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妖子の剣士  作者: ゆゆ
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旅立ち

第3話です!ここからやっと主人公の物語が始まります。まさか、3話までいくと思いませんでした笑笑

ここからが本番みたいなものなので見てもらえたら嬉しいです!

「お前らには、この家を出てもらう」


「は?」


「へ?」


えーーーーーーーーーーーーーーー!?


村中に響き渡ろうかという二人の絶叫が轟いた。

豪華な朝食を食べた後の急な宣告だ。二人が驚くのも無理はない。


「じっちゃん!なんだよ急に!」


「そうだよ師匠!私たち何かしちゃった?」


「そうじゃない、前々から決めていたことだ。」


十蔵は、重い口調でそう言った。


「もっとわかんねえ!」


「師匠!ちゃんと説明して!」


「元よりそのつもりだ」


十蔵は、いつになく真剣な顔をして話し始めた。


「単刀直入に言うと、お前らには陽滅隊(ようめつたい)に入ってもらう。」


「陽滅隊…?」


「!、それって師匠の!」


「そうだ、陽滅隊は俺の古巣であり、依頼を受けて妖怪・妖魔を狩る組織のことだ。」


「妖怪を狩る…、なんかワクワクするな!」


「じゃあ、師匠はその陽滅隊に私達を入れるために修行させてたの?」


「その通りだ。」


志乃は、そこまで聞いて少し不安そうな顔をして呟いた。


「そんなの私達に出来るかな…?」


「安心しろ、志乃。お前たちは、免許皆伝。

実力は俺のお墨付きだ!そこらの妖怪どもなんぞ相手にならんだろう。」


十蔵は安心させるように志乃に笑顔で言った。


「そうだぜ、志乃!あんなけ修行してきたんだ、じっちゃんもこう言ってるし、俺たちは強い!」


「し・か・し・だ!、油断し過ぎるのも良くない、

戦いの場では何が起こるかわからん、一つのミスが命取りになることもある。特にお前はな、焔!」


十蔵はそう言いながら焔の頭をグリグリする。

「イッテェ!」と涙目で騒ぐ焔を無視して十蔵は話を続ける。


「いいか、妖怪や妖魔は精神生命体といってな、身体があるようでない。」

「つまり、身体をどれだけ傷つけようが奴らは死なない、奴らを倒すには精神を砕く以外にない。」


「それで私達は、氣の修行をしてたってことね!」


「その通りだ、志乃。」


氣とは、人間が妖怪・妖魔に対抗するために使う、

特殊な能力のことを言う。氣は基本、人間なら誰でも持っているものだが、それを扱うには強靭な精神力と

体力、かなりの修行が必要になる。それ故に、氣を扱える人間は一握りであり、陽滅隊のような仕事をしているような者にしか扱えないのだ。

ちなみに、氣の能力は人により様々である。その人の精神力の強さや性格などによって違う能力を持つのだそうだ。


「氣を身体に纏わせることによっての、身体能力強化や防御、刀などの武器に纏わせ、威力増大などの基本的な氣の使い方。」

「それに、人によって異なる能力を持つ氣、(まぁ、お前たちは俺に似たのか同じ火の能力だが…)の使い方も全てお前たちに叩き込んだはずだ。」


「妖怪や妖魔には氣を使った攻撃以外に効果がない…

目に目を、歯には歯を、妖怪には氣を、ってことだよね!師匠!」


「おう、志乃は完璧だな!」


「俺もそんくらい分かってるって!」


「それならいい。」

「だが、ここからが一番重要だ。」


そう言って、十蔵は焔を真剣な目で見つめる。


「さっきも言ったが、お前は特に気を付けろ。」

「お前の身体に流れているのは、氣だけでなく、半分は九尾の妖気だからな。」


「分かってるよ…」


焔がより真剣に答えるのには理由があった。

この焔こそが十蔵が15年前の雪山で九尾から託された赤ん坊だったのだ。

焔の身体は、九尾と長い月日を過ごすうちに、その強大な力にあてられ少しずつ取り込み、焔の体内の氣の半分以上が九尾の妖気に変わってしまったのだ。


「もし、またあの時のように暴走したら、もう止めてやることが出来ない。」


「うん…」


「すまんな、嫌なことを思い出させた。でも、大事なことなんだ、分かってくれ。」


十蔵は焔の頭をポンっと撫でた。


「大丈夫、分かってるよじっちゃん!ありがとう、感謝してる。」


焔はいつもの笑顔で微笑んだ。


「それに、じっちゃんの修行のおかげで少しはコントロール出来るようになったんだ!心配すんな!」


「そうだったな、お前はスゴイやつだ。俺の自慢の弟子だよ。」


十蔵も笑顔で返した。


「でも一つ約束して欲しい、人の前ではいざというとき以外は九尾の力を使わないことだ。」

「お前のことは、陽滅隊に一応は話を通してあるが 俺の信用のおける数人にしか話していない。」

「妖力を使える人間なんて普通は考えられん、よく思わない奴もいるだろうからな。」


十蔵は強く念を押す。



「分かってるってじっちゃん!心配しすぎだっての!」


「分かるよ師匠、焔心配だもんね〜」


「なんでだよ!」


「だってそうでしょー」


「それを言うならお前もだ!」


焔と志乃がまたワイワイと喧嘩を始めた。

十蔵は、この喧嘩もしばらく見れなくなると思うと少し寂しく感じる。


「お前らのそれも直さねーとな!」


今のは志乃(焔)が悪い!


