初任務③
お久しぶりです!久々の投稿です!!
自分の大学進学もあり、忙しくて投稿が滞っていました、すいません。
これから不定期ですが投稿再開したいと思います。
よろしくお願いします!
ーー焔・大地組ーー
現在、焔と大地は小さな村を囲うようにある林道で焔の鼻を頼りにトラの捜索をしている。
なぜこんなことをしているのかというと、大地の考えにより焔の驚異的な嗅覚を使ってトラを捜索することに決めた二人は菊さんにトラが消える直前まで使っていた首輪を借り、トラの匂いを追ってここまで来たのである。
「よし、もうちょっとだな。トラの匂いが濃くなってきたぞ。」
「おいおい、ほんとにこんなところにいるのかよ?まだ日が明るいとはいえ、気味悪くねーか?」
「しかも、人が襲われてるってとこがこの林道だろ?なんか嫌な気がする。」
「んだよ、びびってんのか~?大丈夫だって、なんか出たら俺が倒してやっからよ!」
「ばっか!びびってねーよ!俺はお前とちがって慎重なの!」
相変わらずワイワイと騒ぎながら歩く二人だが、確かにまだ日が明るいにも関わらず少し重たいような雰囲気のする林道だった。
途中までは林道とは言え舗装された道だったのだが、いまではその道もそれて林のなかを歩き回っている状態である。
「とまれ。」
突然、焔が小声で木に隠れて止まるように指示をだした。
「どうしたよ?焔?」
「やっぱ、ビンゴだ!大地、見つけたぞ!」
「ほんとか!どれどれ...」
焔が自慢げに指さすほうをそーっとのぞいてみる。
「おいおい、ありゃあ...」
そこにいたのは、ぐっすりと眠るネコ科の動物。体には虎模様があり、完全に特徴は一致している。
しかし...、
「な?トラだろ?」
「ばっか、お前!あんなもんのどこが猫だ!明らかにデカいだろうが!トラじゃなくてガチもんの虎だろうが!!」
「あ?そうか??」
「てか、虎よりでかくね?なに、熊?ん?しかも、しっぽ二つはえてね?なにあれ、怖いんだけど!!」
「だめだ、焔!逃げよう!!あれ、ダメなやつだよ!出会っちゃいけないやつ!!」
大地が今にも泣きそうな顔で振り返るも、そこに焔の姿はなかった。
「あれ?焔?」
嫌な予感がして、眠っている謎の生き物の方を振り返る。
「おいおい、ウソだろ〜…」
大地は青くなった顔をさらに青くして、声にならない声を出す。
なんと、いつのまにか謎の生き物まであと一歩のところまで近づいている焔が今にも声をかけようとしているではないか。
「なーなー、お前がトラか?」
大きな顔の横にしゃがみ込み、ほっぺをツンツンとつっつきながら楽しそうに話しかけている。
「おいっ!!やめとけって!!」
大地は最小限に声を抑えながら、必死に焔を説得する。
しかし、焔は大地の声が聞こえているのかいないのか一向に辞める気配がない。
「おーい、聞こえてるか?起きろって。」
しまいには、謎の生き物の長い髭を引っ張り始める始末である。
「バカ、やめろ!やめて下さい!お願いします!なんでもしますから!!!」
「なんだよ、うるせ~な!」
やっと大地の声が届いたのか、焔がうっとおしそうに耳を押さえながら振り返る。
「・・・」
しかし、今度は大地が聞こえていないかのように返事をしない。
それどころか、真っ青な顔をして口を開けたまま何かを見上げるように固まっている。
「ん?一体なに見てんだ?」
大地が余りにもおびえ切った顔で焔の後ろのあたりを見上げるので、不思議に思った焔は大地の見上げる方向に振り返ってみる。すると...
グォォォォォォォォォ!!!
