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「おかえりなさい」
大地視点です
「はぁ…」
地獄のような仕事から逃げるように会社から出る。
早足で駅へと向かい、人に押し潰されながら帰宅する。
今日は課長に細かいミスで怒られちまったなぁ…明日も仕事だ。嫌だなぁ、もういっそのことニートになりたい。でも、働かないとお金は無くなっていく一方だし…
仕方ないのかなぁ。社畜になるのは運命だったのかもしれない。うん、きっとそうだ。
運命には逆らえないから諦めるしかないんだ。
今、自分がこんなことになっているのを全て運命のせいにしながらボンヤリとおぼつかない足取りで家へと帰る。
「ただいま…」
誰もいない真っ暗な部屋に向かって独り言をつぶやく。
誰も返してくれるわけもない独り言は冷え切った空気に溶けて…
「おかえりなさい、ご主人様。」
あぁ、そうだった。
昨日からミミがウチにあるんだった。
空気に溶けて消える予定だった独り言はパソコンの中の少女によって拾われる。
その「おかえりなさい」は冷えた空気を温めるように反響する。
何年かぶりに聞いた「おかえりなさい」は自分の中の疲れをゆっくりと癒してくれる。
「…ただいま、ミミ。」