帰りの5
───後日談
車椅子の男がとある場所まで付き添いの男性と共にやって来ていた。
「………ここ新しいマンションが建つんですか?」
「そうだね、一般人には曰くがないクリーンな古寺後ってなってるし墓地も移し終えてある、例の道しるべもね。」
納得いかなそうな表情の優矢は付き添いの男に顔を向ける。
「はぐれ共が危うく向こう側とこっちを繋ぐ扉を開きっぱなしにするのを気付けないでいたのはこちらの落ち度だけどね。」
苦笑いする男に優矢は彼を責めてもしょうがないともう一度古寺があった場所を見た。
「彼等はなんだったんですか?かなり苦しみにもがいているような感情が伝わって来たのですが?。」
男は周りを視て誰も聞き耳立てていないのを確認してためらいがちに話し始めた。
「……誰にも知られず誰からも感謝されずに平穏を保つために、恨み辛みの負の情念を飲み干す。…………そして煉獄に焼かれ情念を晴らすのが彼等〖巡浄蛇仏〗だ。
だけど道しるべを管理する特別な寺の住職が寺の宝物狙いの強盗に殺されて資料も痕跡消すために犯人たちが火を着けた。
寺は全焼してしまい道しるべの伝聞は途絶えてしまったんだ残念な事にね。」
「でもそれならたった数日であんなに苦しむなんておかしいんじゃないですか?」
「おかしくはないさ、一つの國…今で言う一つの県に一つの行き来する出入り口で他県には制約で行けない。そして何万何千もの人々の情念だよ?。昔と違って人口が多い分………耐えられなかったんだろうね。」
古寺跡をみてそこにショベルカーが近づき掘り返し始めるのをしばし眺めて優矢は目を閉じた。
(とても怖かったけど、彼等の思いも感じて………勝手に巻き込むなバカヤロー!!って思うけど……)
「……いつも人々の為に働いてくれてありがとう、すごい立派だよあんたら。」
───シャン
錫杖の音が聞こえた方を見るとそこには白蛇がいて優矢と目線が会うとお辞儀をして口を動かした。
─シャン
─ダン
「あれ鳴き声だったのか………。」
「どうしたんだい何かいるのかい?」
「ほらあそこに………。」
優矢が少し目を離してもう一度見た時には白蛇はいなくなっていた。
「いえ、気のせいだったようです。」
「なるほど、なんとなく分かった……それじゃ家に送るよ。」
優矢は車に乗せて貰い古寺跡が見えなくなる所まで車が走った時外をみて呟いた。
「さようなら、今度はちゃんと迷惑かけずに帰れよ。」
──シャン