そこにはなんと、地面も震えるほどの咆哮で焔たちを威嚇する謎の生物の姿があった。寝ているときも目立っていたその大きさだが立ち上がった姿を見るとまた一段と大きく見えた。トラックほどの大きさはありそうである。
「あ、やべ...。」
これにはさすがの焔も危機感を感じる。
余りにも近くに迫ったソレをどう対処するか焔が考えていると、いきなり服の襟を引っ張られそのまま後ろに引きずられた。
「大地!!」
「バカ!早く逃げるぞ!!てか、自分で走れ!」
焔を引っ張った者の正体は大地だった。焔も少し引きずられたものの、すぐに体勢を整えて大地の横を同じように走り始めた。
しかし、ソレが簡単にあきらめてくれるわけもなくすぐに焔たちを追ってきた。
「はっはっはっ!!まさか、トラがあんなデカブツだったとはな?」
焔はケタケタと笑いながら必死で走る大地に向かって話しかける。
「だから、あんなんどう見ても猫じゃねえだろ!てか、お前のせいでこうなってんだぞ?なんとかしろ!!」
「んん~、そうは言ってもあいつの相手はなかなか骨が折れそうだぞ?」
なぜだか、そう答えながらも嬉しそうに笑っている焔を横目に、大地は途方に暮れるのであった。
「ああ、もう!!誰か助けてくれ~~~~!!!」
ーー志乃・薫組ーー
現在、志乃と薫は浩太を連れて春斗と春香の父親に聞いた情報をもとにひたすら林道を歩いていた。
向かうのは村をぐるりと囲む林道の中間あたり、村を東西に分けるならばその境目あたりだろうか。春斗と春香の家を出てから少し時間がたっているが、目的地まではもう少しかかりそうである。
「ねえねえ、志乃お姉ちゃん?この先にトラがいるの?」
「う、う~ん、どうかな~。もしかしたら、いるかもしれないね?」
純粋な顔で聞いてきた浩太君に、志乃は少し気まずそうに曖昧に答える。
すると、薫が志乃に顔を近づけて志乃にだけ聞こえるような声で囁いた。
「志乃、いつか言わなければならないのなら早くに教えてあげた方がいいんじゃない?」
「でも...、まだそれが真実だと決まったわけじゃ...。」
「ええ、そうね。わかった。言うタイミングは志乃に任せるわ。」
「うん、ありがとう。まずはこの目で見て確かめなくちゃ。」
それを聞いた薫は納得したのかまた元のように歩き出した。
そして、それから何分たっただろうか突然薫が真剣な顔をして立ち止まった。
「?、どうしたの、薫ちゃん?」
「浩太君、私の後ろに。志乃も警戒態勢。」
「うん!」「はい!」
薫の指示に緊迫感を感じた志乃と浩太君は返事をして、すぐに指示通りに行動した。
「何か来る!」
薫はそう言うと、刀に手をかけて自分たちが進んでいた方向を睨む。
すると、薫の言葉通り遠く離れた前方から砂ぼこりが立ち始めた。どうやら、なにかがものすごい勢いでこちらに向かってきているようだ。
「なんなの...あれ。」
砂ぼこりは近づくにつれてだんだんと大きくなっていく。
浩太君も心配そうに薫の後ろで羽織の裾をつかみながら隠れている。
しばらくその砂ぼこりをよく観察していると、志乃があることに気づいた。
「ねえ、薫ちゃん!あれってもしかして人影じゃないかな?」
「!、ええ、確かに。人影に見えるわね。何かに追われてる!?」
「まずい!襲われてるなら助けないと!!」
志乃は焦ったように砂ぼこりに向かって走り出そうとする。
「ちょっと待って、志乃!あの二人ってもしかして...」
「え?」
そう言われた志乃は改めて何かに追われて走ってくる二人の人影をよく観察した。すると、何か見覚えのあるような二人組である。
「もしかして、焔と大地君!?」
なんと、砂ぼこりから逃げてきた二人組は村の東側でトラの捜索をしていたはずの焔と大地だったのだ。
「お~~い!!志乃~~!!薫~~!!!」
志乃と薫に気づいたらしい焔が、笑顔で手を振りながら向かってくる。
しかし、その横で大地は今にも泣きそうな顔で何かを叫んでいる。
「志乃ちゃ~~ん!!薫ちゃ~~ん!!助けてくれ~~~~。」
二人のギャップに少したじろぐ志乃と薫だったが、すぐにその理由を思い知ることになる。
「うそ...でしょ...。」
走って逃げている焔と大地のすぐ後ろ、砂ぼこりの正体でもあるソレが姿を現した。
なんと、トラックほどもあろうかという大きさの化け物が怒りの形相で追ってきているではないか。
