表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/73

第3話 イメージチェンジ!

 鳥の鳴く音が聞こえる。少しずつ朝日が顔を出してきた。こんな朝早くに何をするかというと魔王城にある倉庫の整理である。今日の朝食は、黒パンに干し肉に野菜サラダ。パンとサラダは畑でとれたものを使ってるらしい。というより魔王城に畑があったことが驚きだった。


「ソーマさん、おはようございます!」

「あぁ、おはようさん」

 

 朝からテンション高く挨拶をしているのは、ミラだ。昨日の騒動のおかげで性格が完全無欠な秘書っ子から明るい元気いっぱいな子へとメンタルチェンジしてしまった。俺としては、完全に原因が俺であるため申し訳ないと思っているが、ミラからすれば結構無理して感情を抑えていたから丁度いい機会だった、とのこと。


 そういえば今日は忙しいのに2人で人で足りるかな?と心配しているとミラが質問してきた。


「ソーマさん。今日ってなにするんですか?」

「今日は昨日も言った明日の旅立ちのために倉庫の整理と俺らのイメチェン」


 倉庫の整理とは言っても、倉庫が広すぎるため主に金目の物の回収と武具、アイテムの整理などが主になるが。


「そういえば旅に出てから、しばらくここに戻る予定ないけど何かしていきたい事とかあったら言って」

「分かりました」


 俺らは明日からしばらく旅に出るが、ここに戻る予定は今のところない。なのでここでの思い出が深いミラは今のうちに難しいだろうがここへの未練を断ち切っておかなければならない。


「さてそろそろ作業をしにいくぞー」

「はーい!」


 俺は残っていたパンを口に放り込み、倉庫へと向かった。


 結果から言うと結構収穫があった。


 まずお金。この世界では、すべての通貨が硬貨であり、青銅貨(10)→銅貨(100)→大銅貨(1000)→銀貨(10000)→金貨(10万)→大金貨(100万)→白金貨(1000万)の順で高価になっていき日本円に換算するとだいたい()の中の数字になる。


 魔王城の倉庫には金貨より大きい硬貨しかなかったがそれでもさすが魔王の根城というだけありたくさんの硬貨があったので全部持っていくことにした。


 そして大量の硬貨を持っていくための道具として発見したのが〈収納の指輪(チェストリング)〉である。この指輪は、魔力を込めると空間からしまった物を出し入れできる優れものの指輪だ。(重量制限とかはなくいくらで入るっぽい。)この指輪がいくつか見つかったので俺とミラに1つずつ身に着け、お互いの指輪の中にもどっちかがなくした時用の指輪を何個か入れておく。


 それからは、各々が使いたい武具やアイテムなどを指輪にしまい残りの武具や装飾品などのガラクタを1つの指輪に全部まとめて俺の指輪にしまった。


「よし。整理終わったな。疲れたー」

「確かにアイテムとか探すときは疲れましたね」


 整理開始からざっと6時間は経っていた。元々少しは整理されていたとはいえ体育館並みの大きさの倉庫を2人で整理したのだ。6時間ぐらいで終わるのは早いほうである。


 今はちょうど昼過ぎということもあり昼食を兼ねた休憩をとっているがまだ変身魔法を使ったイメチェンという今日最大のイベントが控えているためそんなに長く休憩してられない。


「でも今日できることは全部やってかないといけないよ?」

「そうですね!もう少し頑張りましょうか」

「あ、そうだ。これから姿変えるけどなんか要望ある?髪型とか色とかスタイルとか」


 これからイメチェンするにあたってミラの要望を聞くことは大切だ。自分の勝手な判断で(何回でも変えられるとはいえ)ミラの機嫌を損ねるような姿にしてしまったら申し訳ない。だからこそこのためだけに自分の思い浮かべた姿を映す鏡を〈クリエイト〉といろんな効果を道具などに付与する特殊魔法〈エンチャント〉を使って作ったほどだ。


「そうですね―、髪型は今のソーマさんと同じくらいのロングで色は私の大好きな赤でお願いします。スタイルは…まぁ胸が大きすぎなければ任せます」


 ふむふむ。赤ロングでスタイルはお任せと。俺は前の世界の姿になるつもりだからなるべく同年代の姿の方がいいかな?聞いてみよ。


「あのさ。俺は前世って言ったほうがいいか、の姿になろうと思うんだけどさ、ミラはそれと同じくらいの年代の姿でいい?」

「別に構いませんけど…ソーマさんは前の世界ではおいくつだったんですか?」

「あー…15」

「15!?その状況対応力で15?若すぎませんか?」


 対応力はラノベの読みすぎなんて言えないから適当にごまかす。だが許可をもらえたので姿を思い浮かべて鏡に映す。


 そこには(ミラは二刀流戦士スタイルが得意だと言っていたので)身長160cmぐらいのスレンダーな体にCぐらいの俺からすればそこそこ立派な胸、そして人目を惹きすぎない程度に整った美しい顔に、肩甲骨あたりまで伸びた真紅の髪を持つ女性の姿が映っていた。


