幕間
〜初任務を終えた翌日〜
「いや〜、初任務お疲れ様!初めてから大活躍だったね〜。君たちの隊長として鼻が高いよ。」
初任務から帰ってきた焔達は、陽滅隊本部白虎棟の隊長室にて、清水琥太郎から激励を受けていた。
「まぁな〜!俺達にかかればこんなもんよ!な?大地?」
「おお!志乃ちゃんと薫ちゃんも大活躍だったしな!」
「ありがとうございます!」
「当然です。」
と、それぞれが多様な返事をする。
「うんうん、本当に頑張ったよ。それによく無事に帰ってきた。安全な任務だと言っておきながら、君たちを危険な目に合わせたこと、本当に申し訳なく思っている。すまない。」
「そんな。謝らないでください。」
「いや、もっと依頼について調べをつけてから君たちに回すべきだった。これは、完全に僕のミスだ。君たちが上手く対処したから良かったものの、一歩間違えれば命すら危なかったかもしれない。」
清水隊長は、イスから立ち上がり焔達に向かって頭を下げた。
「まあ、何もなかったんだから良かったじゃねぇか! それに清水隊長、俺たちはこれくらいのトラブルでやられるほど、やわじゃねえよ。俺たちは、もっと強くなんねぇとだからな。」
「焔の言う通りです。だから、気にしないでください。」
「志乃ちゃんはともかく、焔がまともなこと言ってる。」
「おい。」ギロッ
「ひっ!」
「ははははっ!そうか、ありがとう。頼もしいよ。」
初任務から妖怪と遭遇してしまうと言う、トラブルはあったものの、それを乗り越えたことは、焔達の自信へと繋がったようだ。それから、焔達が初任務についてその他諸々の報告をしていると...。
ガチャッ
清水隊長が座っている椅子の横にある廊下に繋がる扉から、紫がかった黒の長い髪に、薄紫の瞳の女性が入って来た。
「やっほー、琥太郎いる〜?」
「おお、明日香?一体どうしたんだい?」
やってきたのは、清水琥太郎と同じく白虎棟の隊長である、柊木明日香だった。その綺麗な顔立ちに妖艶な笑みを浮かべている。
「誰だ?あの姉ちゃん?」
「綺麗な人…。」
「なんだ!?あの美女は!!」
「・・・」
「ああ〜、君達は初めて会ったかな?紹介しよう。白虎棟所属、柊木明日香隊長だ。」
「どうも、柊木明日香です。へぇ〜、君達が琥太郎のとこの子達ね。しごきがい…、じゃなくて、頼りがいありそうな子達ね!」
((((なんか今、怖いこと言われた…))))
「で?明日香はここに何しに来たの?」
「ん〜?ちょっと、琥太郎のとこの子達の偵察にね〜。」
そう言いながら、明日香は見定めるように焔達を観察し始めた。そして、おもむろに焔の前で立ち止まると…
「ん〜?なんか君、不思議な感じだね?」
(なんだ!?もしかして、この人九尾の妖気にきずいたのか?)
「なんか、分かんないけど。キツネっぽい!」
「な!?な、な、な、な、なんのことっすか!?」
(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!)
突然のことに、焔は完全にパニクってしまっている。
それが余計に怪しく見えて、「ん〜?」と明日香もどんどん顔を焔に近づけていく。
(本当にやべー!!)
「ぷっ!ふふふふ!ふふふふふふふっ!」
「へ?」
すると、突然明日香が吹き出して笑い始めた。
「なんだなんだ?」
焔を初め、志乃や大地、薫も、突然笑い出した明日香を不思議そうに眺めている。
「明日香。あんまり僕の班の子をいじめないでくれるかな。」
「ふふふふっ!ごめんごめん!面白くって、つい。」
明日香は、よほど面白かったのか涙を拭いながら答えている。
「ん?どういうことだ?」
「ごめんね。明日香は人をからかうのが昔から大好きなんだ。気にしないでいいから。」
琥太郎は心なしか、顔を暗くして、何かを思い出すように言った。
((((何かされたんだろうな…、きっと…。))))
「それと、明日香は君の事情を知っている者の内の1人だから安心してね。」
「なんだよ〜、からかっただけか。ヒヤッとした。」
「ふふふふっ!ごめんね?でも、君のリアクション最っ高だったよ!イジメがいあるわ!」
「は、はあ。」(いや、サムズアップされても…)
この、少しのやり取りだけでも焔は「この人は危ないな」と本能で感じとったのだった。
「あ、あの!とても仲が良さそうに見えたので、少し気になったんですけど、お二人はどういう関係なんですか?」
一連の様子を見ていた志乃が、質問をする。
「ああ、僕たちは同郷の幼馴染みでね。年齢も同じだし、陽滅隊では、 同じ試験を受けて入隊したから同期でもあるんだ。」
「へぇ!そうなんですね。じゃあ、柊木隊長も若くして隊長になられたんですね!」
「そうよ?まぁ、私の方が強いし、優秀だけどね〜。」
「はははは、明日香には敵わないなぁ〜。」
琥太郎は、やれやれと言った感じで頭をかいている。
「柊木隊長…。大人の色気があって美しい〜。」
今度は、大地がデレデレに緩んだ顔で呟いた。
「あら、寺門くんだっけ?ありがとう。あなた、見る目あるわ。」(ウインク)
「ぶふッ!!」
明日香にウインクで返された大地は、あまりの魅力に鼻血を吹き出した。
「でも、ごめんね?私には、琥太郎がいるから。」
明日香は、そう言うと琥太郎の腕を抱き寄せてピッタリと密着した。
「お二人は、恋人の関係なんですか!?」
「明日香、誤解を招くようなこと言わないでほしいな。ただの腐れ縁だよ。」
「で?明日香の用事はもう終わったんだろ?ていうか、仕事はちゃんと終わったの?」
「ぶー、連れないな〜。分かりましたよ、仕事してきます。じゃあね。」
そう言うと、明日香は渋々といった風に部屋を出て行った。
「みんな、ごめんね?明日香は、だいたいあんな感じだから気にしないでいいよ。」
((((台風みたいな人だったな…))))
「さて、話がそれてしまったけど、とりあえず報告ご苦労様。今日話たかったことは大体終わったかな?任務の後は、こんな風に毎回報告をしてもらう決まりになってるからよろしく。」
「「「「はい!」」」」
「うん、物分かりが良くてよろしい。じゃあ、次の任務まで休暇にするからゆっくり体をやすめるように。
以上!」
こうして、報告を終えた焔達は次の任務に向けて、束の間の休暇を迎えるのだった…。
読んで頂きありがとうございました!!!
評価、コメント、等頂けると作者のモチベーションが上がります!よろしくお願いします!!




