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時の輪を越えて  作者: 伊藤しずく
カイン王子
16/87

16

カインは約15年前に起きた出来事に思いを馳せた。 それは冬真近のある秋晴れの日だった。

屋敷の窓から見える上空にいきなり七色の光が走ったと思ったら、眩い光の玉が現れた。

その下には師匠の奥方が空に向けて両手を広げていた。その顔は喜びと慈しみに満ちていた。

それはとても幻想的で、神話の時代を彷彿させた。

光はゆっくりと地上に降りてくると奥方の腕の中に納まった。


その腕の中には可愛らしい乳児が抱かれていた。

彼女の子供と言っても誰も疑わないだろう、それぐらいその赤子の面影は彼女の面影と重なった。白銀の髪に目の覚めるようなスカイブルーの目。将来が楽しみな赤子であった。

赤子は奥方の腕の中でにこにこと笑っていた。


遠くで聖竜の咆哮が聞こえたと思うと、やってきて赤子を一舐めして去っていったのには驚いたが。師匠が襲われる心配はないと断言したことから、カインとアレクは安心できたが、それが無ければ聖竜が人を襲いに来たとしか思えなかっただろう。師匠曰く、珍しい事だが聖竜が赤子に加護を与えに来たという。


それからローゼンタイン家でその赤子は大切に大切に育てられた。

兄であるアレクは目に入れても痛くないほどのかわいがり様で、もちろん師匠も奥方も愛娘を時には厳しく、そして優しく見守りながら育てた。

赤子はセイラと名付けられ、奥方の両親と兄上がわざわざ領地から尋ね、皆それはそれは喜んだ。何故かアレクの伯父と祖父に敵認定されてしまったカインだったが、みんなでセイラを可愛がった。


時たまお忍びで訪れる王家の面々もめろめろになるほど愛らしいセイラ。

カインは奇しくも兄ロイドがカインの幼い頃に抱いた気持ちをセイラに抱くことになる。

初めて自分が守ってやらないと、と思った人間であった。

セイラを抱き上げると生命の重さを感じるというか、この子の為にも自分は頑張って良い大人にならないといけないと思った。


その後カインが太陽宮に居を戻すまでの間、傍で見守り続けた。

はいはいを始めたセイラ、抱っこをせがむセイラ、走ることを覚えて楽しそうに駆けるセイラ。

全て愛しい思い出となっている。カインが20歳になるまでの10年間を過ごしたローゼンタイン領は彼の第二の故郷とも言える場所である。

その当時10歳だったセイラは「カインお兄様、行かないで!」と泣いて腰に抱き着いていたのが懐かしく思い出される。

成人してしまった今はそんな事を言ったら嫌がられると思い敢えて言わないが、今もカインにとってセイラは守る対象だった。自分の立場が今は王宮魔導士を束ねる立場であり、成人したセイラが王宮魔導士になった事により部下となったわけだが・・・。


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