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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
始まりの森
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どれくらい抱きしめられていただろうか。

まるで今までの恐怖が溶けていくように、カインの腕の中でセイラは心を休ませることができた。

この腕の中は大丈夫。 自分が安心していられる場所。

カインの腕の中でセイラは落ち着きを取り戻しつつあったが、今度は違う意味で落ち着かなくなりつつあった。

カインの頬がセイラの頬に当たっている。自覚したセイラの鼓動が早くなった。


カインはふぅ、と息を吐くとセイラを抱えたまま立ち上がる。

セイラの頬にカインの短い髪がかかる。

それはささやかな触れ合いで。

離れてしまったカインの頬をセイラは寂しいと思ってしまった。


「歩けるか?」


セイラは次々と起こる予想外の展開に疲弊しきっており、カインの腕から立ち上がろうと試みるが、かくん、と体が前に傾ぎ結局カインの腕に支えられる。


「腰が抜けてる・・・」


申し訳なさそうに言うセイラに、カインはくすりと笑うと、セイラを抱き上げた。

不安定な体制に慌てて両手をカインの首に回す。


「しっかり捕まっていろよ。」


カインはセイラに声を掛けると再び二人を包むように遮蔽と目くらましの魔法をかけた後、洞窟の外へ向かって歩き始めた。

洞窟を出た後、あまりの眩しさにセイラは目が慣れるまで時間がかかった。

太陽が天中に差し掛かっている。昼を回ったあたりだろうか。


「セイラ、この島が結界に覆われているのは気づいているか?」


「え、結界?」


「あぁ、聖竜がお前を迎えに来ていて、この島の周りを飛んでいる。ただ、中に一旦入ってしまうと出にくくなるとかで、外から助けてくれるらしい。」


いつの間に聖竜とコンタクトを取ったのかカイン様が教えてくれた。


「聖竜が・・・」


空を見上げてみるが、聖竜の姿は見つけられなかった。

が、小さい竜が結界内に閉じ込められてしまったのか、中側から結界を突いていた。

翼が不安定に揺れている。親竜と離れてしまい、ずっとここから出ようと頑張っていたのかもしれない。

知らずセイラは手を小竜に向けて伸ばしていた。


「おいで。」


小竜は何かに気づいたようにセイラの方を振り向くとゆっくりと降りてきた。

青い小竜は翼をたたむと奇麗な 黒目をゆっくりセイラに向ける。

そしてセイラの前で光の玉になるとセイラの手のひらに吸い込まれていった。


「良い子ね。しばらく寝ていてね。」


優しく呟く。

小竜がセイラの中でゆっくりと瞼を閉じるのを感じた。


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