「こんな感じでどう?」

「いいじゃないですか!すごくかわいいです!こんなに美しい女性になれるなんて…感動です」


 うん。気に入ってもらえたようだ。これで俺らは友達か幼馴染か恋人のように見られるだろう。最後のようには見られてほしくないが。


 ここでは魔法を使いにくいので訓練場跡地へ移動する。この訓練場跡地は半径30メートルほどのコロッセオのような円形になっている。ここで護衛隊の訓練をしていたらしい。


「これから魔法をかけるけど途中でなんかあったら言ってくれ」

「分かりました。魔法の成功を祈っています」


 早速先ほど鏡に映した姿を思い浮かべて魔法を発動させる。するとミラの周りに黒い霧が発生してミラが隠れた。


 それから1分ほどして霧が晴れるとそこには想像した姿をしたミラが倒れていた。


「ミラ!おいミラ!大丈夫か!?しっかりしろ!」


 すぐさまミラのもとへと駆け寄る。失敗したのだろうか?心配しているとミラがゆっくりと目を覚ます。


「ミラ!大丈夫か?」

「う…うん?ソーマさん。どうしたんですか?えっと、確か私は黒い霧に包まれて…その後…あ!魔法はどうなりました!?」

「姿は変わっているからおそらく成功だろうが…何か異変はないか?」


 ミラは手を動かしたり立ち上がり動き回ったりしている。問題はなさそうだ。


「なにか変わったことはあったか?」

「うーん。少し視点が低くなったのと胸が軽くなりました!」


 そんなに嬉しそうに言わなくてもいいんじゃないだろうか?別に大きくても困ることは少ないだろうに…。


 俺自身にも魔法をかける。思い浮かべたのは前世での俺の姿。この世界に反映されないんじゃないか、と思っているうちにミラにかけたとき同様黒い霧が俺にまとわりついてくる。ミラが俺の名前を叫んでいたが返事をする前に意識が薄れていった。


「…さん!ソーマさん!しっかりしてください!」

「…ああ。ミラか?」


 俺を呼ぶミラの声で目が覚めた。どうやらこの魔法を使う対象の周りに切りを発生させてそこで意識を失っているうちに骨格やら色々変える魔法らしい。副作用が無いと分かっていても恐ろしいな。


「よかった。いきなり黒い霧が現れてソーマさんを包んだかと思ったら、そのあと霧が晴れて姿が変わったソーマさんが出てきてビックリしたんですよー!」


 今にも泣きだしそうな顔で説明してくれた。実際目の端には涙が浮かんでいたが…。


 俺は〈クリエイト〉で作った先ほどの鏡を指輪から取り出す。鏡には姿が変わったミラと身長175cmぐらい、体格はバスケをやっていたためそこそこ筋肉がついているおり、髪はバスケを止めてから短くしていないため少し伸びていた。顔はカッコよくもなく不細工でもないが前世ではあまり好評ではなく変えてしまおうかと思ったが親からもらった顔なのでやめておいた。…身長は盛った。


「俺の姿どうおもう?」

「…ふぇ!?か、かっこいいです!」


 顔を赤くしているところを見ると見惚れているのかと思ったがそんな都合のいい解釈はやめよう。後ろから小声で「あんなにかっこよくてやさしいなら彼氏になってくれないかな…」とか聞こえたが聞こえない振りをする。


「姿も変えたし日も落ちてきたし今日やることは終わりかな?」

「そうですね。明日も準備も大体終わりましたし……ってああ!!!」


 いきなりミラが悲鳴をあげた。


「どうした!何か忘れたのか?」

「ソーマさん。使い魔…持ってます?」

「使い魔?ペットみたいなもんか?持ってないが。」

「やっぱりー!私としたことがすっかり忘れてたぁーー!」

「なんだ?この世界では使い魔を持つのが一般的なのか?」


 そうだとしたらおもしろそうだな。どんな使い魔がいるだろうか。犬型とか猫型とかいるかな?異世界だからトカゲみたいなのもいるかもしれないな!とそんな妄想を広げているとミラがバツの悪そうな顔で話しかけてきた。


「えっとー…使い魔っていうのはですね。魔王が代々従えてきた魔獣のことで〈召喚魔法〉の一種です。魔王によって従えられる魔獣は違いますが…前魔王はフェニックスでした」

「じゃあ魔王しか使い魔は持てないの?」

「はい。一時的に魔獣を召喚する魔法はありますが、死ぬまで契約したままでいられるのは魔王の持つ使い魔だけです」


 ほう。つまりはペットだな。だがフェニックスということは相当強いんだろうな。俺も一応魔王らしいし使い魔を持てるのかな?どんなのを持てるんだろ。というかどうやって召喚するんだ?


「使い魔ってどうやって召喚するの?」

「確か魔王の血を使って魔法陣を描いてそれに魔力を流せばいいはずです」

「よし、やってみよう」


 訓練場にミラが教えてくれた半径15mほど魔法陣を描く。魔法陣が大きければ大きい程、魔力は必要だがいい魔獣が出て来るらしいので無限にある魔力をたくさん流し込む。


 どれぐらい流しただろうか。5分ぐらい過ぎただろうか…光っていた魔法陣にそろそろ変化が無くなってきたので最後に一気に魔力を込めてやめた。すると魔法陣が閃光を放ちその閃光が膨れ上がる。


(我を呼んだのは貴様か)


 閃光が消えた魔法陣に現れたのはどこからどうみても紛れもない竜だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