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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
ディア歴530年 ちび太陽神と太陽宮 
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男は拳で語り合う・・・ではなく、男は剣で語り合う、という諺が東の方の国であったような、とカインは両脇をリンド侯爵と嫡男カイルに固められ、取り留めもなく思いを巡らしていた。


ローゼンシュタイン伯爵家も武門だったが、リンド家もだったなぁ・・・と視線が遠くなる。

王(祖父)と王太子(父上)は高みの見物と決めたらしく、侍従に椅子を用意させ腰かけた後はのんびりとしたものだった。二人を見るとにこやかに手を振っている。

(まぁ、ね。)

娘の件もあるのだろうが、二人とも純粋に剣の手合わせを楽しみにしているのがわかる。


近衛騎士に借りた剣を振りつつ、慣らしている姿は重さを感じさせない。


「君は体幹がしっかりしているからな。鍛えているのだろう。」


「いえ、最近は魔導士として動いていましたので・・・」

実際普段は、魔導士長として太陽宮の執務室で書類の山と戦っていた。

答えつつカインも剣を振り、手に馴染ませていた。


始めの手合わせは侯爵からだった。


手合わせが始まった瞬間から、空気が変わったのがわかった。

一瞬たりとも気が抜けない。

この空気は馴染み深いものだった。

自然とカインの口角が上がる。

そうして気づく。自分も気分が高揚していることに。

未来での彼はすでに現役を退いていた。子供の頃に手合わせをしてもらった事はあったが、こんな高揚感は無かった。手加減してくれていたのだろう。

(ローゼンシュタイン家に住み始めたばかりの頃だったから、まだ俺も全然だったしな。)

ぺろり、と下で上唇を舐める。


昔の憧れの騎士に自分の成長を見てもらいたい。

自分の恋い慕う娘の父親に認めてもらいたい。

いろいろな気持ちが絡みあう。

剣を合わせながら楽しいと思うのは久しぶりで。


剣を左から降ろすと見せかけてから、足で回し蹴りを食らわせる。

それを身軽に躱した侯爵がにやりと笑った。


「ほう。なんとも実践向きな。」


「勝ちたいのでね。」

剣を握り直し答える。


「カイン殿の剣筋には、心あたりがあるんだがね。」


未来の詳細を語ることはできないが、剣を合わせる事でわかることもあったのだろう。

あくまで可能性としての未来の事であったとしても。


剣を合わせながら、侯爵は静かに聞く。

「娘は・・・未来で幸せだったのだね?」


剣を弾きながら、浅く息を吐きカインは答える。

「実子として育てられておりました。」


リンド侯爵の目じりにかすかな涙が浮かぶ。

「感謝する。」


それからしばらく打ち合った後、侯爵とカインは目礼し剣を収めた。


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