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第4話 新たな仲間

「まさか…りゅ、竜王!?」 


 そこにいたのは白鱗碧眼の長い尻尾を持ち四股で背中に2つの翼を生やした竜だった。ミラが本気で怯えているところを見るとどうやらやばいものを召喚してしまったらしい。


「竜王?」

「竜王というのはこの世界にいる竜の王者であり世界最強の魔物です」


 姿は違えど今度こそ本当に世界の半分をくれる魔物にであったということか。戦うんだろうか?勝てるといいけどな。


(ふむ。我の説明をしてくれたようで助かる。だが1つ違うな。我に名前はない。竜王というのはその辺の人がつけた称号だったか?そのようなものじゃ。我の種族名はエンシェントドラゴン。種族といっても我しかいないので固有名のようなものじゃがな)

「そのエンシェントドラゴンがなんでここへ?」

(貴様が勝手に呼んだのであろう?まさか我を召喚できるほどの力があるとは思わなかったぞ。魔王よ。魔王が召喚したということは我を使い魔にするつもりか?)


 はい、って言った瞬間殺されないだろうか。だが呼んだものは仕方がない。まだ腰を抜かして怯えているミラのためにも頑張らなければ。


「そうだといったらどうする?素直に使い魔になってくれるのか?」


 そう言った途端に竜王の周りに輝かしい、だが恐ろしくもある白い殺意のオーラが発せられた。その反動でソーマは動じなかったものの、ミラはあっさりと気絶してしまった。竜王はしばらくオーラを発していたが、俺に効かないと分かるとオーラを消した。


(ふむ。我のオーラを受けて動じないとは中々いい精神力じゃな。だがその女はダメじゃ。あっさり気絶するとは…殺すか)

「あ?てめぇ何言ってんだ?お前の方こそ殺すぞ?言葉は選んだ方が良いぞ?」


 その瞬間俺から魔王の覇気と合わせらせた純粋な殺気がまるで稲妻のごとく発射される。


(き、貴様その殺気はなんじゃ!?)

「殺気?なんだそれ。それよりもお前さっきミラを殺すって言ったのか?なぁ。言ったよなぁ!?」


 さらに俺から強い殺気が溢れ出す。それを受けて竜王は少しひるみ、俺が1歩歩くたびに竜王は1歩後退する。


 そのまま歩みを進めるとそのうち竜王は壁際に追い詰められた。だがそれでも俺は歩くのをやめない。そしてあと10歩で竜王に触れる距離まできたところで竜王が嘆くように叫んだ。


(すまなかった!まさかお主がそれほどあやつのことを気に入ってたとは…さっきのは失言だった。許してほしい)

「まさか許してもらえると思っているのか?え?」

(許してもらえるとは思ってない。だが我の命だけで勘弁してほしい。どうか我の眷属には手を出さないで欲しい)

「お前にも守るべきものがいるのか……じゃあしょうがないな。反省しているようだしいいか」


 今までの殺気が嘘だったかのように消えていく。そのあとには殺気のさの字もないほどに訓練場跡地は静かだった。


(ゆ、許してもらえるのか?)

「え?何のことかあんまり覚えていないけどミラにしっかり謝ってもらえるならさっきの発言はなかったことにしよう。あとちゃんと使い魔の契約も結んでもらえる?それとも戦ったりして実力を示す?」

(いや、結構。いまのでお主の実力はなんとなくわかった。お主と契約を結ぼう。我が主よ、ここに主従の契約を)

「どうやって結ぶの?」

(確かお互いの血を飲んで主従の関係を認めればいいと、我の眷属が言っていたはずじゃ)

「竜の血を飲むの!?なんか怖いな…」

(はっはっは。竜の血は神聖なものじゃから害はない。…おそらく)


 最後に何か聞こえたような気がしたが血を飲まなければいけないならやろう。


 こうしてお互いの血を飲み終えた俺と竜王は主と使い魔という関係になった。竜王の眷属までついてくるおまけ付きだったが。俺は吸血鬼じゃないが意外と竜王の血は飲みやすかった。おいしいかと言われれば首を捻らざるを得ない味だったが。


「しっかしでかすぎるな…どうやって連れまわしたらいいんだ?」


 主従の関係になったからこそできた問題がある。それは竜王があまりにもでかすぎて連れまわせないという物だ。なら一回一回呼べばいいと思うかもしれないが想像してもらいたい。血で半径15mの魔法陣を描くときに消費する血の量を。流す魔力は無限だが魔法陣を作る血液は有限なのだ。一回一回描いてたら死んでしまう。


 だがそんな心配事は杞憂に終わった。


(安心してくれ。我々竜族は上級種になると亜人化できるのじゃ)


 すると竜王の体が変身魔法のような白い霧に包まれたと思ったら中から白肌ですごくいいスタイルで、腰ぐらいまで長く伸びた白髪に豊かな胸を持ち、額からは白い2本の角が生えている。だれが見ても絶世の美女と言わざるを得ないような女性が出てきた。ただし裸で。


「あれ!?竜王って女だったの!?というか服ぐらい着れよ!」

「ん?言っておらんかったのかの?そうだが何か問題でもあるのか?というより服など持っておらん」


 いや、たしかに少し声が高いな。でも一人称“我”だから男だと思ってた。服を持ってない…だと?


