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「太陽宮の宝物殿から毎夜、すすり泣く声が聞こえて来てね・・・。」
場所はリンド侯爵家の居間である。
時は夜9時を少し回ったところ。
アイラとセイラは二人腕を組みソファに座りぴったりとくっついている。
そろそろ夏も本番で夜も蒸し暑いのだが、二人は気にする様子もなく、話に夢中になっている。
兄・カイルが暑さにだれる二人を居間で発見し、今に至る。
夏は涼しさを求めるなら、古今東西を問わず怪談話に限る。
「ある日その噂話を聞いた何代か前の王子が、噂の確認をしに側近2人と宝物殿に入っていったんだ。周りは魔導士に行かせた方が良いと言って止めたんだが、問題ないと王子が言うのでね。」
カイルはゆっくりと息を吐く。
「お兄様はその王子が誰か知ってらっしゃるの?」
セイラが我慢できずに尋ねる。
カイルは答えずに微笑むと話を続ける。
「3人は宝物殿に夕方から籠り、王子は侍従に自分が声を掛けるまで鍵を開けるなと命じて中に入っていったんだ。」
アイラがごくり、と唾を飲む。
「翌朝、王子の声掛けで外で待機していた侍従がドアを開けたんだ。王子は結局何も聞こえなかったし、見えなかったとぼやいていたんだが。」
カイルが間をおく。
そして二人の顔をゆっくりと見た後、話を続ける。
「王子の後ろの大鏡に、王子に抱き着く髪を振り乱した女性が鬼気迫る形相で王子を見つめていたのが映っていてね。」
二人が更にぎゅっとくっつく。
「侍従が黙って王子に後ろの鏡を指さして・・・王子が振り向いたんだ。そうして・・・」
その時だった。
ベランダの出窓から「コンコンッ」と窓を叩く音がした。
それは普段ならどうってことのない音量だったのだが、如何せんアイラとセイラの二人が据わるソファの真後ろで。
更に言うなら、二人は極度の緊張状態だったわけで。
二人が振り向くと白い靄っとしたようなものが映っているような・・・。
「「きゃあぁぁぁぁ!!」」
と悲鳴を上げて二人そろってソファから飛び出し、兄に抱き着く。
二人とも必死である。
「お、お兄様! 成敗して、成敗!!」
「悪霊退散!!」
二人の取り乱しようにあっけにとられる兄である。
が、しかし。二人に頼られて満更でもないのか嬉しそうである。
「いやぁ、成敗もできないし、悪霊でもないからなぁ。」
既にわかっていた兄が続ける。
「家の見回りをしてくださっていたカイン様だよ。」
二人がもう一度窓の方を見るとそこには、出窓を開けてぽりぽりと頬を搔くカインとふわふわと浮くちび太陽神アレクシオがいた。




