34
夜な夜な離宮を抜け出し太陽宮の内外を歩く巫女2名。
己が自由を奪われ、操り人形のように動かされる日々は彼女達の精神を疲弊させていた。
精神が死んだ体はどうなるのだろう。
体だけ生き続け周りをだまし続けるのだろうか。
太陽宮の奥宮に近い一角に巫女たちは来ていた。
ここら辺に守護の要があると感じているらしい瘴気が、否、あの魔性の者が探っているようだった。あの魔性の者が守護壁を破壊したら大変な事になる、とわかってはいるが何もできない自分がいた。
* * *
あの日、アンジェラは姉を見つけ喜びに涙したが、違和感があった。
何が、かはわからない。第六感ともいうべきものだったのだろうか?
それがあったから、姉の魔力の(些細な変化ではあったが)異質さに気がついた。
だが、自分の気のせいかもしれない、とも思った。
そんなアンジェラはセイラに相談し、セイラは兄に相談した。
そして今、カインを含めた4名は夜の太陽宮でアンジェラの姉ともう一人の巫女の後を追っていた。
「ご、ごめんなさい、なんか大事になってしまったようで!」
恐縮するアンジェラだった。現在のところ、姉ともう一人の巫女はただ太陽宮をさまよっているだけで、問題になりそうになかった。
「なに、確かに行動が少しおかしいから私たちも気になるところだ。幸いにも今日は私たちは非番だしな。」
アレクはなんでもない事のように言うとカインを見た。
「そうだな。」
カインに非番があるのかどうかは知らないが・・・、気になることがあるのだろう。一緒に行動を共にしていた。
アンジェラは心の中で悲鳴を上げていた。
(お姉さまの事が心配だけど、この状況美味しすぎるわ! 社交界の憧れの貴公子二人! セイラが羨ましすぎるわ!)
そんなアンジェラの心の声に気づかないセイラは心配そうに前方の巫女二人を見ていた。
(あの二人の体の中に何か違和感を感じるんだけど・・・。)
ちらり、とセイラがカインを見るとカインも小さく頷いた。
(やっぱり気のせいじゃないのね・・・。)
瘴気を感じた事のあるセイラはそれとはなく微量の瘴気を察知していた。
さりげなく、アレクはセイラとアンジェラの前方に、カインは後方に位置し守りに入った。
巫女二人が奥宮の回廊の窓の一つから見える噴水に目を止めた。
その瞬間二人の体の中から、ぶわりっと異質な魔力が広がった。
「させるかっ!」
アレクが魔力を練って噴水に防御壁を張った。
そしてカインがアンジェラとセイラを後ろへ下がらせる。
「二人を拘束しろ!」
カインの声に何処かから現れた数名の騎士が前へ駆けていく。
巫女たちは拘束されたのにも関わらず、微笑んでいる。
「ねえ、さま?」
どうしようもない違和感にアンジェラが呟く。
「くくく、私とした事が見つかってしまったわね。」
ちっとも困っていない様子で微笑む女は、アンジェラの知る姉と別人だった。
否、誰かが姉を乗っ取っているのか?
誰が?
ぞわり、と鳥肌がたった。
その時だった。
騎士たちが現れたのと反対方向から、塔の長たちが現れた。
長は懐から鏡を取り出すと、二人の巫女を鏡に映すと不思議な旋律の言葉を紡ぎ始めた。
それはこの場に不似合いな旋律で、一瞬自分たちのいる場所を忘れそうになったが、その言葉の紡ぎだす力強い旋律にセイラはびくん、と震えた。
長は古から塔に伝わる時の輪の乙女の力を開放する旋律を紡いだ。
乙女の力が無理やり解放され、二人の巫女に注がれる。
「セイラ!」
アレクとカインがセイラに駆け寄る。
だが間に合わず、セイラは発動した転移魔法で何処かへ転移させられた後だった。
読んでくださってありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、下記の☆☆☆☆☆で評価いただけると嬉しいです(*'▽')




