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妖子の剣士  作者: ゆゆ
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始まり

吹雪の吹くある日の雪山...



一人の男が足取り重く歩く。名を十蔵という。



服は、雪山に似合わず軽装で申し訳程度に笠を

被っている。腰には、刀を一本ぶら下げていた。



十蔵はクシャクシャになった紙を取り出して睨みつけ

唸った。



「ったく、気乗りしねぇなあ〜〜、山に隠れ住む

妖狐を狩れだぁ〜?」



「何が楽しくて手負いの狐いじめなきゃなんねー

性に合わねぇんだよなぁ」



チッと舌打ちをしながらも一歩一歩確実に歩みを進める。これも仕事だ。誰がやらなくてはいけない。

十蔵は、決して真面目ではないが私情と仕事の分別くらいはつく男だった。



「なんだかなぁ〜〜」



そう呟き、十蔵は進む。人里などとうに離れている。

自分の勘だけを頼りに進む。

重くのしかかるような気配のする方へと...







「やけに重てぇ気配だな、本当に手負いか?」



独り言のように呟いて首をひねる。先程まで遠かった気配がここにきて急に強くなったのだ。



「近づいているのか?...いや、違うな。」



近づいただけならこんなに急激に気配が強くならない

だんだんと強くなっていくはずなのだ。



「気付かれたか!? 」「まさかな...」



十蔵の読みでは、まだかなり距離があるはずだった。

これでも十蔵はかなりの強者だった。仲間うちでは、

上位に入るほどの。それなりに場数も踏み、修羅場も何度も経験している。それ故に、十蔵の勘はかなりの精度をほこっていた。



「読み間違えたか?いや、そんなはずは...」



実際のところ、十蔵の読みはほぼ完璧と言っていいほど当たっていたのだ。



「こりゃ、嫌な予感がしてきたぜ。」



距離が遠いにも関わらず、これだけ強い気配を感じるということはどういう意味を持つのか、答えは一つしかない、敵が強者であるということだ。

その上、相手は人では無いのだから余計にタチが悪い。



「こんなの聞いてないぜ、アイツら帰ったら絶対シめる!」



「年長者をこき使いやがって!」



そう、十蔵は仲間うちでは年長の部類に入る。

言葉こそ若者のそれだが、実際は四十五歳のなかなかのオッサンなのである。



「余計なこと言ってんじゃねぇ」(殺気)



コホン...、十蔵は、気を引き締め気配の強い方へと慎重に進む。気配は進むにつれ強くなっていき、やがて十蔵は、一つの洞穴を見つける。



「なんつー気配だ。やっぱ若い者んにゃあ荷が重いな。」



その洞穴からは、いっそう強い気配が放たれており、

まるで「近づいたら殺す」と言わんばかりの異様な空気が立ち込めていた。

十蔵は、ここで初めて刀の柄を握った。それだけ、

十蔵の勘が警鐘を鳴らしていたのだ。



「さあ、来るなら来いよ!」



十蔵は、最高潮の警戒を保ったままジリジリと洞穴ににじみ寄る。

5分、いや10分経っただろうか。とっくに相手の間合いに入っているはずだった。だが、一向に攻撃を仕掛けてこない。



「どうしたぁ!そっちが来ないならこっちから...」



そのとき、十蔵は初めて洞穴からひどい血の匂いがしていることに気づいた。



「てめぇ、まさか!」



十蔵は、柄に添えていた手を離し、一直線に洞穴に駆け出した。

そこにいたのは、4〜5mはあろうかという巨体の妖狐だった。その毛並みは黄金に輝き、眼光は鋭く、赤くギラギラ光っていた。それに、尻尾は九つあり身体に寄せるようにまるまっていた。



「伝説の幻獣、九尾。本当に実在していたとはな...」



「だが、その傷...、お前ほどの化け物がなぜそんな傷を?」



九尾の全身は大量に出血しており、意識を保っているのもやっとの状態で、十蔵の問いかけにも、

少し起き上がり「ガルルル」と低く唸っただけで、

すぐに力なく伏せてしまった。

十蔵が注意深く観察すると、身体のいたるところに生々しい傷があった。



「こりゃ長くねぇな。」



仕事柄こういうことには、敏感になってしまっていた。生き物の死に何度も立ち会っているうちに、死期というものが分かるようになったのだ。十蔵は、命を刈り取る側の人間であるが故に、一欠片の情すらも持ち合わせてはいないが、この時だけはなぜか哀れ(?)だと思った。悲しみではないはず、だが哀れみも少し違う...、そんな感情だった。



(俺も歳か...)



そんなことを考えていると、ふとあることに気づいた。



「お前、一体何を守ってる?」



いっけんただ寝そべっているだけのようだが、そうではなく、何かを守るためにそういう姿勢をとっているのだと気づいたのだ。

十蔵は、それを確かめるため九尾に近づく。



「ヴォオウ!」



すると、九尾は半身を持ち上げ(近づくな!)とでも言うように鋭く吠えた。ほぼ意識もないだろうに、そこまでして一体何を守っているのか。



「何もしねぇーよ。ほら」


十蔵は、下げていた刀を地面に置き、両手を広げ、警戒を解くようアピールした。



すると、納得したのか元の体勢に戻り、守っている何かが見えるように少し身体を広げた。



「なっ!?ガキ?人間のガキか!?」



なんとそこには、白い布に包まれた人間の赤ん坊がスヤスヤと眠っていたのだ。



「九尾が人間のガキを守ってたってのか!?」



「ありえねえ...」



十蔵が驚くのも当然だ。誰がみても目を疑うような光景なのだ。ましてや、傷つき瀕死の状態の獣が人間の赤ん坊を守るなどありえないことだ。食べられていてもおかしくはない。



十蔵はゆっくりと赤ん坊に近づき、赤ん坊を抱きかかえた。赤ん坊は、気持ち良さそうにスースー寝息を立てて寝ている。



「おい、見ろよ九尾。コイツ、お前の気も知らねえで気持ち良さそうに寝てらぁー」



十蔵は、思わず笑いながらそう言った。



「って、もう聞いちゃいねえか」



九尾は眠ったように目を閉じ、息をひきとっていた。

十蔵は、赤ん坊の寝顔を見つめて呟く。



「ったく、結構な土産物遺しやがって...」



十蔵は、九尾の顔が安心したような顔になったような気がした。



「安らかに眠れ」



十蔵は、合掌してそう呟いてから洞穴を出た。







まだ吹雪の止まない雪山を男は歩く。



行き比べれば、いくらか足取りが軽くなっているようにみえる。一歩一歩確実に歩みを進める。



雪山の寒さから守るように幼い赤ん坊を抱きながら...



読んでいただきありがとうございました!

何も考えずに書き始めたので、この量でめちゃ時間かかりました笑笑

小説って難しいですねー

次も頑張って書きたいですが、なにぶん高校生ですので結構時間かかるかも?

でも、次も読んで下さるとありがたいです!

ありがとうございました!

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