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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
始まりの森
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カインは急な胸騒ぎに抗えずメギナ公国の方向に目をやった。

セイラと対の腕輪に熱が宿る。ただそれは一瞬の事で腕輪は元の状態に戻った。

気になるものの、ランセルの部隊から緊急の報告などは入ってきていないため、自分自身に問題はない、と言い聞かせる。


セレンティアの王宮魔導士たち、また王宮騎士たちは良くやっている。

この状況下で良くまとまり、協力し合い国を守っている。


メギナ公国を除いたアーケイディア大陸の国々との連絡を取っていたが、ここ1週間連絡が途絶えている。 一時的なものであることを祈るが、そうでない場合はセレンティアのみで瘴気を抑え、他の国々の様子を見て、必要に応じて助けの手を差し伸べなければこの大陸は遅かれ早かれ瘴気に飲まれてしまうだろう。

救いなのは、両親である国王と王妃が泰然として動揺していない事だろう。

上の動揺はいくら隠しても緊急時には下の者に波紋の様に広がっていく。

そうなれば混乱を極めるは必至。


泰然としていると言えば、王太子の兄であるロイドも落ち着いている。

始まりの森の報告の際には、驚いた表情を見せたがそれは一瞬の事で、さすが兄だと思わずにはいられなかった。

あの島に面している海岸の領主たちの一人は、師匠であるローゼンタイン伯爵のエドである。

(アレクが二人は伯爵領に戻ったと言っていたな。)

であれば、万が一始まりの森に再度異変があったとしても最善の対策が取れる。

ほっと息を吐く。


自分の立場は太陽宮で指揮を執ること、であるのは重々わかってはいたが、自分自身に対してもどかしさを隠すことはできなかった。

(俺はつくづく指揮を執るのには向いてないな。動く方が性に合っている。)

カインは自身の執務室の机の上に、どさっと書類を置いた。


自制を自身に言い聞かせていたカインであったが、数日後にランセルの部隊の出来事の報告を受け、またセイラの仮死状態の件を聞き目を向くことになる。

カインの忍耐力が試されているのかもしれない。


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