誕生日パーティー
「リオン!」
父さんが俺に抱き着いてくる。心配させてごめんなさい。
父さんに話を聴くと、俺の捜索にかなり力を入れたらしい。領民総出で俺を探してくれたようだ。
デュラン隊長たちは魔物の巣窟へも向かってくれたらしい。なんとなく、俺のことを忘れて嬉々として戦っていたんじゃないかと思わなくもない。
「坊主、なんか失礼なこと考えていないか?」
「いえ、そんなまさか。デュラン隊長が命がけで魔物の巣窟へ俺を探しに行ってくれたなんて、とてもありがたいと思っていたところですよ。」
インディナローク領のみんなとの再会に喜んでいると、父さんが男性二人と女性二人を連れてきた。
「リオン。こちらはアンドロメダ卿だ。」
「ライエル・フォン・アンドロメダだ。こちらは妻のミレイナ。」
「僕はライエルの息子でイリーナの弟、ギルバートです。こちらが妻のアンヌ。」
ミレイナさんとアンヌさんがお辞儀をして挨拶をしてくれる。
「センタウル王国辺境伯、クラース・フォン・インディナロークの息子、リオンです。初めまして、でしょうか?」
アンドロメダ伯爵。母さんの実家の方々か。俺の記憶では会ったことはないはずだけれど……。
「うむ。リオンとは初対面になる。本当はもっと早くに会いたかったのだが、わしらの領土とそちらのインディナローク領は結構な距離があるでな……。」
「間にちょっと面倒な山脈があるんだよね。そこを迂回するとなると、結構な距離になるんだ。あっ、僕のことは気軽にギルバート叔父さんとでも呼んでくれてかまわないよ。」
「ぬっ。わしのこともライエルおじいちゃんと呼んでくれてかまわん。」
「あー……。では、お言葉に甘えまして。ライエルおじいちゃん、ギルバート叔父さんと。えっ?あっ、ミレイナおばあちゃん、アンヌお姉さんと……。」
ライエルおじいちゃん達の呼びとき、私たちは?っとミレイナおばあちゃんとアンヌお姉さんがニッコリ笑顔で見てきたので付け加える。
なかなかにフレンドリーな方々のようだ。
「うむ、なかなか良い面構えをしておる。さすが我がアンドロメダ家の血を引いているだけあるな!」
「私の血を引いているだけあって幼い頃から利発な子でしてな。ハッハッハ!」
ライエルおじいちゃんと父さんが変なマウントを取り始めた。
あー、これ見たことあるわ。前世でもあった。妹が美人なのは~というので。
「それにしてもセレスティア殿下に召喚されたんだって?いやー、セレナ姉さんの娘に召喚されるなんて仲がいいというかなんというか。運命?」
ギルバート叔父さんがライエルおじいちゃんと父さんを無視して話しかけてきた。
どうやらその辺りの出来事は共有済みのようだ。
「私とギルとの間に子供ができたら、この子も召喚されてしまうのかしら?」
「いつ召喚されてもいいように、しっかり鍛えないといけないね!」
ギルバート叔父さんとアンヌお姉さんが冗談交じりで言っている。二人にはまだ子供はできていないみたいだね。
「リオン様。」
エミーリアさんが俺を呼びに来た。はて、何の用だろう?まだ計画の実行まで時間はあるけれど。
父さん達に用事があって離れることを伝え、エミーリアさんとセレスティア殿下の元へ向かう。
「申し訳ございません。セレスティア様が限界のようでして……。」
「限界?」
「はい。現在センタウル王家の方々のお相手をしているのですが……。」
エミーリアさんの歯切れが悪い。
セレスティア殿下を見ると……プルプル震えていた。それはもう、プルプルと。あ、目が合った。
「……!」
セレスティア殿下がダッシュで俺のところに来たかと思ったら俺に抱き着いてきた。
「ティー、はしたないぞ。リオンくん、すまない。どうも緊張しているようでね。」
クレス殿下もこちら来た。まぁ、そうですよね。少し前まで引きこもりだったんですものね。
おーよしよしとセレスティア殿下の頭を撫でる。
「ロムルス王よ、この子は?」
「この子が例の子です。」
「おぉ、この子がクラースの息子か。」
ロムルス陛下達もこちらに来た。来てしまったというべきか。
立派な髭の方はロムルス陛下と対等な話し方をしているので、おそらくはセンタウル王国の国王陛下なのだろう。父さんを呼び捨てにしたし。
「センタウル王国辺窮迫、クラース・フォン・インディナロークの息子、リオンと申します。」
俺はとりあえずお辞儀をする。跪こうとも思ったが、セレスティア殿下が俺にしがみついているので出来なかった。
名乗りを終えると、セレスティア殿下は俺の背に隠れる。え、そんな、ぐいぐい押さないで!
「だいぶセレスティア殿下には嫌われてしまっているようだね。すまない。今回はバカ息子は連れてきていないよ。」
センタウル陛下の隣にいる方がセレスティア殿下に謝っている。もしかして、バカ息子とはセレスティア殿下の婚約者のことだろうか?であれば、この方はセンタウル王国の王太子?
「リオンくん。私はセンタウル王国、国王アルガスの息子でアルベルトという。よろしくね。」
「はっ。アルガス陛下ならびアルベルト殿下にお会いできて光栄でございます。」
「こやつ、今回はわしだけの予定だったのにちゃっかり来おってからに。」
「前回はあまりにも息子が失礼な態度でしたので……。執務は宰相にお願いしてきたので大丈夫ですよ。」
「押し付けてきた、の間違いじゃろ。」
「そうとも言います。」
なにこの空間。王族に囲まれてしまっているんだけど。セレスティア殿下は俺を逃がすまいと掴んで離さないし。
こういうときはフローラ陛下かエミーリアさんにヘルプを……ってエミーリアさんは首を振っている。くっ、エミーリアさんは無理か。フローラ陛下は何処へ?
「うーん、それにしてもクレスくんといい、リオンくんといい。うちの息子とは比べ物にならないね。ぜひ教育の仕方を教えてほしいのだけれど。」
「スレイを甘やかしすぎだ。ミランダも何をしておるのか。」
「ミレーヌもミランダの手助けをしてくれているんですけどね。どうも反抗的で……。」
俺は前世の記憶があるからなぁ。あ、なんだろ。小さい女の子が見える気がする。妖精かな?
逃げたくても逃げれない俺はぼんやりと現実逃避をしつつあった。
が、現実は非情だ。アルガス陛下たちに、どうやってセレスティア殿下の救出をしたのかといろいろ聞かれてしまった。
あの時は自分のことなのによくわからない状態だったので、ほとんど話せることはないのに……。
セレスティア殿下は相変わらず俺の背をぐいぐい押す。なんでさ。
クレス殿下はいつの間にか少し離れたところで他の貴族のご令嬢に囲まれていた。きゃーきゃー言われている。今回ばかりは俺も連れ出してほしかった。
エミーリアさんを見るが、声に出さずに、がんばれ、と伝えるだけだった。
「リオンくん、ティーを連れて次の準備をしてくれないかしら?」
女神、降臨。
フローラ陛下がやってきた。どうやらこの場から逃がしてくれるようだ。
「かしこまりました。では、次の準備に取り掛かります。」
「よろしくね~。」
フローラ陛下とエミーリアさんに合図を送る。
さぁて、そろそろ始めますか。




