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次の日、セイラは聖竜の言葉を思い知ることになる。
朝から王宮魔導士に招集命令が下り、急ぎ出仕することになった。
朝、ダイニングルームでお父様とお母様が、一度領に戻る話をしていて、そこへ遅れてやってきた兄様に、騎士団にも招集命令が下りたことを教えられた。
「私たちはお前たちを見送った後、領へ急ぎ転移するつもりだ。」
お父様はローゼンタイン領に戻り領内の安全を図ることにした。ローゼンタイン領の海岸沿いは始まりの森がある島に面している。始まりの森の良くない話についても王宮内では噂になっていた。
事態がいろいろ急変している。
アレクは頷く。
「わかりました。私もこれから騎士団の招集命令があるので、それぞれの団長の命令に従って辺境か、どこか問題のあった場所に行くことになると思います。」
私もお父様、お母様、そしてお兄様を見つめた後、
「王宮魔導士にも召集命令が出ているので、私もこれから王宮へ向かいます。」
それぞれがそれぞれの行くべき場所へ向かう。
セイラはお父様とお母様それぞれに抱きしめられ、頬にキスを受ける。
「カインの言う事を聞くんだぞ。」
「無鉄砲な事をしてはだめよ。」
最後に兄様に抱きしめられ、頬にキスをもらった。
アレクに肩を抱かれ一緒に王宮へ転移した。
太陽宮はいつもの煌びやかな印象が薄くなり、どこかぴりぴりとした空気に包まれていた。
王宮内の官吏や女官が忙しなく行きかっている。
「セイラ! 良かった、会えた!」
同僚のアンジェラがセイラを見つけると駆け寄ってきた。
「アンジェラ!」
自分も駆け寄る。知らず強張っていた頬に笑顔が戻る。
「辞令はもう確認したの?」
「まだよ、一緒に行きましょう! なんか王宮の雰囲気が物々しくって、ね。」
首を竦めて苦笑いするアンジェラは子爵家の令嬢である。剣術など習ってこなかった彼女は魔法には長けているが、さすがにこの物々しい雰囲気には少し委縮しているらしかった。
王宮魔導士たちが普段集い公務をこなす区画は人で溢れていた。
魔導士の中には剣を腰に下げている者もいる。剣に覚えがある者は危険な場所にも行く事になるのだろう。セイラはお守りとして剣を下げていた。女性が持っても負担にならないレイピアという細めの剣である。お守りで持ってきていた剣だったのだが・・・。
「お前が剣もできるセイラか。」
声がして振り向くと副魔導士長が立っていた。到底王宮魔導士には見えず、風貌はどう見ても盗賊団の長である。にやりと笑った顔はどう見ても悪人顔であった。
「はい?」
つい呆けた声を出してしまったセイラである。
「エドの娘で、アレクの妹だろう? 今回は俺の隊につけ。こき使ってやるぞ!」
うわぁ・・・お父様とお兄様のお知り合いだったのぉ?!
青ざめるセイラの横でアンジェラは守護石の修復部隊の部隊長に声をかけられ、そちらの部隊の方へ集まっていった。女性魔導士の大半がそのメンバーになっている。
(私もそっちが良いなぁ!)
未練がましくアンジェラの方を見ていると
「君にとっては隊長の部隊の方が安全だよ。エドとアレクの君への溺愛ぶりを知っているからね」
と隊長補佐が苦笑しながら教えてくれた。
「とはいっても、君だけ甘くしないから頑張ってね」
なるほど。要は知り合いの娘だからそばに置いて目をかけてくれるという事か。




