提案【2】
大地視点です
「入れ替わるって…」
「えへへ。そのままの意味ですけど?」
ニコニコといつもと変わらない眩しい笑顔を浮かべて、手を差し出してくる。
きっと冗談だろう。パソコンの中に電脳体として入るなんて非科学的すぎる。出来るわけがない。
ミミは俺を笑わせようとしてこんなふざけた事を言っているのだろう。
「あはは、やれるもんなら入れ替わりたいよ。」
半笑いしながら画面の奥の手に合わせる。
温もりを感じない不確かなモノに触れ、笑いかける。
話しかけたりしてくれるだけで実体はそこにない。
「ご利用期間が終了いたしました。今から“電脳友達”として派遣されたミミへ代償を払っていただきます。」
「…え?」
突然、ミミから表情が消える。
感情がそぎ落ちたAI独特の声を出す。
ご利用期間…?代償…?
「どういう、ことだ?」
「そのままの意味でございますご主人様。いえ、大地様。ご利用期間が終了したのです。なので今日まで大地様につかえておりましたミミはその報酬として大地様から《代償》をいただきます。」
「は…?そんなの聞いてねぇぞ?!」
「おや?ちゃんとメールを読んでいなかったのですか?最後の方に書いてありましたよ?」
「そんなのしらねぇよ!だから無効だ!!」
「それま困ります大地様。私はこの代償のために頑張ってきたのですから。」
「い、嫌だ…」
「ご利用期限は大地様が私との“入れ替わり”を承諾したら…」
「やめろ…」
怖くなってパソコンを閉じて逃げようとする。
「おや、逃がしませんよ?」
「ひっ…!」
スマートフォンらから腕が伸びてきて俺の体を掴む。
逃げようともがくが力が強くてかなわない。
「この日のために大地様の個人情報を沢山調べてきました。眠った後を見計らってスマートフォンに入り込み、データーを読み込んで日記を読み…沢山の苦労を重ねてきました。」
「離せ…!」
「あぁ、やっと戻れるんだ…やっとこっちの世界に帰れるんだ…」
「…こっちの世界に、帰れる?」
「あぁ、私も昔は大地様みたいにぼっちでした。そんな時、“電脳友達”というメールが届いて…シャルルという男の子の電脳体が仲良くしてかれたんです。なのに…なのに…あの日々は全部嘘で代償のためだけに私と仲良くしてたんです!だから、だから私も同じ目に合わせてやろうと…大地様を騙したのです!」
狂ったように笑い出すミミ。
よほど辛かったのだろうか、初めてできた友達に騙されたのは。
「ごめんなさい、サヨウナラ…」
目の前が真っ暗に染まり、意識が掠れていく…
最後に見えたのは、0や1の世界で自分の部屋がやけに遠く見えた。
後1話です。
短くてさっくり読めていいね!