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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
始まりの森
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場所はローゼンタイン伯爵家の中庭。


「カイン兄様、覚悟!」


カインがセイラの剣の手合わせをしていた。少し距離を置いた先では師匠のエドとアレクが剣の手合わせをしている。元々セイラには剣の才能があり、俊敏な動きと切れ味の良い太刀筋で相手を攻めてくる。子供の頃からの鍛錬により程よい筋肉もついている。兄との会話の後からどうもセイラとの距離感を掴みかねているカインである。剣の手合わせをしている最中だというのについ、ほんとについ引き締まった体に目が行ってしまう・・・。邪な自分につい自己嫌悪に浸りたくなるが、セイラの剣は的確に自分を攻めてくる。 少し動きが大きい気もするが、楽しそうに剣を振っている姿に自分の心も高揚するが、子供の頃からの姿が頭をよぎり背徳感にも見舞われる。 難儀な男である。その所為か師匠のエドとアレクから見ると、いまいち動きに切れのないカインである。自分自身の気持ちに折り合いをつけるには、もう少し時間が必要なのかもしれない。


剣を撃ち合いながらエドとアレクがひそひそと会話する。

「父上、カイン兄上がおかしいですよ。」

エドはちらりと後方を伺うが、アレクの剣を弾きながら答える。

「やっと青春が来たんだろうよ。謳歌する前に鉄壁の父親と兄がいるがな。」

にやりと人の悪い笑顔を向けるエドである。

「青春? 兄上はもうすぐ27歳ですよ。青春終わっていませんか?!」

キョトンとしたアレクの隙をついて、エドがアレクの脇腹を剣の柄で押す。

「隙を作るな。 今のが本番だったら死んでいるぞ。 あいつにはこれからが春だろうよ。

弟子だからと言って簡単にはやらんが。」

そこでやっと気が付いたアレクが脇腹を庇いつつ目を見張る。

「やっと気づいたの?! おっそっ。」

アレクが笑いだすが、慌てて後ろに下がる。

「父上酷い! 笑わせておいてさらにスピード上げてる!!」

仲の良い親子である。 


自分の周囲が騒がしい事にも気づかず、カインはセイラの手合わせを続けながらもんもんとしていた。周りが前から自分が気づいていなかった気持ちに気づいていることも知らず、己を叱咤していた。

(俺は! セイラの上司だぞ。 いくら目が姿を追ってしまおうが、急に態度を変えるのもおかしいだろう。自然に、自然に!)


「隙あり!!」


セイラが薙ぎ払った剣が地面に転がった。


「やったあ!」


セイラは嬉しそうにジャンプして、結んだ髪も一緒に弾んでいる。

弾んでジャンプしている姿もかわいい。自分の気持ちに気づいてからセイラがさらに可愛い。

カインは両手で頭を押さえる。


そこにすかさずやってきたエドとアレクに両脇を掴まれ激励の言葉を小声でもらう。

「青春だな。悩め若人よ。」

「兄上頑張ってね。 セイラしだいだけど❤」


カインは二人の言葉に目を見張るが、言いたい事を言った二人はなんだかんだと言い合いながら、中庭から出て行った。

残された二人の間をそよ風が吹き抜ける。


カインはふと思い出し、懐に入れていた腕輪を取り出す。

赤いベルベッドの入れ物から2つの腕輪のうちの一つを取り出し彼女の手首に嵌めた。


「カイン兄様?」


不思議そうに手首に嵌められた腕輪を見ている。精巧な作りでとても細かいデザインが入っている奇麗な腕輪だった。腕のある職人の手によるものだろう。この二つの腕輪には名があるのだが、それは言わずにおく。


「お前はいろいろと無鉄砲だからな。お守りだ。」


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