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次の日の朝。朝食を囲む面々の顔には疲れが見えていた。
目の前には美味しそうな焼き立てのパンや、ハム、チーズ、そしてふわふわの卵に刻んだマッシュルームとほうれん草が織り込まれたオムレツ、旬の果物が並ぶが心なしか皆の手の動きが鈍い。
夜中セイラがアイラのベッドに潜り込み、アイラが悲鳴を上げた。
普段のアイラならそこまで動揺しなかったのだろうが、昨日は怪談話の後で。
ベッドに潜り込む幽霊の話もあったため、アイラは悲鳴を上げてしまった。
そしてその悲鳴は兄を起こし、侯爵が侯爵領に所用で戻っている為、カインがリンド家に滞在していたのだが、カインをも起こし、挙句に騒ぎに驚いたリンド侯爵夫人まで起こす羽目になった。
寝不足になっていないのは、ふわふわと浮いているちび太陽神アレクシオのみかもしれない。
かくかくしかじかとセイラが夜中に語った内容は、女性の幽霊に助けを求められたというものだった。
詳しい話は翌朝、という事で皆再び眠りについたのだった。
「この屋敷には守護の魔法がかけられているから、悪意のあるものは弾かれるんだよ。」
カイルが優しくセイラに告げる。
「だから、君が見たという女性は、本当に助けてほしいと願った精神体なのだろうね。」
敢えて幽霊という言葉を避けた優しい兄である。
リンド侯爵夫人は面白そうに子供たちを見つつ、敢えて口を挟まず成り行きを見守っていた。
ちび太陽神アレクシオは子供顔をきりりとさせ、セイラにアドバイスする。
「時の輪の乙女よ。話を聞くにその精神体は我らに関わりのある者だと考えられる。」
兄カイルがフォークをいったん置き、ちび太陽神へ顔を向け質問する。
「太陽神よ、セイラが行動を起こす必要があるという事ですか?」
問われたちび太陽神アレクシオは重々しく頷いた。
「そうとも言う。」
ちび太陽神のアドバイスから、セイラは旅に出る事が確定らしい。
転移魔法で移動はできるが、何処にその女性がいるのかがわからない。
地道に歩きながら関わりのありそうな場所を探していくしかなさそうだ。
「案ずるな。近くまで行けば向こうから何某かの接触があるであろうよ。」
そうしてハタと気づく。
(もしかして、あの体験をもう一度?!)
セイラはガタリツと椅子を揺らした後、じりじり椅子から隣のアイラの方に重心をずらし、アイラの腕に縋り付く。
「アイラ!」
ぎょっとしたアイラが、口をひくひくさせながら答える。
「あなた、私を巻きこもうとしてるわね?!」
妹二人が旅に出るのであれば、自分も行くのが当たり前とばかりに同行者にカイルが加わり、カインは元からセイラから離れるつもりはないので参加は確定。もちろんちび太陽神アレクシオももれなく参加である。
同行者の面々を見て侯爵夫人は一抹の不安を覚えたがそれを顔には出さなかった。
王家へ夜中からの一連の出来事と太陽神アレクシオの助言をしたためた文を魔法で急ぎ飛ばした。しばらくして王家から了承したとの文と一緒に送られてきた位置確認の出来るペンダントをそれぞれに与えた。
王家側としては太陽神のアドバイスとなれば否の返答はなく、ただ同行者の面々の安全の確認の為ペンダントを持たせられた。何かあれば、即王宮魔導士長に連絡が行く手筈となっているらしい。
今日は旅の支度に当て、明日朝一で屋敷を出ることになった。




