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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編大作選

ココロしか痛くない

綺麗な顔をした少年に恋をした。


一目惚れというものが私の中にも存在していることに驚きを覚えた。


緑の上をうろうろしながらファインダーを覗く私のレンズに映る少年。


川原を颯爽と通りすぎる学生服姿は周りに何も伴わない孤独な可愛さを持ち合わせていた。


沈みかけの夕日に重なる綺麗な姿は、この町で見る初めての水面に色を添えた。




次の日の同じ時間に川原へ向かえば、また綺麗な顔に逢える。


私の答えは単純だった。


写真家としての使命も忘れ、さ迷う芝生。


芸術としての美しさも、恋愛対象としての美しさも兼ね備えた少年の姿は明度の低下した川辺にまだ現れない。


この町で美しい写真は何百枚と収めてきたが、少年の綺麗な顔に勝るものはない。


見惚れて閉じることを忘れた瞼もシャッターも少年との再会を望んでいた。




やっと姿を見せた暗がりの美少年に、シャッターを切る気にはどうしてもなれなかった。


少年は、いかにも悪そうな同じ学生服の生徒に肩を組まれながら歩いていた。


後ろには柄の悪い学生服が二人ほどいて、整った美しさを保ちながら少年は怯えていた。


悲しそうな少年を目の前にして、また出逢えた幸福は置き去りにするしかなかった。


胸の奥の方がざわざわざわと揺れ始め、少しの間纏わり付いて離れようとしなかった。




心の痛みを紛らわせる為に熱中出来るものを探していて、出逢ったのが写真だった。


ほとんどの人が撮影の許可を快く承諾してくれ、カメラを向けられるとみんな笑顔になった。


表面的な一場面を切り取り、苦しみの無い世界を切り取るという、現実からの逃げでしかないようなものに熱を注いだ。


そして私は写真家となった。


冷血や悲惨さに真っ向から踏み込む写真家もいれば、私のような者もいる。


写真の世界だけでも美しくあってほしい。


写真のように薄っぺらな私の不幸なんてどうでもいい。


全てのものに美しさを少しだけでも纏わせてあげたい。


それだけだった。




翌日、少年のぼろぼろの美しい横顔が通り過ぎた。


レンズを通しても、決して幸せには変換出来ない悲しさが滲んでいた。


少年の翳りを写真で鮮やかに出来るほどの力を私は持ち合わせていない。


透き通った川と向き合うことは出来ても、辛すぎる現実と向き合うことなんて私には出来なかった。


現実と向き合えば、心はぺちゃんこに押し潰されてしまう。


みんなを笑顔にしたいのに痛みに怯えて何も出来ない上辺だけの人間で、そう思われていても仕方がない。


真の痛みがどんなものなのかも説明出来ない私には、カメラ越しの景色がよく似合う。




頬に傷のある少年の心身の痛みも、目に映るあらゆるものの痛みも計り知れない。


どのような刺激で、どのような苦しみを抱いているかなんて知りたくもない。


気の早すぎる街灯に照らされた紺色のジャージ達がボールを投げ、バットを振る。


私を意識して笑顔になる美しい被写体達にレンズを向け、幸福を切り取る。


少年達の生き生きした姿に、綺麗な顔をした少年の対照的な表情を思い出す。


気が付くと、バッターが振り切ったバットから放たれたボールは一直線にこちらへと迫ってきていた。


鈍い音が微かに響く。




左の肩に当たった感触はしたが、いつものように僅かな痛みも表れることがなかった。


誰かに殴られても、何かにぶつかっても、何が起こっても肉体的な痛みのないこの身体に苛立ちしかない。


駆け寄ってきた、少年達に以前のような笑顔は全くなかった。


私の不注意で少年の幸せをひとつ奪い、心配をひとつ増やしてしまった。


軟式という柔らかそうな名称のボールだが硬く、それが余計に少年達を不安にさせた。


その不安が私に伝染し、心を少しずつ痛め付ける。




痣くらいにはなっていそうだが、心配される方が苦しい。


ただ皮膚の色が変わっただけ。


痛みのない世界では身体の心配なんて必要ではない。


コミュニケーションが得意ではない私には、慰めの言葉も困惑や申し訳なさに変わってしまう。


いたいけな表情のまま少年達は去っていった。




美しい空の下で美しい川を背景に、美しい大地の上を美しい少年が歩む。


顔からは幸福がどんどん逃げているように感じた。


