俺、陽野早太は…
今、頭の中に一人の男を思い浮かべて欲しい。
それは自分が今まで見たなかで1番顔がかっこ良かった男。
今、頭の中に一人の男を思い浮かべて欲しい。
それは自分が今まで見たなかで1番頭の良かった男。
今、頭の中に一人の男を思い浮かべて欲しい。
それは自分が今まで見たなかで1番運動神経の良かった男。
この3つのどれかに入る事が出来る男はそういないだろう。
だが…
このどれか一つでも当てはまることの難しい3つの頂点全てに腰掛ける男がいる。
そう、俺、陽野早太である。
ありがたい事に裕福な家庭に生まれた俺は
ありがたい事に美人な母に育てられ、
ありがたい事に物心着く前から完璧な英才教育を施され、
ありがたい事に毎日別のスポーツの習い事をされてもらい、
そのせいか、毎日の運動により引き締まった腹筋と顔は毎年のバレンタインデーのチョコの数から俺がモテているという事を暗示していた。
皆さんは校舎裏に呼び出された事はあるだろうか?
こんなベタベタな展開も俺には割と月二ペースで来るものである。
皆さんは成績オール5取ったことがあるだろうか?
俺は今まで成績全て5で埋め尽くされていた。
皆さんは部活の助っ人に呼ばれたことはあるだろうか?
このベタ展開も、俺にとっては日常茶飯事である。
しかし
だかしかし
俺には唯一の難点があった。
と、毎度のように思いながら家のドアをインターホンを鳴らした。
瞬間、ドタドタという足音と共に俺が気にするその難点の元凶が、ハグ&キスをかましてきた。淡い夕焼けに反射するその眩い光に目を細めながら
「ただいま」
と帰宅を表明すると
「おかえりなさい♬卒業式感動して涙がドバドバだったよー」
と、満足そうに顔を擦り寄せる父に殺意を抱きなから部屋へと歩いていく。
もうお分かりいただけただろうか、頭脳明晰で、運動神経がよく、そして何よりイケメンであるこの俺陽野早太は、恐らく数年後にはハゲという逃れられない現実の餌食となってしまうのである。
するとどうだろう。毎年右肩上がりのラブレターの数が、右肩下がりになってしまう。それだけは避けなくてはならない。
俺だってずっとモテたいし、チヤホヤされたい!
それが半世紀以上出来ないなんて絶対に許されないのだ。
そのためにわざわざ日本一の高校を蹴ってまでこのさいしま私立毛様
高校に(もようとよむ)に来たのだ、絶対にふさふさエンドを勝ち取ってみせる!
これは人にバレては行けないたった一人の戦いの物語である。