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「セイラ?」
カインがじっと自分を見つめていることに気づいた。
「いつそんな魔法を覚えたんだ?」
聞かれて自分自身も初めてだったことに気づく。
「あれ?」
何故かできると知っていた。知っていた?
「えーと?」
なんでだろう? 自分でもわからない。
でも、答えは自分の中にあるような気がする。
考えに耽っていると、自分を抱えたカインが大きな木を背に座った。
カインに抱えられたままだったので、そのままカインの膝の上に乗る形になった。
慌てて起き上がろうとするが、カインの両腕で抑えられた。
セイラの頭がカインの胸に寄せられる。
「瘴気は夜に活性化する。脱出するなら日中が良いが、今だと目立つからな。少し休め。
夕方の淡いの時間帯を狙って脱出するぞ。俺もこのまま休む。」
そのままカインは目を瞑ってしまった。
セイラはカインの胸の鼓動を感じながら目を閉じた。
規則的な心臓の音を聞いていると安心でき、セイラは間もなく眠りに落ちた。
セイラが規則的な寝息を繰り返すようになってしばらくして、カインは目を開いた。
腕の中にいるセイラを見つめる。
(生きている。)
その事がとても嬉しかった。
ここに転移した際、もうすぐ島に辿り着く寸前に、転移魔法が壊された。
聖竜の力任せの転移魔法の破壊に、一瞬攻撃態勢をとったが、相手はセイラを見守る聖竜だった。
『このまま入るは愚策ぞ。』
そうして、一足先に島の周りを確認していた聖竜はカインに気を付ける点などを伝え、お互いに位置がわかるように魔法を行使した。
中に入ってみて、聖竜の言う通りあのままここに来なくて良かったと思った。
中は瘴気に満ちており、一度中に入ってしまえば、簡単には出れない仕組みになっているのがわかる。このまま何も対策しなければ、ここも時期にメギナ公国と同じ道を辿るように思われた。 聖域だけあって場に満ちる力がすごい。その力が現状を維持していた。
瘴気が邪魔で思うようにセイラを見つけられず、焦燥感が募った時間を思い出す。
時折聞こえてくる男どもの悲鳴に「もしやセイラも・・・」と肝を冷やしたが、遠目に見えたのは始まりの塔の巫女姫の姿だった。
清廉な巫女姫の姿はもう無く、残された躯が瘴気に操られている様に憤りを感じた。
彼女の魂が安らかであることを祈った。