今日もただひとり、少年は傷の付いた綺麗な顔でとぼとぼと歩を進める。


暮れゆく景色のなかで光輝く少年の横顔。


その綺麗な横顔を悲しみに沈めた現実に怒りを覚えた。


綺麗な顔の少年の笑顔は一度も見たことがない。


笑わなくても美しい。


だが笑ったらきっと世界は幸福で満ちる。




殴られることなんて怖くないし、殴られたって何の怒りも感じない。


でも肉体の痛みが無いせいで、心に痛みが集中する。


周りの苦しみから湧いた心の痛みに対する怖さや怒りで、前に進むことが出来ないでいた。


少年の痛みや苦しみを想像すると、心が悲鳴をあげる。


肉体的な痛みを知らずに、これを痛みと呼んでいいものなのか分からない。


ただ、現実から逃げても現実と向き合っても、苦しいものは苦しい。


臆病で引っ込み思案な私のたったひとつの特性を活かすとき。


少年を守りたい、そして少年の綺麗な顔を守りたい。


今日もカメラのシャッターが一度も押されることはなかった。




恐れていたが、起らないことだと勝手に脳が処理していた。


現実が心に最大の痛みを与える。


悲惨な光景が今、視界のど真ん中に存在する。


何度も殴られ蹴られ、苦しい表情を浮かべる少年。


私の胸は苦しいを越えていた。


押し潰されそうとかそういう次元ではない、粉々に刻まれるような感覚。


美しさを汚す暴行を目の当たりにして、心が消えてしまえばいいと思った。


心が存在をなさなければ苦というものはなくなのだから。




誰かの痛みだけが、私の痛み。


苦がなくなれば、私の中の何がなくなってもいい。


そのためには現実を抱き締め、今ある全ての苦しみに耐えなければならない。


計り知れない心の痛みも、美しさの為なら蹴散らせそうだ。


美しい少年に心を捧げたい、この痛みを感じない身体を捧げたい。


少年の為なら何でも出来る、今の私なら。




太陽のない世界で、悶える少年は闇に隠れている。


フラッシュなしではカメラでさえも鮮明には写せないほどだ。


だが私の目には気持ちに反してはっきりと映り、くっきりと脳に焼き付くほどの苦しみとして蓄積されていく。


頼りない芝の生えた緩やかな斜面を下り、胸の痛みを必死で押し殺して進む。




カメラは置いてきた。


カメラで現実は写せても、カメラで真実は写せない。


頼れるものはない方がいいし、何かの妨げになるようなものもいらない。


殴られても痛くないという武器以外に、武器など必要ない。


学生服の生徒の目線が突き刺さり、恐怖と痛みと未来の幸福が高鳴り合う。


緊張感が溶け出したかのように、川の水面は一瞬たりとも微動することはなかった。




昔から、見た目が全てだと無理矢理思い込ませていた。


皮膚に出来た傷なんていつか無くなるだろうし、隠そうと思えば隠せる。


笑えば幸せに映り、笑えば何でも消せる。


そう思うしかなかった過去。


そんな自分が情けない。


苦をさらけ出さなければ内から腐り出す。


見た目を美しくしても心をそれで賄うことは出来ない。


若気の厳つい視線は、慎重に歩み寄る私の顔の一点に集中していた。




私にはこの立派な身体がある。


冷淡さを携えているこの身体がきっと綺麗な顔の少年と私の心の痛みを救ってくれる。


いじめる理由というものは単純で、単純だからこそ冷酷で、冷酷が複雑に絡み合う。


鋭い視線は相変わらずだが、私に危害を加える雰囲気は微塵も感じさせない。


意外と素直なのかもしれないと一瞬思うだけで、胸の痛みの上昇を抑制することが出来た。


首謀者の唇に絡み付くピアスがはっきりと確認できる距離まで近付くと、傍らにいた取り巻きのひとりがバッドを頭の上へと掲げる。


美しいものを見てしまうと壊れそうになる。


悲しさを見てしまうと崩れそうになる。


美しい少年を今だけは恋愛感情を抱いていないひとりの少年として捉えるしかなかった。




怒りや胸の痛みやあらゆる苦しみを優しさで包み込み、柔らかい印象の言葉にしてから彼らにぶつけた。


私は暴力をしないで彼らを包み込んだ。


二人に押さえ付けられている少年は下だけを見つめていた。


説得も説教もされたことしかなく不馴れから出たおどおどしさに、彼の放った弱そうだったからという理不尽な理由が突き刺さる。


それに触発されて私から荒々しい言葉が声になって漏れ出す。


彼ら三人はその声が止む前にもうすでに足を踏み出していた。


気が付けば彼の拳は私の目の前にあった。




辛さや不快を伴うものは全て痛みという言葉で表していいのだろうか?