そうこうしている間にも、どんどんと志乃たちに近づいてきている。
「志乃、浩太君!!私たちも逃げた方が良さそうよ。」
さすがに危険だと判断した薫が、いち早く浩太君の腕を引いて走り出した。
あまりの衝撃に固まっていた志乃も薫の声を聞いてはっと我に返り、薫と同じように来た道を、走って戻り始めた。
「一体何なのよ、もう!!あれってもしかしなくても村人を襲ってたって言う怪物だよね?ていうか、あんなに大きいなんて聞いてないよ~~。」
「ええ、そうでしょうね。でも、私はこれで一つはっきりしたことがあるわ。いえ、はっきりしてしまったという方が適切かもしれないわね。」
珍しく薫が少し悔そうな顔でそう言った。
「え?それはどういうこと?」
「春斗君たちのお父様が言っていたことが本当だったということよ。それに、それが今最悪な形となって現れてしまっているわ。」
「う...そ...。」
その言葉のあまりの衝撃に志乃は言葉を失ってしまう。
それに、薫の言葉にはもう一つ気になることがあった。
「最悪の形って?」
「信じたくないけど、あの怪物の特徴は菊さんに聞いたものと完全に一致しているわ。」
「!?、じゃあ、私たちを追って来てるあの子が...」
志乃がそこまで言いかけた時、焔がそれに答えるように最悪の形になってしまった真実を口にする。
「お~~い、志乃!薫!トラ連れてきたぜ!!」
「そんな...。」
それを聞いた志乃は再び絶句し、薫は何かに納得したような顔をした。
「なるほど、あれがトラちゃんで間違いないというのなら...。あれは、未練を残して亡くなった猫が成ると言う猫又という妖怪に間違いなさそうね。」
「じゃあ、トラちゃんはもう...。」
「ええ、悔しいけど...。」
志乃は、申し訳なさそうな顔で浩太君の方を見やる。
「どういうこと?」
浩太君は訳が分かっていないようでたいそう不思議そうに聞いてくる。
「そ、れは...。」
志乃がその質問に答えあぐねていると、薫がそれに割って入った。
「志乃、今はこの状況から抜け出すことが先決よ。」
「焔君!大地君!なんとかして、トラちゃんを誘導して!」
冷静に状況を判断し、的確に指示を出していく。
「よっしゃ、任せろ!」
「うそでしょ!?てか、ほんとにこれトラなの!?」
焔は笑顔で了承し、大地は未だ後ろに迫る怪物、猫又がトラだということに困惑しているようである。
「ほら、行くぞ!大地!」
焔は、刀を抜きながら体勢を入れ替え猫又に向かって行った。
「ああ、もう!分かったよ!!」
大地はあらゆる疑問を頭に押し込めて、トラを止めることだけに神経を集中させる。
「大地、壁!」
「了解!」
「土壁ッ」
焔の指示通り今のトラでも防げそうな高くて分厚い壁を創りだす。
しかし、
「ガルルルッ!」
トラは即座に飛び上がり、かなりの高さの壁を軽く飛び越えてくる。
「あれを軽く飛び越えるかよッ!?」
「クッ!大地頼む!」
焔は大地にそれだけ言うと、高く飛び上がったトラを見上げながらそれに向かい全力で走り出す。
「!?、ああ、そういうことね!」
「土柱ッ!」
焔の目の前に段々と高さが上がっていくように円柱の柱がせり上がっていく。焔は走り出した勢いそのままに円柱を駆け上がり、壁を飛び越え落ちてくるトラの向かって飛び上がる。
「あいつ、何する気だ?」
焔は、トラと同じ高さまで飛び上がると刀の柄を両手で持ち振り上げるような構えをとる。
「焔君!切っちゃだめよ!」
薫は焦ったように焔に向かって叫ぶ。それものそのはず、見た目は恐ろしい猫又の姿だが中身はまだトラの可能性がある。
「分かってるって!ちょっと目覚まさせるだけだ。」
「よっしゃ、トラ!歯くいしばれよ?オラッ!!」
なんと焔は、直前で刀の向きを変え峰の方でトラの大きな顔を横から殴り飛ばした。
「キャインッ」
「あれがちょっとの力かよ...。」
しかし殴り飛ばされたトラは空中で一回転して体勢を整えると音もなくきれいに着地した後、恨めしそうに空中の焔を睨みつけた。どうやら、落ちてくる焔を狙い撃ちするようである。
「おいおい焔、あいつ逆にピンチじゃないか?」
確かに、このままでは空中で身動きの取れない焔はなすすべなくトラに攻撃されてしまう。
