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カインが出窓を開けた時、アイラとセイラが兄カイルに抱き着き、成敗だの悪霊退散だのと口走っていた。そしてカイルはカインに対して勝ち誇ったような顔をしていた。
(何をしているんだこの兄妹は・・・。)
カインは、そういえばローゼンシュタイン家でも怪談話を良くしていたなぁ、と思い出す。
あの頃はまだセイラは小さかったのであまり参加しなかったが、参加していた時は、師匠のエドか奥方にぴったりとくっついていたのを思い出す。
てっきり師匠のエドが怪談話好きなのかと思っていたが、奥方の家系もそうだったのかと納得したカインである。
「カイル、見回りは問題なしだ。」
となりでふよふよ浮いているちび太陽神アレクシオが多きく腕を頭上にあげ丸のポーズを取る。
(神らしくない。)
と脱力する。
「お主の性格が影響しておるのだ。」
とにんまりと笑う。むかつく神だ。
心を読むのは止めてくれ。
王家ではこの二人の会話がなかなかに面白く、見守られているのだが当人(神)は気づく様子もない。もしかしたら神の方は気づいているのかもしれないが、気にしてなさそうだった。
「カイン殿、ありがとうございます。」
軽く会釈をするとカイルが挑戦的な目をカインに向けた。
「もしよければ、カイン殿も怪談話に参加されますか?」
暗に怪談話を怖がるような男には妹は任せされない、という意味を含めた挑戦的な誘いである。
まずセイラに近づくには、この兄をどうにかしないといけないらしい。
もちろん断る理由などないカインは是と快諾する。
そうしてリンド家では夜遅くまで怪談話に花が咲くのであった。
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(うううう。怖い。)
夜中に目が覚めてしまったセイラである。
怪談話の後、それぞれ部屋に戻り就寝したのだったが、ふと真夜中なのに目が覚めてしまった。
セイラは暑苦しさを覚え、ベッドから起き上がりベッド脇に置いてある部屋履きに足を通す。
そうして静かにテラスへ続く窓を開ける。
ひんやりとした空気が室内に流れてきて、セイラの髪と頬をかすめる。
(気持ちがいい。)
ベランダの手すりに手を掛けようとした時、空中にふわりと何かが姿を現した。
それはとても幻想的で。
そこに姿を現した女性は乞うようにセイラを見つめる。
そうして願いを告げる。
「お願い、私を助けて・・・。」そうして東の方を指さして消えたのだった。
「!!!」
一拍遅れて、女性の現れ方と消え方が不自然だったことに気づいたセイラである。
セイラはその事実に衝撃を受け、一目散にその場を去り、アイラの寝室に逃げ込んだのだった。突然ベッドに入り込んできたセイラに目を覚ましたアイラの悲鳴が屋敷内に響いたとか響かなかったとか。