「いや、女性だとミラがいろいろ……あれだし…それに服着てないと勘違いを…」

「ソーマさん…。その女性はだれですか…?なんで裸なんですか…?」


 ミラがどうやら目覚めたようだ。だが目が笑ってない。ジト目でこちらを見ている。


「ミ、ミラ!?こ、これはだな…」 


 俺が説明する前に竜王がミラに完璧なスライディング土下座を決めた。裸だから砂地は痛いだろうにまったくそんな素振りは見せなかった。


「すまなかった!」

「な、なんですか!?いきなり謝って…ま、まさか…私が気絶している間に何してたんですか!?それに竜王はどこ行ったんですか?」

「落ち着けミラ。全部説明してやる。そのまえにお前服やるから着ろよ」


 そういって俺は指輪から竜王が着れそうなサイズの麻のチュニックやらスカートやらを出して竜王に放り投げる。なんでこんなものが魔王城にあったんだろう。


「後で本当の防具やらやるから今は仮ってことで着てろ」

「分かったがちと胸がきついのう…」

「それぐらい我慢しろよ」


 竜王を見ると胸がはち切れんばかりに服の下から主張しているが無視をする。

 それからさっき起きていたことを説明する。俺がミラのことでキレたことについては上手く誤魔化した。


「ということはその女性が竜王で、ソーマさんは竜王に認められて主従の契約を結んだ、ということですか?」

「そういうこと。だからさ、いきなりオーラ発したこいつのこと許してやってくれないか?」

「本当に先ほどは申し訳なかった」

「許すも何も気絶したのは私ですから。ソーマさんこそよく気絶しなかったですね」

「まぁ、なんだ。あの時は怯えてたミラを見て俺が命かけてでも守らなきゃ、って思ってたからな」


 するとミラは顔を真っ赤にして俯いてしまった。慰めるつもりで言ったんだが逆効果だったか?

 

 そんなミラを視界の端に入れながら竜王へと目をやる。


「お前にも竜王じゃなくてちゃんとした名前を付けてやりたいんだがいいか?」

「なんと!我に名前をくれるのか?ありがたい。では我はお主のことをご主人様とでも呼べばいいかの?」

「よせやい。恥ずかしい。普通にソーマでいいよ。そうだな…お前の名前は種族名のエンシェントドラゴンからとって“シェン”でどうだ。安直だがこれしかいい名前が思い浮かばなかった。」

「おお!シェンか。いい名前だな。分かった。これからは我はシェンと名乗らしてもらおう!では、改めてよろしく頼む我がマスター、ソーマ殿」

「お、おう。よろしくなシェン」


 そうして竜王の新しい名前を考えたところで顔を赤くして俯いたまま自分の世界に閉じこもっていたミラがこっちに帰ってきた。


「私の自己紹介をしてませんでしたね。私の名前はミラです。竜王の仲間としては取るに足らない不届き物ですがどうぞよろしくお願いします」

「う、うむ。よろしく頼むミラ。あと我のことは竜王ではなくシェンと気軽に呼んでほしい」


 あのこっちの機嫌を窺うような形でちらちら見ないでもらえます?ミラが頭に?を浮かべてるんですが…。これは話の話題を変えなければ。


「そうだ、さっきシェンにちゃんとした防具をやるっていったけれどシェンはどんなスタイルで戦うの?」

「む?魔王というのは兵士に装備をやるほどやさしいのか?これから本格的な世界征服でもするのかの?」

「いや。俺は一応魔王だけど別に魔王として生きるつもりはないしそもそも世界征服に興味なんてない。防具や武器をやるのはこれから旅に出る上で、きっとシェンにも戦ってもらうからだ」


 俺の仲間になった以上一人だけ戦力外にするつもりはない。それにシェンのことを使い魔だからって下に見るような奴には容赦しないしさせないつもりだ。俺らと同格だということを理解してもらうためでもある。この世界は獣人族とかは奴隷として格下にみられる傾向があるようだからな。


