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雷魔法が最弱の世界  作者: ともとも
4/22

異世界での暮らし

目が覚めた。僕は、女神様に言われた通り赤ん坊になっていた。

そして、木造の家の中にいた。


パチッ


どこかで薪が燃えている音が聞こえる。どこかに暖炉でもあるのだろうか?

そして明かりが点いているが、よく見ると電気ではなく光る石のようなものが電気の代わりになっていた。

せっかく目が覚めたし、誰かいないか喋ろうとした。

「あーーー、うぉいーーーーー、うーーーー」


だがろれつが回らず、全然喋れなかった。また手足も短いのでほとんど動くことができず、寝返るか、上下に動くことくらいしかできなかった。


赤ちゃんになって思ったが、ヤバイ、手がめっちゃ気持ちいい。自分のことだがやっぱり赤ちゃんは、可愛い。

あまりに気持ちよくて、しばらくあらゆるところを触っていた。

始めは自分が赤ん坊になったから楽しんでいたが、冷静になると本当に異世界に来たんだと実感する。


日本にあったものがほとんどない。例えば文字。

この部屋にはそんなものはなく、家具もほとんどが木によって作られている。なんだか田舎って感じで、とても落ち着く。


ガチャ


ドアが開いた。

すると僕と同じような黒髪の女性が入ってきた。年齢は二十代くらいの人だ。美人な顔立ちをしているのだが、服がすこし小汚くて、全体の印象が悪くなっていた。

もっときれいな服を着ていたらいいのに・・・

なんか残念だ。


「#%&$&##”&$&*+」


その女性は何かを言って、僕の頭を優しく撫でた。久しぶりにこんなことをされた。

抱擁感があってとても安心する。

それにしても、何て言っているのだろう?


すると、はっと何かを思い出したようで、すぐにどこかへ行ってしまった。


またドアが開いた。今度は何かを持っていたのか、静かにドアが開いた。

何を持っているのだろう、と注意深くみると、僕と同じくらいの赤ん坊を抱えていた。青髪で、女の子なのか髪の毛が僕よりもたくさん生えていた・・・・・・


女神様!?


僕と目を合わせると、赤ん坊はにっこりと笑った。

やっぱり女神様だ。正直こんなに早く会えるとは思わず、びっくりした。


そうなると、たぶんこの二十代くらいの女性が僕のお母さんになるのかな?

考えてみると、確かに僕と似ている。髪の色や、目が……


いつの間にか、僕の隣に女神様を置いて、また話し始めた。

「#$%’$#%$&#&*+¥」


まだこの国の言葉について知らないので、なんて言っているのかわからない。

でも女神様が横にいて、ちゃんと設定通りになっている。

地味にすごいな。


女神様を僕の隣に連れてきたからたぶん、これがあなたの家族だよ、と言っていると思う。


隣を見ると赤ん坊になった女神様がいる。

改めて異世界に来たか確かめるため、頬を引っ張る。やはりちゃんと痛みがあった。


これからいろいろあると思うが、独りじゃないし、それなりに頑張っていこうと考えた。

今は赤ん坊だから何もできないんだけどね!




一ヶ月の月日が流れた。


はぁー。

めちゃくちゃ暇!


前世の記憶があるから、今の生活がしんどい。できることは、寝ることか、簡単に体を動かすことくらいしか……

それにミルク。ご飯がミルクだけというのはさすがに飽きる。

早く普通の食事を食べたいものだ……

思って以上に異世界での滑り出しが苦しんだな。

それに女神様と話したいこともあるのに、まだろれつが回らなくて喋れない。

はぁ……


一か月間、暮らしていて思ったが僕の家庭は、衣、食、住がちゃんと揃っていて、ごく平凡なところに生まれたと思う。まず、家は木が新しくて新築のように見える。


2LDKくらいかな?


たぶん、結婚祝いか何かで買ったのだろう。

そして母は栄養の摂れているものを食べていた。

服はすこし汚いがちゃんとある。

普通のところでよかった!