もしもいいのならば、ここには痛みが溢れすぎている。


肉体の痛みが分からないので、私は苦しさを痛みという言葉で表現してしまっている。


彼らの怒りやストレスも痛みであるなら、その捌け口として殴られている私を横で目の当たりにしている美しい少年にも痛みが加わる。


自分自信に降りかかってくる不幸も理不尽も怒りも直接心の痛みに変わらないことが、救いにも悪い方向にも転んでいた。




皮膚に拳や靴が触れる感覚はある。


少しも苦しまない私に彼らが尻込みする様子はない。


思うように目が開けらない暗くぼやけた視界の中で、痛々しい少年は激しく引きずられていた。


必死に私は少年の前に身体を入れる。


殴られた脚は言うことを聞かない。


私の頭から少量地面に落ちた液体が透明か真っ赤かさえも分からなかった。




空は真っ黒な色をしていた。


辺りを静寂が包む。


身体がどんな状態であろうと動けてしまうのがいつもの私。


でも今は立ち上がることも出来ずにただ冷えきった空気を浴びている。


危険信号を出して動作を食い止めるのが痛みだが、私にはそれが無い。


だから自分自身の身体の異変なんて気付けたことがない。


心以外の私に何にも気付いてあげられていない。


それだけ健康なふりをする身体が言うことを聞かないというのは、ただ事ではなかった。




頭を動かし、視線を空から芝生へと移す。


ぐるっと辺りを見回す。


言うことを聞かないぼやけた目は、美しい少年のシルエットをしっかりと捉えた。


私のような薄汚れた姿とは正反対の美しい姿を見せてくれていた。


立ち上がることが出来る少年を見ても私の胸の痛みは消えることはない。


少年の痛みが削ぎ落とされたとは思えない。


彼らは何も変わっていないし、世界は何も変わっていない。


だが不思議と私の胸の痛みは、苦にならないほどにまで低下し保たれていた。


別世界の芝生に二人だけで置き去りにされたような感覚がした。




一定の距離を保ち美しい顔を見せる少年は震えていた。


そして何かに怯えるように立ち尽くしていた。


私の目は開けられる範囲が広がり、この世界の痛みが段々と目から入り込んで来た。


少年が私に軽蔑の眼差しをしている気がした。


私を怖がり、怯えているようにさえ感じた。


以前よりも悲しく苦しそうな少年の顔を私が作り出してしまった。


胸の苦しさがアクセル全開でスピードを上げる。




私はおそるおそる心配の声を少年にかけた。


少年は後ずさりを始めて段々と私から遠ざかっていく。


そして小さなありがとうの一言だけを残して逃げるように走り去っていった。


胸は張り裂けそうになるほどで、今まで以上に苦しいものだった。


今、感じた胸の痛みは誰かの痛みから発生したものではない。


初めて自分自身から直接生まれてきた心の痛みだった。


どうしてなのかは分かっている。


少年が好きだからだ。




暗い芝生が惨めな私を隠そうとする。


この世界にいないものとして。


当たって砕けた。


意見を掲げられなかった引っ込み思案がここまで来た。


今まででは考えられない私。


だが痛みも理解出来ないくせに出しゃばるなと風が怒っているだろう。




胸はずっと強く痛い。


身体をずっと殴られるとはこういうことなのだろうか。


透明な誰かに脚を押さえられている感覚はまだ解けない。


世界の目の届かない深い闇の奥にいるように思えた。


