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双月の輪舞  作者: 暁月夜
第一章
15/20

王妃のお願い

「セレスティア殿下。」

「……。」

「殿下?」

「……。(ぷいっ)」


つーんっと言わんばかりの無視である。はぁ。


「姉さん。」

「なに?」

「お勉強のお時間です。講師の方がお待ちですよ。」

「うん、わかった。」


あれから俺はこの城でお世話になっていた。

ただ何もせず居候するのも気が引けるので、何か庭の整備といった雑務でも手伝わせてほしいといったらセレスティア殿下の執事みたいなことをやらされている。

他国の人間にやらせていいのかこれは?


「リオン、も。」

「いえ、申し訳ございません。私はこれからバートンさんのところへ行かねばなりません。」

「ぶぅ。」


膨れた顔もまた可愛いのがズルい。そのほっぺをつついてみたいのを必死に堪える身になってほしい。

そんなことを考えつつ、セレスティア殿下がエミーリアさんを連れて勉強室へ向かっうのを見送る。

さて、バートンさんのところへ行こうか。





「バートンさん、お待たせしました。」

「リオン様、お呼び立てして申し訳ございません。」


バートンさんに呼ばれて向かった場所は談話室だった。


「リオンくん、いらっしゃい~。」


フローラ陛下がいらした。お辞儀をする。


「フローラ陛下。手紙の件、ありがとうございます。」

「いいのよ~。体の方はもう大丈夫?」

「はい。今はもう完治しております。」


目が覚めたときは体のあちこちが痛かったが、今はだいぶ楽になっている。どうもあの時の反動で体を痛めていたようだ。

手紙の件は、インディナローク領にいる父さんと母さんへの生存連絡。

当初はロムルス陛下が手紙を出すようだったのだが、俺は不安でいっぱいだった。手紙に関していい印象がまるでない。

フローラ陛下は俺の顔を見て察してくれたようで、私がするわ~っと受け持ってくれたのだ。

二日後ぐらいには届くだろうとのこと。だいぶ特急で送ってくれるようだ。助かります。


「そう、良かったわ~。」


フローラ陛下は安堵したようだ。心配をかけて申し訳ない。

バートンさんに席へ座るように促され、お茶も入れてくれた。どうやら、用があったのはバートンさんではなくフローラ陛下だったのかな?


「さて、リオンくんにはとても感謝しているの。」

「感謝、とは?」

「ティーはリオンくんが来て大分変ったわ。お姉ちゃんとして恥ずかしいところを弟に見せたくないってところかしら?」


クスクス笑うフローラ陛下。


「以前のセレスティア殿下のことは伺っております。私が何かのお役に立てたのであればよかったです。」


セレスティア殿下が引き籠りだったこと。そのきっかけなどはエミーリアさんに聞いている。

少し依存が強いように感じるが、時が経てば落ち着くだろうか?


「……今のティーはリオンくんが必要よ。しばらく迷惑をかけるけれど、お願いね?」


フローラ陛下は俺が懸念していることを察したようだ。

他国とはいえ、王妃にお願いされては断れない。手紙の件だけではなく、だいぶ俺のことを気にかけてくれているし。恩を返さねば。


「私にできるかぎりのことは。」

「ありがとう。ふふ、正直にいえば嫉妬しているのよ?私もティーのお母さんとしてなんとか立ち直らせたかったのにできなかったから。」


憂いを帯びた目を伏せたフローラ陛下を見て、俺は懐かしさというか何か共感できるような気がした。

あぁそうか。そういえば、俺も……。


「そうそう、来週にティーの誕生日パーティーがあるのだけど。」

「あっ。」


少し昔のことを思い出そうとしていたところで現実に戻された。そうだ。誕生日パーティー。

俺は現在無一文である。誕生日プレゼントを買う元手がない。どうしよう?

子供を雇う店はないだろうし、さすがにお金を借りるわけにはいかない。

くっ、これはいったんインディナローク領に戻るか?いや、戻るための足を用意する元手がない。


「プレゼントのことでも悩んでいるなら大丈夫よ?手紙にそのあたりのことも書いておいたから~。」

「フローラ陛下、なんなりとご命令ください。私ができうるかぎりのことはやりとげる所存です。」

「あら~。」


俺は椅子から立ち上がり、フローラ陛下の近くまで移動して跪く。

さすがフローラ陛下だ。ピガース王国はこの人に支えられているんじゃないか?

フローラ陛下に席に戻るように促されたので席に戻る。

バートンさんがまた席を引いてくれた。ありがとうございます。お手数おかけして申し訳ありません。


「ごほん。それでね、来週の誕生日パーティーなのだけれど。リオンくんにはティーが歌うように仕向けてほしいのよ。」

「歌を、ですか?」

「えぇ。ティーは歌が好きでよく口ずさんでいたの。セレナ様がお亡くなりになってから歌うことがなくなっていたのだけれど。」


フローラ陛下は昔を思い出しているのだろう。しんみりした空気になった。

バートンさんは黙って紅茶を入れなおしてくれている。さっきとは香りが違う。これはミントだろうか?いつ違う紅茶を用意したのだろう。

さりげない気づかいがカッコいいです。


「わかりました。私もセレスティア殿下の歌を聴いてみたく思います。」

「ありがとう。よろしくね、リオンくん。」


そういえば俺がこちらに召喚されるとき、歌が聴こえた気がする。あまり覚えてはいないのだけれど。もしかして、セレスティア殿下の歌なのかな?

であればもう一度聴いてみたいな。どうしたらセレスティア殿下がパーティーで歌を歌ってくれるだろうか?

あとでエミーリアさんに相談してみよう。



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