元が綻んだ。

大型犬のロイはとても人懐っこく、セイラの前で尻尾をぶんぶん振っていた。


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