少年の問題は悪化の一途を辿っている。


少年を虐める彼らはしつこく説得をすれば分かってくれるはずだ。




明日も彼らの前に立つ。


この身体の異変も明日には治るだろう。


美しい少年や彼らや他の全ての人達が悲しくならない世界のため、組織に頼るわけにはいかない。


私の心の痛みの針が振り切れるまではやりきる。


すると、明るいところから声がした。


その声は私を呼んでいるようだった。




スーツの男性が私の視界に駆け込んで来た。


そして、私に何かを一生懸命に訴えながら電話をかけている様子だった。


表情は暗くて見えないが、明るくないのは確かだ。


夢のようなふわふわとした現実感が痛みと共に居座る。


気付けば左の耳が機能を低め、ほとんど役割を果たしていなかった。




「大丈夫か?救急車呼んだからな!」


耳元で声を張り上げた年上男性に美しさの欠片もない。


美しいというより激しいという言葉が似合う男性に少しばかりの苦手意識が芽生えた。


「息は苦しくないか?おいっ、血塗れだし、たぶん脚の骨も折れてんじゃねえか?」


骨が折れていると聞いても何の実感も湧かない。


骨が折れていると脚が動かなくなるものなのかさえもよく知らない。


少し時間を置けば歩けると思っていた甘い私の頭に美しい少年の行方がちらつく。




肌寒い夜の血塗れの私に、男性が掛けてくれたスーツの上着で黒く染まる。


「殴られ過ぎて顔がブスだぞ!女なんだから美しさを汚すな!」


仰向けで声も上手く出せないまま、明日から始まる闇が掛かった真っ白な日々の訪れを憂う。


「さっきそこで走り去っていくぼろぼろの少年と擦れ違ったんだけど、あんたはあの少年を助けようとしたんだよな?何してんだよ!」


冷たい言葉遣いの中にも、私に寄り添おうとする仕草の中にも、暖かさが感じられた。


心の痛みが、引いていく荒波のように徐々に和らぎ出したのは男性が私に寄り添ってからだった。




「目の前で殴られてたら余計傷付くに決まってるよ!」


殴られて顔が腫れ上がり不細工になれば誰でも怖がる。


自分が一番自分の身体のことを理解出来ないことによる落ち込みが押し寄せる。


美しい少年が汚い私から逃げた切なさも沢山の小さな痛みも男性がぎゅっと抑えてくれた。


私は心しか痛くない。


そのことを男性に伝える気は全くない。


私は美しい少年の美しさの他に好意を持つことはないのだから。




サラリーマンがスーパーマンと同じ類いの名称に感じるほどの正義感が男性には滲んでいた。


「ずっとおかしいと思ってたんだけど、脚折れてるのに痛がらないよな?」


私は誰かに頼りたいわけではなく、全ての人のためになりたい。


痛みは肉体より心の方が軽いと思っている。


毎日私を苦しめる心の痛みよりも遥かに苦しい痛みをみんなは感じている。


だから私は耐えられる。


少年を含めた全ての人の平和のためなら何でも出来る。


「もしかして痛くないのか!」


私の特殊な体質を見抜いた男性の質問に首を縦に振るしかなかった。


狭い視界の中で男性は傍らに落ちていたバットを拾い上げて俯いていた。




「頭痛も腹痛も分かんないのか?」


心配無用と意思表示をしても男性の言葉が深入りを求めてくる。


「痛みがないと加減が出来ないんだからな!もう無理するなよ!」


救急車のサイレンが鳴り響く。


数分前から継続する男性の説教は救急車のサイレンよりも耳に響いていた。