今は、できるだけ早くこの国の言語を理解しようと努力している。でも難しい。

昔からリスニングが苦手だったからなー。


最近は、いつも女神様と母と一緒で三人と寝ている。そして寝る前には本を読んでくれた。でも本は高いのか、2冊だけこの家にある。

絵から想像してだけど、一つは男の子が好きそうな英雄談で、もう一つは女の子が好きそうなお姫様がでてくるお話だ。

僕たちのために買ってくれたのなら、とても嬉しい。


3人で幸せに暮らしているが、父親らしき姿はまだ見ていない。

出稼ぎに行っていると思う。

でも、もしかすると僕の想像しているより複雑な家庭だったりして……


そんなことはおいといて。

今日は母の機嫌がやけによかった。

何かあるのかなと、思いながら見ていると、僕を背中にせ背負って紐のようなものでくくり、女神様を抱っこしたして右手には何かを入れるためなのか大きな瓶を持っていた。

どこへ行くのだろう?


ガチャ


準備が終わったのか、ドアを開けて外に出た。

光がとても眩しくて、目が痛い。


今日は太陽が照っていて、とてもいい天気だった。

今思うと始めて外に出たな。

光が強くて目を開けにくかったが、しばらくするとその光にも慣れて開けることができた。


そして目の前の景色を見ると、僕は素直に驚きが声となって出ていた。

家の中に窓がなかったから外は見れなかったけど、こんなにのどかな景色が見られるとは思ってもみなかった。


「うーーーーぁーーーーー」


外は、ちょっとした丘の上にこの家があったからか、周りを一望できた。畑や山に囲まれていた。綺麗な水の川も近くで流れていてとても美しい。

そして何よりも、空気がおいしい!


女神様もこの景色を見て驚いていた。

ここまでのことは、想定していなかったのだろうか。


しばらく僕たちは、母に抱かれながら散歩をした。その時に何か話していたのだが、やっぱり聞き取れずなんだか、悲しい。


母は、坂の緩い山に登っていた。その道中、いろいろなものを見た。

ウサギや青い鳥、そして見たこともないような生物もいた。まるで自然の動物園みたいで面白かった。たくさんの生物がいて、この世界のことを少しでも知れたのでよかった。


「フー」

母はため息をついて足を止めていた。

ようやくついたのだろうか。


また光が眩しくて、目を瞑っていた。

しかし目を開けるとさっきとは、比較にならないほどの美しい景色が広がっていた。


「はぁーー!」

「ふぇーーー!」

「うぁーー!」


その景色を見るなり、みんなで声を揃えていた。


多分この景色を見るために、ここへ来たんだろう。確かにウキウキしていた理由が分かる。最近は、僕たちの世話で精一杯だったから、息抜きのためでもあるだろう。


いつもお疲れ様。

そんなことを言いたいが、まだ言葉が分からなくて言えない……


悔しいな。

迷惑をかけないようにしたいな。


母は紐を解いて僕と女神様を強く抱きしめ、そして満面の笑みを向けた。


「#$6w$W#6$¥*+、&$#@*!」


母の抱擁はとても温かい。


チョロチョロチョロ


近くに水の音がした。

石と石の間から湧き水が出ていた。

すると母は、持っていた瓶でその水を入れて、大事そうに持っていた。


何か特別なことでもあるのかな。


ともあれ、今日の一日は、とても楽しかった。

この平和な日々がいつまでも続くといいな!



それから約半年の時間が流れた。


これくらい経つと、少し言葉もわかってきた。やはり外国語をずっと聞いていると、いつのまにか身につくようになるのだな。

それとも、赤ん坊は一番の成長期だから、こういう物覚えが簡単にできてしまうのかな。


まだ聞き取れても話すことはできないから、神様と話すときは日本語で話している。

母から見ると、小さい子が言葉を話せていないけど会話している、というようにこの年だと見えるから問題ないと思う。

まだ舌がしっかりしていないからはっきりとは喋れないが……

それでも聞き取れるだけ、一歩この世界を生きるために成長しているからよかった。


そしてハイハイができるようになった。

長かったごろ寝生活から卒業だ。

動ける方が僕はいい。


でも外にはまだ出れないから、母が家事をしているところを見たり、家の探検をしている。

まあ、この家はそこまで広くないからもう隅々まで探検したんだけどね。


何より暇だから、そんなことを何回も繰り返していた。神様も何もできないから基本、僕についてくるか、母に甘えていた。


そうだ!

