幕間
~陽滅隊本部白虎棟~
「報告ご苦労様。今回もうまく任務を遂行したようだね!君たちの活躍で5人もの人の命が救われた。いや、6人だったかな?」
焔達から報告を受けた清水虎太郎は、ニヤニヤとからかうように大地を見る。
「隊長、それからかってますよね?俺、結構危ない状況だったんですけど!?」
「はははは!冗談だよ、すまないね。でも、本当に無事で何よりだ。それも含めて君たちを褒めてるんだよ?」
「ほんとだよな!気づいたら大地が倒れてるんだもん、焦ったよ。」
「被害者が襲われたのと同じ状況で、あの松の木に近づくなんて不用心が過ぎるわね。私たちの話聞いてなかったのかしら。」
「ぐふッ!相変わらず辛辣。だが、これもいい///・・・。」
「まあまあ、二人とも。」
木霊との戦いの中、一人戦闘不能になっていたことをひたすらにいじられる大地である。
「それにしても、あの木霊がねぇ・・・。木霊が人間に害をもたらしたというのは聞いたことがないな。やまびこでいたずらをする程度のおとなしい妖怪のはずなんだけど。」
「はい、私たちもそれが気なっていて。」
虎太郎の言葉に、志乃が同意する。
「最近どうやら、妖怪・妖魔たちの動きが活発になってきているみたいだから君たちも気を引き締めて任務に挑むようにね。何か裏がある可能性もある。」
「「「「はい!」」」」
本部でもけがをして帰ってくる隊員たちが目立ってきている。もう一度気を引き締めなおす必要がありそうである。
「さて、話は変わるんだけど・・・、君たちは妖怪と妖魔の違いを知っているかな?」
「はい。」「もちろん!」「俺も知ってます。」
虎太郎の質問に対して、3人は次々に返事をするが、一人頭に?を浮かべて頭をひねっているものがいる。
「焔くんはどうかな?」
「も...もちろん、知って...ます。」
((((絶対うそだぁ~))))
「ちょっと、焔!師匠に何回も教えてもらったじゃない!」
「あれ?そうだっけか?」
「そうだよ!」
どうやら、十蔵の努力もむなしく焔の頭にはなんも残っとらんようである。
「はははは!まぁ、いい機会じゃないか。今日からよく覚えておくといいよ。」
「は、はい...」
焔は、身体能力や五感にステータスを全振りしているので頭の方はからっきしなのである。
「まず、妖怪も妖魔も同じ精神生命体であることは知っているよね?僕たちのように体を持たず、精神だけで体を構築している。では、何が異なっているのか?簡単に言うと、特定の容姿・特徴、または名前を持っているかそうでないかの違いなんだ。妖怪は特定の容姿・特徴、または名前を持っているものだ。有名なもので言えば、河童や鬼が妖怪に当てはまる。名前を聞いたらその姿や特徴がぱっと浮かぶだろう?そして、それ以外の精神生命体を妖魔と呼ぶ。」
「へ~、そうだったのか。」
「細かいことまで言えば、その精神生命体が誕生した由来や理由があるかないかと言うのもある。例えば、妖怪猫又で言えばこの世に未練を残したまま亡くなった猫が成ったものと言われている。中には、僕たちのように一族で続いているものもいる。生殖機能が発達しているんだ、まれだけどね。
そして、そのような由来や理由なく突然に発生するのが妖魔だ。唐突に現れ事故のように前触れなく人を襲う。妖怪には、知恵を持つものもいるが妖魔にはそれがない。人の魂を食らえば別だけどね。陽滅隊に来る依頼では妖魔が原因であることが圧倒的に多いみたいだよ、数も多いしね。」
「妖怪も妖魔も人の魂を食っちまうんだろ?」
「ああ、それに関して共通してるね。だけど、妖怪はもともと特定の姿かたちを持っているから魂を食らわなくても生きていける。現に人間との共存を目指して協力してくれてる妖怪もいるからね。でも、妖魔は違う。人間の魂が無ければ姿かたちが保てないみたいだからね。特に妖魔の場合は、姿かたちが人間に近ければ近いほど警戒した方がいい。それだけ多くの人間の魂を食らい力を付けているってことだからね。」
「なるほど、そんな違いがあったのか。」
「よし、これで妖怪と妖魔の違いについては分かったかな?今後の任務に役立ててくれると嬉しいよ。」
「おう!よくわかったぜ、隊長!」
「それは良かった。」
こうして、虎太郎による妖怪・妖魔講座は終わりを迎えた。
~任務報告後 寮食堂にて~
「それにしても、焔が妖怪と妖魔の違いすら知らなかったとはな~。」
「ほんとだよ、師匠がかわいそう...。」
「こんな初歩的なことも知らなかったなんて、私なら恥ずかしくて外を歩けないわ。」
「ああ、薫の悪気のない一言が一番傷つく...。」ズーン
それからしばらく、焔はこのことについていじられ続けるのだった...
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