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「セイラに何をした!!」
激高したアレクが長の胸倉をつかみ上げる。目の前で家族が、かわいい妹が飛ばされたのだ。
自分の意志とは関係なく。それは暴力以外の何物でもなかった。
「月の輪の乙女の力で巫女を覆っていた瘴気を浄化しようとしたのですが、」
長自身も驚いているのか、考えながら答えているようだった。
「意図したことではございませんが、島へ転移魔法が発動したのだと・・・」
長が言い終わる前に、カインはアレクを見て言い放った。
「アレク、後は任せた、俺はセイラを追う!」
言うや否や、カインは転移魔法を発動させた。
残された巫女二人は、自分たちが原因で一人の少女をあの島へ送り込んでしまった事に驚愕し、そして自分たちの心が、瘴気の織りから解放されたことに深い安堵を覚えた。だがその安堵した自分自身に対して強い罪悪感を覚えた。あの少女はあの島へ送られてしまったのだ。
あの魔性のいる島へ。
アンジェラは姉の無事を確認することも忘れ呆然と立ち尽くしていた。
* * *
セイラは移動中の転移魔法の中、自分が何処に飛ばされているのかわからなかった。
聞こえるかどうかはわからないが、聖竜の名を呼んでみる。
「エル・ラ・エルドラド!」
しばらく待ってみたが、何も気配を感じられない。聖竜ならもしやと思ったんだったけど。
やはり転移魔法の中からはだめか・・・と息を吐く。
自分は何処に飛ばされようとしているのだろうか。
「まぁ、すぐわかるんだろうけど。嫌な予感しかしないよねぇ・・・。 泣きたい。」
セイラは貴族令嬢であったがやはり規格外だった。普通の貴族令嬢だったら泣き出しているか、失神している事態だろう。元々の気質か。またはローゼンタイン家の育て方の賜物か。
両方の様に思われた。
先ほど長により引き出された力の名残か、指先から火花が散っていた。
セイラの力が巫女に有効であると長は判断したのだろう。故の行動であるのだと思うが。
(次に長に会ったら、抗議しよう。 無理やり力を引き出されるのは嫌だ。)
そうして転移魔法の執着地点は。
セイラは始まりの島の中心部、聖域の洞窟内にいた。
洞窟の中。
洞窟内は光る成分の鉱石が混ざっているのか、真っ暗闇ではなかった。
足元も光る鉱石のおかげで危うげなく歩けそうだ。星の輝く空間にいるようだった。
しばらく歩くと祭壇のようなものがあり、その右手には泉があった。
祭壇の上には鏡が置いてあったが、煤けて光を失っている。
奇麗な紅色のビロードの上に鏡が置かれているところを見ると、聖鏡なのかもしれない。
セイラは聖なる島を訪れたことはあったが、聖域に来たことはなかった。
「やっぱりここは始まりの島の聖域かしら・・・」
その時だった、鈴が鳴るような音が聞こえた気がした。
(泉の方から?)
不思議と呼ばれているような気がしたセイラは横手の泉に近づき、手を泉に着けてみた。
思ったより冷たいと思った次の瞬間、泉から幾重もの光が走りセイラを包んだ。
(なんか既視感)
セイラは自分を包んだ光が暖かい光だったことから焦りはしなかった。
神代の映像を見た時と似たような光だったからだ。
セイラが目を瞬いた間にセイラは違う場所にいた。
自分の体を確かめてみる。ぺたぺたと自分の腕や頬を触ってみたところ、感触がある。
「夢ではなさそうね・・・」
そして前へ目を向けたセイラは、目を見開いた。




