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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

首を吊った日

作者: ふーーーーん

ふーーーーんです。

前からなんとなく考えていたことをただ書き留めてみました。拙い文章で難解かもしれませんが、ぜひ考察などをしてみてください。

この文章はあの日と同じ電車に揺られながら書いています。

何せあの日と同じ情景がこの電車に乗ると思い出させれるものなので、私は懺悔をするようにこの物語を、この気持ちを記し始めました。あの夏の日はひどく涼しかったことを覚えています。考えてみるとあの春の日ととても状況が似ていたと思います。これから始まるのは私の人生の内の、最大の後悔の話です。


ある夏の日のことです。

その夜は気分がひどく病んでいました。ふと思い立って百均のビニール紐を手に取り、丁度いい長さで切り、輪にして、そこそこ頑丈な鉄製のフックにかけて、そのまま首を通してしばらくぷらんぷらん遊ぶように首を吊っていました。

と言っても実際に吊った訳ではなく、つま先を伸ばせば届くほどのところに足場を置き、死ねないようにしていた訳で、首吊りというにはあまりに失礼であるようにも思います。

しかし私は味わいました。首にかかる重圧とともにゆっくりと迫ってくる死のイメージを。脳から血が消えていくかのような圧迫感を。息が出来なくなるのが苦しいのか苦しくないのかわからない感覚を。

そうして10分か20分そこらで私の患いは消え失せ、ベッドに抱き寄せられるように臥し、そのまま深い眠りにつきました。私はそれ以来、死についてとても馴染みがある存在のように思い始めました。


私はそこそこ恵まれた環境に、そこそこの才能を持ち合わせていて、それでいて周りの人間ともうまくやっている、普通な人間でした。それにも関わらず、毎晩のようにこのように患っては、被害妄想や自己暗示を続けるような複雑な人間でもありました。

私の友人は誰もが素晴らしい人達ばかりです。恐らく彼らは、私の心の内に秘めてる闇を話せば、じっくりと聞き、慰めてくれるでしょう。しかし私にはそれがどうも出来ませんでした。単に相手より常に優位に立ちたいというプライドからか、はたまた本当に受け入れてくれるかわからないという猜疑心からかはわかりませんが、とにかく私は相手に弱みを、自分の腹の底を打ち明けることなどできることなどなく、拠り所を求めさ迷っていました。


しかし彼女は違いました。


暑い夏の日に、共通の趣味から出会った彼女は、他の人とは同じようで何かが違う感覚がしました。

艶があり肩あたりまで伸びた黒髪、少し不健康にも見えるほどの白い肌、綺麗に揃って上に向いているまつ毛、くっきりとした目。


ですがその瞳は笑っているものの、ひどく寂しそうで絶望した感じがしました。


彼女には確かな美しさがありますが、私はその美しさよりも、彼女の裏側にある静かで寂しい何かに惹かれました。


偶然にも私達は音楽や食べ物、好きな本などの趣味が恐ろしく合っていたため、深い仲になるのに時間はそうかかりませんでした。私達の馴れ初めはここでは割愛しますが、本当に恐ろしいほどに価値観がほとんど揃っていました。


ある日こんな話をしました。


「今日A先生が話してたけどさ、将来は何歳まで生きたい?」私は突拍子もなく彼女にこの話題を振りました。彼女は少し考えた後に

「大人になる前には死んでおきたいかな。」

と真剣そうに話した後に、今度は一転しておどけた表情で

「大人になったら今よりつらいことだってたくさんありそうで、私には耐えられないかもしれない!」

と笑いながら言いました。この時の彼女の表情はとても美しかったことを私は覚えています。それと同時に彼女とは価値観が合うんだなと改めて思いました。


しかし彼女はやはり私も含めた他の人とは何かが違いました。


また、彼女はとても優しい人でした。

単に優しいだけの人ならたくさんいることでしょう。しかし彼女は、内に秘めた残酷な寂しさを抱えながらも、私のつらさを、私の感情を真に理解してくれる人でした。この間の夏の夜の患いだって、彼女はしっかりと私を叱ったあとに、慰めてくれました。だから私は彼女に寄りかかることを決めたのです。

彼女を心の拠り所にし、彼女に頼って生きることにしたのです。ですが彼女はそうではありませんでした。彼女には寄りかかるものがありませんでした。

これが私の過ちのうちの一つであったかもしれません。


彼女と出会ってからは、私の人生には少しずつ色がつきました。夏から冬にかけて、私は彼女と死ぬまでにやりたいことを少しずつ叶えていきました。この日々は私にとってはかけがえのないほど大切で、これからもしっかり生きていこうと思えるきっかけになりました。それと同時に彼女にもずっと私の傍にいてほしい、生きていてほしいと思うようになりました。


それから月日は流れ、春が訪れました。


その辺りからか、彼女は私に彼女の心の内を明かすことが少なくなったように感じました。

丁度そのころ、私は来たる彼女の18歳の誕生日に向け、プレゼントを選び、渡す日を今か今かと待っていました。ようやく彼女の歳が私のに追いつく訳ですから、大変張り切ってしまいました。

彼女の方はというと、親などからのプレゼントには今までで一番安価なものを頼み、その代わり自分の所持金をほぼ使って、行きたかった街に行き、買いたかった服を買って、食べたかったものをできるだけ食べるという贅沢をしていました。

恐らく彼女の人生ではこれ以上とない幸福でしょう。

もう思い残すこともないほどの幸福を彼女は味わったことでしょう。だからこそ私は一気に不安になりました。


この一連の贅沢な体験を彼女との電話で聞いた日の翌日、たしか彼女の誕生日の前日のことです。

唐突に彼女が美しい笑顔で放った言葉を反芻しました。


それから私は家を飛び出し最低限のものだけ持って急いで駅へと向かいました。焦る気持ちに噛み合うように、特急電車が丁度やってきました。私は急いで乗り込み、彼女の家の方面へと向かい始めました。彼女の家と私の家とは電車で一時間ほど(特急の電車であれば40分ほどで着いてしまうほど)の距離でした。電車に揺られながらも彼女に必死にメッセージを送り続けました。しかしメッセージは既読という表示が出るばかりで彼女がそれに答える様子は微塵もありません。この40分ほどで私は様々なことを縋るように考えました。

気持ちはどんどん焦っていきながらも、私は一つの気づくには遅すぎる過ちに気づいてしまいました。


それからこの電車は予定通りに彼女の最寄りの駅に着きました。私は急いでホームから出て、改札を通り、彼女の家へと一目散に向かいました。未だ彼女からはなにも返ってきていないまま、私は必死に彼女の顔を、あの美しさに隠れた残酷さを想像し、反芻していました。そうして彼女のいるであろう家が見えてきました。



私は彼女の家に着き、家の中へと入りました。

どうやら彼女の両親はいないようでした。


しかし


彼女はそこにいました。

いかがでしたでしょうか。

彼女がどうなったのか、何故主人公はこんなことを考えたのか、いったい主人公はどんなことを後悔したのか、なんとなくわかったでしょうか。タイトルにある首を吊った日はいったいどの日なのか、なんであの夏の日と春の日は似ていたのかなど、探せば欠陥点と一緒に考察点も出てくると幸いです。


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