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男たちは剣で語り合うらしくバラ園から去っていった。
見る者が見たら、カインの両サイドをがっちりと固めたリンド侯爵とカイルに挟まれ、カインの顔が強張っているのがわかっただろう。
そんな事には気づかず、セイラは無意識に目線でカインを追ってしまっていた。
王妃がにこにことセイラに話しかける。
「貴方も剣を嗜むのでしたね。一緒に行っても良いのですよ?」
先ほどのカインの説明で自分が剣を嗜んでいたことや、自分の養父が師である事などを伝えられた。
セイラは王妃の魅力的な助言に心が揺らぐも、首を振る。
(兄弟子のカイン様の剣の腕を見たいけれど・・・また機会はあるわ。 自分の剣の腕がどれくらいなのかも知りたいけれど)
「私は王妃様達とここでお茶の続きを楽しみます。」
セイラの事を語るカインの眼差しが、とても優しい事に落ち着かない気分になったセイラだったが、その後女性だけのお茶会でさらにいたたまれない気分になるのであった。
「ところでアイラ、セイラ。二人ともまだ決まった人がいないのでしたね?
わたくしで良ければ紹介できる殿方が複数いましてよ。」
王妃が扇を広げにんまりと笑う。
そこへすかさずお母様がにこやかに反論する。
「まぁ、カタリーナ様。私の楽しみを取らないでくださいませ。」
お母様は昔カタリーナ様の侍女をしていた事があったそうで二人の仲はとても良かった。
「あら、私にも楽しませてちょうだい。うちは息子しかいないから寂しいのよ。その点娘は良いわよねぇ。着飾らせて楽しめるし、一緒にお買い物をしたり、歌劇なども見に行けるでしょう?」
アイラがこっそりと耳元でささやく。
「セイラもちゃんと断っておかないと王妃様もお母様もどんどん殿方の釣書を持ってくるわよ。」
セイラは目を丸くする。
(まだ早いのでは?)と思ったが、自分の価値観は今から30年後だったことを思い出したセイラだった。 セイラが不安そうにアイラに聞く。
「この時代の適齢期ってどれくらいなの? アイラもすぐにお嫁に行っちゃう?」
不安そうな顔をした所為か、アイラが「くぅぅぅ、可愛い!」と隣にいた私を抱きしめる。
また彼女のツボに嵌まってしまったらしい。
「大丈夫よ、セイラ! この時代の結婚適齢期は17歳―23歳ぐらいまでよ。私たちにはまだ時間があるわ。私はぎりぎりまで結婚しないであなたといるわ!」
小声で話をしていたアイラとセイラだったが、声が大きくなってしまったためか、王妃様とお母様に聞こえてしまったようだ。
「まぁ、アイラ! なんて事を言っているの。 良い人をさっさと見つけて婚約だけでもしてちょうだい。」
「そうですよ。花の命は短いのですよ。べス、やはりアイラには良い殿方を紹介して気持ちを変えさせないといけないのではないの?」
(しまった! 藪蛇だった!)と顔に書いてあるアイラをみてセイラは笑ってしまった。
「ふふふ、アイラ。今日はあなたが生贄ね。将来の私のお義兄様は誰になるのかしら?」
アイラもただでは転ばない。
「セイラ、私たちは双子でしょう。一蓮托生という言葉を知らないの? あなたのその腕輪、兄弟子とは言え、対になっているなんて、あ・や・し・い・わ・よ・ねぇ!」
そこで王妃の瞳がきらりと輝いたのは錯覚じゃないと思ったセイラである。
「セイラ、その通りよ! 私はとても気になっていてよ。あなたたちは付き合っていたの?
もしそうなら考慮してあげるから素直に言いなさいな。」
横から負けじとお母様も言葉を足す。
「セイラ、やっぱり未来でカイン様と婚約していたの? お母様に素直に言ってごらんなさい。お父様に口添えしてあげるわよ。」
恨めしそうに横のアイラを見たら、アイラは横で難を逃れられて拳を握りしめてガッツポーズしていた。アイラ、貴族令嬢だよね?
そうして、王妃とお母様の暴走は続くのであった。
途方にくれたセイラである。