男性のワイルドな顔が目の前にある。


でも頭の中にはずっと美しい少年が浮かんでいる。


好きな人に嫌われることは苦しい。


それを想像ではなく身を以て体験したのは少年が初めてだった。


好きな人に嫌いという負の感情を抱かせてしまったことも苦しい。


男性の良心を受け取りたくない心も苦しい。


寝そべる私はサイレンと共に道を走る。


痛みを吸い取る男性の気迫が、狭い車内の抜け殻に寄り添う。


瞼のシャッターを切り、脳に記憶していた初めて逢った時の美しい少年の写真をずっと脳内で再生し続けた。




意識はどこか遠くへ飛んでいきそう。


男性の声だけは私の耳を何度も素直に通り抜ける。


「アイツらは話して分かるような奴ではない。もう関わるな」


「あなたが心配なんだ。放っておけないんだよ」


「僕があなたの痛みを無くしてみせるから側にいさせてくれ」


「ヒーローなんて呼び方は似合わないけど僕があなたを守る」


「僕が一生あなたを守る」


身体に備わっていない痛みの代わりとして、むず痒さが目の辺りに溢れていた。




目を開けると新雪のように澄んだ白が広がっていた。


そこが病院であると分かるまで、ある程度の時間を要した。


数十年、縁のない世界。


写真の中の世界、画面の中の世界。


悲しみや痛みが溢れる場所でありながら、希望も少なからず存在する場所。


痛みを無くしたい写真家なら、避けてはならない場所に今いる。


不思議な感じがした。


悲しみに入っていったことで私の痛みには慣れが生まれた。


決して男性が私の痛みを溶かしてくれた訳ではない。




昨日の男性が紙袋をぶら下げて病室に入ってきた。


男性は私の心にまで入り込もうとしていた。


好かれたいのは男性ではなく少年。


他に理由もなく守りたいと思うことは好意なんかじゃない。


ただ介抱したいと思うことも好意なんかじゃない。


男性はガラクタのような私に同情したに過ぎない。


コミュニケーション能力不全の私を守ろうとすれば後悔を生み兼ねない。


私のために何かするなんて無駄だ。




嫌いな人なんてこの世に一人もいない。


でも守るという言葉に甘えられるほど強くない。


守られることさえ辛い私は、男性との関係に隙間を保つしかなかった。


私が気持ちを踏みにじってしまった男性の顔はとても清々しかった。


最後に男性とは、ある約束を交わした。


それは無理は絶対にしないこと。




母が亡くなったとき以来の病院だった。


痛みが増えるきっかけになったあの頃の病院の記憶は必死で消去していた。


今はぼろぼろで芝生に寝そべったとき以来のあの川原にいる。


痛みが減るきっかけになった男性と初めて出逢った場所。


男性の気持ちを踏み躙っても僅かな痛みしか感じなかった。


それは男性の表情から痛みを感じなかったから。


今も男性とはスマートフォンだけで繋がっている。




少年達はどうやらこの町からいなくなったらしい。


平和にはまだまだ程遠い世界ではあるが、この先痛みのない世界へと変えていきたい。


汚いものは間近で目の当たりにすべきときもある。


美しいものは遠くから眺めている方がいい場合もある。


私はシャッターを切った。


少年の下手な笑顔は最高に美しい。


もう何も痛くない。

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