焔と志乃はお互いに指を指しあいながら十蔵に向かって叫んだ。


「こりゃ直りそうにないな。」


十蔵はそう言って苦笑いする。


「ったく、まだ話はおわってないぞ。いいか、お前らはもう陽滅隊に入った気でいるようだが、入隊するのにも試験がある。」


「ゲッ、試験…」


「試験?いったいどんなのなの?」


「試験つっても頭は使わない、使うのは腕っぷしだ。」


「よっし!」


「じゃあ、戦うってこと!?」


「まぁ、そういうことだ。だが、残念ながら選りすぐりを選ぶため、試験の内容は毎回変えているから俺にも分からん。」


「燃えてきたー!」


「そっか、じゃあ仕方ないね。」

「そういえば、その試験っていつあるの?」


「四日後に、ここから二日ほど南に行ったところにあるこの国の中心に位置した都市で行われる。

陽滅隊の本部もそこにあるからな。」


「結構、急じゃね!?」


「うん確かに、ここから二日もかかるんなら向こうでの準備とか考えたらヤバイかも!」


「安心しろ、陽滅隊に受かりさえすれば家は向こうで準備してくれる。まぁ、寮みたいなもんだが、食事もついてる。金も当分は暮らせるよう用意してある。」


「すげえ!」


「へー!結構、高待遇なんだね!」


「まぁな、その為にお前らを鍛えたってのもあるからな。本当は、危険を伴うこともなく生活に苦労もしない暮らしをさせてやりたかったが、俺は戦うしか能のないバカだからよ。これくらいしかお前らに教えてやれねえ。」


十蔵は、悲しいような悔しいような顔をして拳を握りしめる。


「じっちゃん…」


「師匠は身寄りのない私達を育ててくれたじゃない!

それだけで十分感謝してるよ?」


「ありがとう、そう言ってもらえると助かる。

でも、これだけは言っておく、絶対に死ぬな。ここに帰ってくるときは二人揃ってだ。陽滅隊に入れようとしている俺が言うのもなんだが、それだけは絶対に許さん!」


「分かった!」


「私も、約束する。」


「よし、それならいい。二人で支え合って頑張れよ!」


おう!


うん!


二人は声を揃えていう。


「よし!じゃあ、明日の朝出発できるように荷物をまとめておくように。」

「それと今日は、試験の為に最後の修行をつけてやるから、覚悟しろ!」


「最後の修行!やるかー!」


「うん、最後だもんね!私も頑張っちゃおうかな!」







ー翌朝ー


「じゃあ、行ってくる!」


「おう、気つけてな!」


「師匠、体に気をつけてね!料理もちゃんとして野菜もちゃんと食べないとだめだよ!ほっとくと肉しか食べないんだから!それにそれに…」


「ああ、分かってる。志乃は心配し過ぎだ。」


「だって、だってえ〜…」


志乃は目に涙を溜めて今にも泣きそうな顔をしている。


「あ〜、泣くなほら!また帰って来てくれるんだろう?」


「うん、うん!絶対帰ってくるからまってて!…」


十蔵は、自分の胸に顔をうずめて泣く志乃の頭を優しく撫でてやった。


「よし、もう大丈夫!じゃあね、師匠!」


「おう!」


志乃はまたいつもの笑顔に戻って言った。


「焔、志乃のやつを頼んだぞ。」


「おう、頼まれた!」

「じゃ、また!」


「行ってこい!」


行ってきます!!


そう言って、二人は歩き出す。しかし、少し歩くと焔が振り向いて、走って戻ってきた。


「ごめん、一個言い忘れてた!今まで育ててくれてありがとう!本当に感謝してる!」

「これだけ言いたかっただけだから、じゃあな!」


それだけ言うと、志乃の方へ走り去っていった。


「ったく、バカやろう、我慢してたのに意味ねえじゃねえか…」


十蔵の目から涙がこぼれる。


「行ってこい!馬鹿野郎ども!」








澄んだ青空の下、焔と志乃は歩いて行く。


「師匠と何話してきたの?」


「なんでもねぇよ!」


「あれ!なになに〜、ちょっと泣いてる?」


「泣いてねえ!」


「否定しなくてもいいじゃん!泣いてもいいんだよ?」


「だから、泣いてねえって!」

「ほら!早く行くぞ!」


「ちょっと!走らないでよ!コラ、待ちなさーい!」


二人はいつもどおり、騒ぎながら目的地に向かう。

これからのことについての期待や不安、色々なことを胸に抱いて、それでも二人は笑顔で行く。

二人ならば、どんなことでも乗り越えていけると信じて…











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