この姿でもできる遊びを思いついた。


それは鬼ごっこだ。

ハイハイだけど運動にもなるし、いいと思った。


「あのねーー、鬼ごっこー、しよう!」

「暇だからーー、そうしよっかーー。じゃあーー、始め―はあなたが鬼をやってくれなーーい」


神様がこういう遊びに付き合ってくれて驚いた。

「子どもっぽい」とか言われて断られるかと思った。

優しい人でよかった。


そして鬼は僕になった。こんな姿だけど、昔から足は少し速かった。

すぐに捕まえてやる。


「よーい……スタート!」

僕は、始まると同時にすぐに追いかける。意外に体は動いた。


これなら簡単まえられる!


そう思い、あっという間に神様に追いついた。

よし、あと少し。あと少しで……

そして僕が手を伸ばす。


「捕まえたーーー」


そう叫んで、掴もうとした瞬間、一気に神様のハイハイするスピードが上がた。


「フフフフー、ハッハハハハ! 君は、私のー、すばしこさーを忘れたのかーな?」


はっ!!


そう思えば……

転生するときのウサギの人形、とても速い動きをしていたな。

まさかあの動きを本当に出来るのか!


神様は、あのウサギのように早く逃げた。それでも僕は諦めず追いかけ続ける。


「待てーーーーー!」


やっと追いついた、と思っても急カーブをして、僕が捕まえるのを阻止する。


やり続けていると足の速さでは勝てないと思い、どうにか頭で考えて捕まえようとした。

何かいいアイデアはないかと考えながら周りを見渡してみた。すると簡単に誘い込めそうな角を見つけた。

ここに追い詰めると捕まえられる。そう思い実行した。


そして僕は、やっとの思いで角に追い詰めた。


「フフフフ、こーれで終わり―ですよ」


僕は考える暇を与えないように、全力でハイハイをした。だが迫った時にすこしだけ隙間を作ってしまった。

神様はその隙を逃さず、そこに向かって進んだ。


「よし、神様まぁぁーーー、捕まえたぁーー、ってあれーーー!」


ゴンッ


「痛ったぁぁぁーーーー」


結局、捕まえられず、横に逃げられた。神様はどや顔をしてこちらを向いている。

そして僕は、全力だハイハイをしたから勢いを止められず壁に頭からぶつかった。


すごく痛い。久しぶりに怪我をした。

あぁ頭がズキズキする。

それに捕まえられなくて、悔しい。


叫び声を聞いて母は、大急ぎで僕の方にやってきた。

顔を見ると真っ青になっている。

軽いけがだから落ち着いて、と言いたい。


「トモヤ、大丈夫?」


すぐに僕を抱き上げて、どんな怪我をしたのか注意深く観察していた。軽いものだとわかった瞬間、いつもの優しい顔に戻っていた。


「よかった、大丈夫そうね」


安心はしてくれたが、傷跡がないかなどしばらく僕の頭を見て、とても心配してくれた。

だが僕が泣かなかったことで、丸くしていた。


正直な話、僕、十五歳ですからこれくらいなら泣きませんよ。


「泣かなかったんだね、偉い偉い。トモヤは、強くなるね」


そんなことを言われながら頭を撫でられていた。母の温もりを知らなかったから心の中で感動した。


最後に僕の頭に手をあてて、

「念のためにやっておこっかな」


深呼吸して気持ちを落ち着かせようとしていた。


何をするんだろう?


「水魔法、回復の聖水」


ん?


手から光が発生した。

そこから霧のような青い粒がでてきて、僕の頭に触れた。

水しぶきがかかるような感触だった。

だんだん冷えてきて気持ちいい。


気づいた時にはもう頭の痛みが消えていた。


すごい! これが魔法!


初めての魔法に感動していた。早く僕も操れるようになりたい。

この直し方が当たり前なのか普通だった。


何より、異世界での醍醐味である魔法が見れた。

ああ、とてもいい経験ができた。


魔法とはすばらしいものだと思う。


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