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双月の輪舞  作者: 暁月夜
第一章
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魔法

魔法といってイメージするのは手から炎を出したり、傷を治したりといろいろあるだろう。

魔法は魔力を使って発動するものだが、このあたりの前世の知識はこの世界でもほぼ同じだった。

ただ、一言魔力といっても厳密には二種類ある。


・マナ - 星、自然の中の魔力

・オド - 体内にある魔力


人が体内にもつ魔力はオドと呼ばれ、オドがどれだけ多いかは人の潜在的なものに左右されるといわれている。

前に魔法を扱える人はそこまで多くはないといった気がするが、オドはすべての生物で持ち合わせていると言われている。

が、これを魔法として出力できる人が限られるようだ。

単純にオドの多さの違いかもしれないし、もしくは、回路ができているかいないかということかもしれない。

この辺はもっと専門書を見るとかしないといけないな。


また、属性というものがある。

地・水・風・火・闇・光の六つの属性だ。

魔力もこの属性に左右されることも多い。

特定の属性のマナを濃いところでは、その属性が強化され、他の属性は弱体化する。

特定のオドが多い人は、その属性の魔法が強化され、それ以外の属性は弱体化する。

つまり、火属性のマナが濃いところで、火属性に適正がある人が火属性の魔法を使うと強いよってことか。


その人の属性適正が何か、というのも、ある程度の法則性はあるものの絶対というわけではない。

一族が風属性に適正がある人の子供だと、その子供も風属性に適正があることが多い、ってぐらい。

もちろん、風属性に適正があるから、他の属性の魔法を使えない、ということはない。

といっても、オドがほぼ一つの属性に占められている場合だと、その属性しか魔法としては使えないというのはあるようだが。


俺は指をパチンと慣らし、人差し指の上に小さな火を出す。

イメージ通りだ。俺はライターを思い浮かべながら発動させた火を満足げに眺める。


「リオン様は飲み込みが早くて驚きます。それぐらい安定した火を無詠唱で継続して発動し続けることができる人は少ないんですよ。」


いかにも魔術師という感じのローブを纏った男性がいう。

この人はミリアルド・フォン・サーサナス。俺の魔法の先生だ。インディナローク領の辺境伯軍第一部隊副隊長の肩書を持っている。

男爵家の三男だそうで、実家を出て我が家にくるまでは現在の第一部隊隊長と一緒に行動していたらしい。


「おだてないでください。ミリアルド先生。」


魔法を使うときは詠唱して発動することが一般的だ。

魔力を魔法の力に変換して出力する際、魔力に方向性を持たせるといったことの指針した言葉がそうだが、言葉として発せず、イメージでそれを補うことも可能だ。これが無詠唱。

この無詠唱はイメージ力に左右されるといっても過言ではないが、これがまた難しいようで、無詠唱で安定した魔法を放てる者は少ないらしい。

当然、無詠唱の方が早く発動ができるが、必ずしも無詠唱が優れているとは限らない。

こと威力に関しては、詠唱した方が高くなることが多い。その詠唱も、長く唱えるか、短く唱えるかで変わってくるわけだが。

詠唱するかどうかは時と場合による。


「いえいえ、その歳でこのレベルに達する子はリオン様ぐらいでしょう。」

「ですが、ミリアルド先生のレベルに達するにはまだまだ研鑽が必要でしょう?」

「五歳児に追い付かれたら私の立つ瀬がないですよ……。」


そこへ父さんと母さんがやってきた。


「ミリアルド、リオンの調子はどうだ?」

「また倒れたりしていないかしら?」

「いえ、魔力は安定しております。魔力を枯渇するほど消費しないかぎりは大丈夫です。」

「でも前も突然倒れたのよ?」

「まだ調べてはおりますが、魔力がいきなり枯渇するという現象は私の方で心当たりは……。陣によって魔力を吸い出すというものはありますが、この屋敷にそういった陣は敷かれておりませんでしたし……。」


そう、俺はなぜか何度か魔力が枯渇して意識を失ったことがある。

特に魔法を直前まで使い続けた、といったことはしておらず、いきなり目眩がして倒れたのだ。

倒れると三日ほどは目が覚めず寝たきりになっている。

父さんや母さんが動揺して、未知の病気か!?と王都まで医者を呼ぼうとしたりとひと騒動が起きたそうだ。

医者の診断では、魔力が枯渇していることによる気絶、となっている。


ちなみに陣とは、詠唱を紋章化したものだ。陣に魔力を流し込むことで魔法が発動する。

水道の蛇口部分に刻まれた陣に魔力を流して蛇口から水を出す、とか。

魔石と組み合わせるというものもあり、なかなか奥が深い分野だ。魔法科学発展の礎だしね。

魔石しては、またの機会に。


「私が見る限りでは、魔力が体外に漏れているということもなさそうです。」

「三度目となると、今後もあると思っていいだろう。すまないがリオンに前兆がないかどうか、これからもよろしく頼むぞ。」

「承りました、クラース様。」

「ご迷惑をおかけします、ミリアルド先生。」


俺はミリアルド先生に頭を下げる。ミリアルド先生は、頭を下げないでくださいと言うが、こちらは教えを乞いている立場だ。

それに、ミリアルド先生は父さんの部下であって俺の部下ではない。本当ならば様付けも止めてほしいのだが、やんわりと断られている。


「そういえばクラース様。隊長がリオン様に剣を教えたがっていましたよ。」

「うむ、私もそろそろリオンには剣を、と考えておるところだ。どれ、今からでも……。」

「あなた?」


母さんがニッコリと笑う。笑顔なのに、笑顔が怖い。

父さんも、ひぃ、と声を漏らしていた。


「母さん。ある程度体を鍛えてきたつもりだし、そろそろ剣も学ぼうと思うんだ。」


父さんがうれしそうな顔をしている。よほど教えたかったんだなぁ。

俺としても、そろそろ次の段階に進みたい。


「……無理はしちゃダメよ?ケガにはくれぐれも気をつけなさい。」

「うん、父さんや母さんを護れるぐらい強くなるよ。」


父さんがうんうん大きく頷き、母さんも、この子ったら……と目元をハンカチで当てている。少し大げさじゃないか?

それだけ俺を大切に思ってくれているのだろう。ちょっと親バカと思わなくもないが。


こうして、俺は魔法の他にも剣の修行も始めることになった。

……もう、家族を護れないのはごめんだからな。


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