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黙々と野営の準備にかかるセイラに周りがぎょっとしていた。
「彼女、貴族令嬢だったよな?」
「そう聞いているが。」
王宮魔導士に壁は無く、貴族も平民も関係なく一定以上の魔力と試験結果が求められる。
どんなに権力ある貴族で魔力があろうと試験結果が悪ければ王宮魔導士にはなれないし、逆も然りである。あくまで実力主義の機関である。それゆえ、その実力あるセレンティアの王宮魔導士は名を馳せており、実力も折り紙付きなのである。王宮魔導士は前衛として戦える魔導士と守りに徹する後衛の魔導士に分かれる。戦闘も可の女性魔導士は少なく、今回この部隊に女性はセイラだけであった。初めての戦闘参加で貴族令嬢と聞いていた面々は面食らっていた。正直、一から野営のいろはを教える必要があると思っていたのだ。最悪全ての面倒を見てやる必要性も考えていた。
何も言われずとも動き野営の準備をしていく様は慣れている様子で、女性故、気が利いているところもあり、40代、50代の面々は娘を見るような目で既に目が優しい。
「おい、親父殿を見てみろよ。」
20代後半の魔導士が隣の魔導士の肘をつつく。
「マジか! 親父殿が笑顔で笑ってる!!」
「親父殿だけじゃないぞ。 隊長補佐も笑顔だ!」
恐ろしいものを見たと言った感じで怯えている魔導士がいる一方で、
「むさ苦しい男だけの部隊に花がある~。」
と涙ぐむ魔導士すらいた。
そんな会話など聞こえていないセイラは、と言うと。
「あ、ここにも食べられる野草発見!」
と野営の心得など子供の頃から父親に教えられていた知識が役立っていることに感動しているのであった。
その隣で隊長がばしばしセイラの背中をたたいて笑っており、隊長補佐は苦笑いしている。
今日一日で隊に溶け込みつつあるセイラを見ながら隊長と隊長補佐は語り合っていた。
「彼女、規格外ですね。」
「だろう。貴族令嬢じゃ普通有り得ん。エドの愛娘であり愛弟子だからな。」
荒くれ魔導士を怖がらず笑顔で話しかけるセイラは場の雰囲気を和やかにしている。
更に言うなら、初めての戦闘で怯えも見せずに戦おうとしたと隊長補佐から聞いた隊長ことランセルは腹を抱えて笑ってしまった。
「さすがエドの娘だ!」
部隊の面々は夕食を食べ終え、次の日の移動に備えて就寝の準備を始める。
セイラは隊長と隊長補佐の間に寝床を用意され恐縮しつつも眠りについた。
魔性化した動物たちが元に戻った国境沿いの空は、久しぶりに満天の星が瞬いていた。




