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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
始まりの森
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「セイラ様、お客様がいらっしゃっておりますが、いかがいたしましょう?」


太陽宮の客室で数日を過ごし熱も下がってきたセイラを誰かが訪ねて来てくれたようだ。

熱が高かった時は、何もできずに宮廷医の先生に言われるままベッドで大人しく横になり、苦い薬を大人しく飲んでいたセイラだったが、今日ぐらいからは熱も下がり始め暇を持て余していた。 そこに来客である。


「どなたかしら?」


セイラについてくれている侍女のミラが薄手のレースカーテンを閉めつつ答える。仕事のできるミラはセイラが暇を持て余している事にとっくに気づいていたようだ。 


「セイラ様の同僚のアンジェラ様という方ですよ。」 


「アンジェラ! お願いすぐ通してあげて。」


「かしこまりました。では、お茶の用意もしてきますわね。」


ミラは笑顔で答えると部屋を出て行った。

ミラと入れ替わりにアンジェラが部屋に入ってきた。


「セイラ!」


アンジェラはセイラをベッドの上に見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。

お互いに両手を広げて抱きしめあう。


「熱もう下がってきたって聞いたわ! 良かったぁ!」


「アンジェラも! 守護石の復旧に時間がかかったって聞いたわよ。魔力の方は大丈夫?」


「それを言うなら、セイラ! あなたこそ大丈夫なの?! 死にかけたって聞いたわよ!」


「あー・・・」


アンジェラの情報収集能力が長けていることを忘れていた。


「それねぇ・・・あれは仕方なかったというか。予測不可能だったというか。」


セイラは視線を泳がせた。願わくば親とお兄様には話が行かないことを祈る。


二人はお互いの近況報告を始める。いつの間にか戻ってきていたミラがお茶の用意をしてくれる。 優しいハーブの香りに心が癒される。セイラはベッドからティーテーブルに移動してアンジェラと話を続けた。


「今更だけど、こんな格好でごめんなさいね。」

セイラは謝りつつガウンを羽織った。


「ふふふ、本当に今更ね! 女同士だから気にしないわ。」


アンジェラはセイラとは対照的なウェーブのかかったふわふわの金髪を揺らして笑う。

綿菓子みたいな女性というのはアンジェラの事を言うのだと、常々思うセイラである。


「まぁ、外の方々を中に入れるのはどうかと思うけども。セイラも隅に置けないわね。外で心配そうにあなたに会いたがっていた人がいたわよ。」


「え?!」


セイラは驚く。 初耳である。

脇に控えていたミラの方を見る。


「ランセル隊長の部隊の方々ですよ。セイラ様。」


実は若い隊員のみならず、セイラの親世代の隊員も心配して訪れていたのだが。

できるミラは笑顔で答える。


「大丈夫ですよ、セイラ様。お元気になられたら顔をお見せになられれば。 男性の方は婚約者以外の方はお断りしております。」


「セイラ、婚約者いたっけ?」


「い・ま・せ・ん!」


セイラはフルフルと首を振る。本人に自覚は無いが銀髪をそのまま背に流し手と首を振るセイラは美少女なのだが、本人にはまったくその自覚がなかった。その為、気さくに声をかけられた男性は淡い期待を抱くかと思うのだが。


アンジェラとミラは顔を見合わせ目で会話する。


『お嬢様には言わないほうがよろしいかと』

『そうね。この天然具合が可愛らしいのよね。』

『そうです。そうです。』


ミラはふと自分の乳兄弟カインに思いを馳せる。

(カイン様もこれから大変ねぇ。しかもなんか拗らせてるし。)

侍女としてミラを付けたのはカインであった。

とはいえ、ミラはカインに声援を送りはするがセイラにも選ぶ権利があるので生暖かく見守っている。まぁ、カイン様はお勧めだけれども。


ミラは視線をアンジェラに戻す。

アンジェラ様もセイラ様とは違った方向で美少女よねぇ。

太陽宮は目の保養になる人が多くて良いわぁ。

ミラの中でアンジェラとセイラは目の保養人物リストに載ったのであった。


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