⭕ 連続探偵殺害事件 2
──*──*──*── 警察署・休憩室
誕生前夜祭に見ていた時代劇の画面に出た「 緊急速報 」で12月に入ってから始まった【 連続探偵殺害事件 】の被害者が、また1人増えた事を知った。
本屋の常連さんで、セロカ君のファンでもある祇園条さんの職業は探偵だ。
祇園条さんが被害者にならないように何とかしたいと思ったオレは、セロの言葉を無視して裏口から本屋を出ると警察署へ走った。
警察署へ到着してから、受け付けで刑事さんを呼んでもらったんだけど、生憎と今は別の事件の応援に行っていて警察署には居ない事が分かった。
残念だ…。
両肩を落としてガッカリしていたオレに声を掛けてくれたのは、定年間近の刑事さんだった。
名前は “ 大窪さん ” だ。
オレが相談に乗ってほしかった刑事さんの名前は “ 畠田野 ” って言うらしい。
初めて苗字を知ったよ……。
この大窪刑事と畠田野刑事は、【 不慮の事故 】の聞き込みで商店街を回っていた時に、セロと会った事があるみたいだ。
セロと面識のある刑事さんなのは嬉しい。
大窪刑事が態々警察官が使う休憩室へ案内してくれた。
刑事は事件の応援に駆り出されていて、定年間近の大窪刑事は “ 何かあった時の為に ” って部署に残って留守番をしていたらしい。
「 暇だから話し相手が欲しがったところなんだ 」って笑いながら言ってくれて、オレの話を聞いてくれるみたいだ。
大窪刑事の優しさは嬉しいけれど、暇ってのは嘘なんじゃないかって思う。
だってさ、彼此で色んな事件が起きてるのに、暇な刑事なんて居るわけがないんだ。
それに、大窪刑事は左足を痛めているのか、不便そうに歩いているんだよ。
商売道具のように足で稼ぐ警察官が足を痛めていたら、捜査をしている仲間の足手まといになって迷惑を掛けてしまうかも知れない。
大窪刑事は、そう考えて敢えて留守番役を買って出たんじゃないのかな?
本当のところは大窪刑事にしか分からないけど……。
理由はどうあれ、話を聞いてもらえるんだから、オレにとっては有り難い事ではある。
だから、大窪刑事の優しい厚意に乗っかって甘える事にしたんだ。
大窪刑事は、嫌な顔をしないで真剣な顔でオレの話を聞いてくれる。
オレの言葉に相槌を打ってくれるのは、流石は刑事だと思った。
疑うのが仕事だって良く言われるけど、聞き上手でもあるんだな。
聞き込みとか事情聴取もするんだから、聞き上手で吐かせ上手じゃないと、犯人から重要な情報を聞き出せないもんな。
マオ
「 ──そんな訳で、オレは探偵をしている祇園条憂瑠さんに【 連続探偵殺害事件 】の被害者になってもらいたくないんだ。
犯人を捕まえる手伝いをオレもしたいんだ!
オレ、こう見えても腕にも足にも自信があるんだよ!
警察官じゃないけど、捜査に加われないかな? 」
我ながら無茶な事を言ってると思う。
一般人が「 【 連続探偵殺害事件 】の捜査に加わって犯人逮捕に協力したい! 」なんて、「 寝言はベッドの中で言え! 」って怒られても文句を言えない事をオレは大窪刑事に言ってるんだ。
下手したら大人に見えない容姿のオレが、何を訴えても相手にされず、軽く聞き流されて終わりだろう。
オレと向き合うように座っている大窪刑事も困ったような顔をして考え込んでいるみたいだし。
失敗しちゃったかな??
大窪刑事
「 ──マオ君が祇園条憂瑠君を心配をする気持ちは、私にも分かるよ。
祇園条憂瑠君は、1人前の探偵として活動を始めたばかりだからね。
祇園条憂瑠君だけじゃなく、若い探偵達にはなるべく危険性の少ない事件を依頼して、少しずつ現場に慣れてほしいと思っているんだ。
今回のような探偵ばかりを襲った【 連続探偵害事件 】には、探偵に依頼をしないで方向で警察だけで解決させようと動いてはいるんだ 」
マオ
「 そうなの?
今回の事件に探偵は加わらないんだ… 」
大窪刑事
「 警察からは探偵に依頼はしないけれど、探偵は探偵で独自に【 連続探偵殺害事件 】の捜査をしているよ。
今回の被害者は祇園条秀の愛弟子だから、祇園条秀も事件を解決させる為に愛弟子達と独自に捜査を始めている筈だよ 」
マオ
「 祇園条秀って探偵が、祇園条憂瑠さんの師匠なの? 」
大窪刑事
「 そうだよ。
来年の2月に88歳になる現役の探偵だよ 」
マオ
「 えっ?!
後2ヵ月で88歳になるのに、未だ現役の探偵??
探偵には定年はないの? 」
大窪刑事
「 探偵は個人営業だからね。
定年はないんだよ。
定年した警察官が探偵になる場合もあるんだよ。
警備員に再就職する警察官も居るね 」
マオ
「 へぇ……そうなんだ。
大窪刑事も探偵や警備員に再就職するの? 」
大窪刑事
「 ははは……。
私は再就職しないよ。
昔から土いじりが好きだからね、妻と庭いじりをして楽しもうと思っているんだ。
父親は庭師だったし、弟は父の跡を継いで庭師をしているよ 」
マオ
「 再就職する刑事さんばっかりじゃないんだ…。
大窪刑事、祇園条秀さんの探偵事務所って何処にあるの? 」
大窪刑事
「 祇園条秀探偵事務所かい?
県外にあるよ 」
マオ
「 県外?!
県外にあるんじゃ、行けないよ… 」
?
「 ──何処に行くつもりです? 」
マオ
「 えっ?? 」
大窪刑事と話していたら、聞き慣れたら声が背後から聞こえた。
何で聞こえない筈の声が聞こえて来るんだよ??
声がした方へ振り向いてみたら、セロが立っていた。
あっ……終わった。
◎ 訂正しました。
考え混んで ─→ 考え込んで