「なるほど。了解した。だが我はこの体で戦ったことがないし、武器も持ったことがないのでしばらくは素手で行こうと思う。それにあたって軽装の防具やグローブなどを支給してもらえると助かるんじゃが」

「分かった。武闘家というところか。ミラ、竜の装備一式出してくれ」

「はい!」

 

 ミラは指輪から竜の鱗を使った軽く動きやすい軽装鎧一式を取り出した。そしてそれをシェンのところに持っていく。


「シェンさん。この装備は装着した対象の体に自動的にフィットする魔法がかけられているのでけっこう付け心地がいいみたいですよ。まぁシェンさんはおそらく基礎ステータスだけで世界トップクラスなので防具をつけなくてもいいとおもいますが」

「ふむ。竜族の長だった者が竜の鱗を使った装備を着るのはどうかと思うが…マスターが選んだ防具じゃ。よろこんで頂こう」


 シェンが防具を装着すると防具は防具の中に着るよう渡した服の上に合うように縮んだ。ちなみに鱗の色はシェンの髪の色ある白に統一させた。俺とミラもこの鎧だが俺は黒、ミラは赤の鎧にしている。


「防具はそれでいいとしてグローブはこれかな?」


 俺はおもむろに指輪から革のグローブを取り出す。そのグローブは見た目は普通だが性能はチート級のグローブである。


「このグローブはなんの素材で作られているかは知らんが伸縮性抜群の上に防御性能も高い。それにやろうと思ったら衝撃波も出せると思う」

「なに!遠距離もいけてしまうのか。まるで夢のようなグローブじゃな。こんな感じか。ふん!」

「ぐふっ!」

「あ…」


 シェンが放った正拳突きから放たれた波○拳のような衝撃波はそのまま真っすぐ進みそこにいた俺の腹部にぶち当たる。


 ドン!という鈍い音と共に俺の体は大きく吹き飛ばされ訓練場の壁に穴を開けて止まった。


「しまった!射線上にマスターがいるのを忘れておった!のうミラ。どうすればいいだろうか!?」


 本気であたふたしているシェンをよそにミラはすぐさま俺が飛ばされた方向へと駆ける。


「ソーマさん!!無事ですか!?…いやだ。そんな…ソーマさん。返事してくださいよぉ!生きてるって言ってくださいよ!私は…私の大切な人を2度も失いたくない」


 ミラは膝から崩れ落ちる。さっきから後ろで「うおおお!」とかシェンが叫んでいた声が止んだ。振り向くとシェンはなぜか気絶している。


 前を向くとそこには無傷の俺が立っているというコントの出来上がりだ。


「ソーマさん!?生きたんですか!?な、なんで今までずっと返事してくれなかったんですか…?」

「それはだな、あいつを叱ってた。すまなかった」


 指さす方向にはぴくぴく痙攣させて気絶しているシェンの姿がある。なぜシェンが途中からあんなに叫んでいたかというとシェンが俺を吹き飛ばしことに焦っていたのではなく、それによって悲しんでしまったミラを見た俺の報復を恐れたからだろう。


 実際、さきほどのとは比べ物にならない程おぞましい殺気をシェンだけに向けて放ってていたのである。殺気だけで竜王を恐怖で気絶させるのだからその殺気の強さは形容しがたいものがある。


 シェンは体をぴくぴくと痙攣させながら泡を吹いて気絶している。ちょっとやりすぎたかと思ったが、漏らしていないだけましだろう。


「おい、シェン起きろ。こんなところで気絶してたら風邪ひくぞ」

「………」


 返事が無い。ただの屍のようだ。と思ったがどうせいじけて無視しているだけだろうと思い脅す。


「…起きないならもう一回あの殺気浴びるか?」

「起きた!起きたからあれだけは勘弁してほしいのじゃ!」


 それはもう竜王の力をフル活用した起き上がりだった。瞬きするかしないかのレベルで直立不動の姿勢をとったのである。やっぱ無視してだけじゃんか。


「…きも」

「ん?今なんか我を侮辱する言葉が聞こえたような…」

「それよりも…なぁ。俺に言う事あるんじゃないの?」

「そうじゃな。いきなり最初に殺気を浴びせるなど…外道な!」

「分かった。よほど気に入ったようだな。嫌というほど浴びせてやろう」

「ああ!すまなかった!ちょっとした悪ふざけじゃ。いきなり衝撃波を飛ばして申し訳なかった」


 これもまた見事に素晴らしい土下座だ。これを竜族が見たらどう思うだろうか?


 とまぁこんな感じでまたまた仲間が増えてしまった。

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