しかしそんな大地の心配をよそに、焔はその類まれなる運動神経でトラと同じように一回転したかと思うとそのままトラの背中に飛び降り、しっぽまで走り抜けるとそのしっぽを滑り台のようにして滑り降りそのまま後ろの林まで走り去っていく。
「猿かよ、あいつ...」
余りの人間離れした動きに大地も呆然としてしまう。
そうこうしているうちに、トラも怒り心頭といった様子で焔を追いかけ林に消えていく。
「あれ、トラを怒らしただけなんじゃないの?」
そんなことを愚痴りながらも、大地も渋々といった様子で焔とトラを追いかけて行った。
「ふー、二人がうまく誘導してくれたようね。」
ことの一部始終を見守っていた薫は、安心したように胸をなでおろした。
「ねえ、薫ちゃん?あの猫または本当にトラちゃんなの?」
「ええ、残念だけど...。おそらく、ああして暴れているのはいきなり得てしまった大きな力に混乱しているんでしょう。生前と見える景色がまるで違うんだものああなるのも当然でしょう。」
「でも、なんでトラちゃんが猫又なんかに?」
「これも推測の域を出ない話だけど、生前の未練のために地縛霊のような形で現世に縛られていたトラちゃんの魂が何らかの原因で妖怪や妖魔の類と混ざり合ってしまったのでしょう。そして、その未練というのが...。」
そこまで言うと、薫はチラッと浩太君の方を見た。
「浩太君...。」
「ええ。でも、まだ希望はある。トラちゃんの魂がまだ猫又に取り込まれていないのなら、トラちゃんの未練を解決することで戦わずに成仏させてあげられるかもしれない。でも、それには浩太君がトラちゃんの死をきちんと理解し受け入れなければならない...。言いたいことはわかるわね?」
「うん...、そうだよね。大丈夫、わかるよ。」
「私はこれから焔君たちの援護に向かう。だから、志乃には浩太君を連れてきてほしい。きっとこれは志乃じゃないとできないことだから...。お願いできる?」
「わかった。任せて!絶対浩太君を連れて行くから。」
それを聞いた薫はコクンと一度うなずくと、焔たちが消えて行った林のほうにかけて行った。
「よし!」
志乃は気合を入れるようにそうつぶやくと、未だに状況を理解できていない浩太君に向き直る。
「浩太君、ちょっと私の話を聞いてくれるかな?」
「う、うん。」
浩太君は志乃の表情を見て真剣な話だと感じとったのか、少し緊張したように返事をする。
「トラちゃんのことについてなんだけど、落ち着いて聞いてね?結論から言うと、トラちゃんはもう...この世にはいないんだ。」
「...へ...?」
浩太君はあまりの事実に一瞬何を言っているのか分からないといった顔をした。
志乃はこの浩太の表情に言葉が詰まりそうになったが、それでも続けなければならない。
「春斗君たちのお父さんに聞いたんだけど、つい3週間ほど前にこの林道で荷車に猫がひかれる事件があったんだけど...、それがトラちゃんだったんじゃないかって...。」
「トラが...。」
「でも、この話には続きがあるの。今、トラちゃんの魂は天国に行けずにこの世に縛られてる。」
「どういうこと...?」
「トラちゃんの魂は猫又っていうさっきの妖怪に捕らえられてずっと苦しんでるの。」
「あの大きなのが?」
「そう、でも今ならトラちゃんを助けられるかもしれない。それには、浩太君の助けが必要なの。協力してくれるかな?」
「でも...、ぼ、僕なんかができるかな?」
突然親友の死を告げられ、今度はその親友の魂を救うのに協力してほしいと頼まれ、浩太君のその小さな体にどれほどの絶望と不安があるかは計り知れない。それでも浩太君は不安を抱えながらもそれに立ち向かおうしてくれている。今すぐにでも抱きしめて慰めてあげたい。でも、今はまだそれをしてあげることはできないから...、不安だけでも取り除いてあげたい。
「大丈夫!浩太君ならきっと...、ううん、絶対できるよ!」
志乃は安心させるようにとびっきりの笑顔で答えた。
「わ、わかった。できるかわからないけど、やってみるよ。」
「ありがとう!それじゃ、行こうか?」
「うん!」
何とか浩太君を説得することに成功した志乃は、浩太君の手をひいて猫又と戦闘中の仲間たちのもとに向かうのだった…。
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