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第2話 ミラの過去

「…冗談ですよね?」


 疑うような目でこちらをみているが,ここで目を逸らしてはいけないと思いさらに真剣な表情を造り首を横に振る。すると真剣さが伝わったのか何か諦めたような感じで尋ねてきた。


「証拠とかはありますか?」


 俺もまじめに答える。


「うーん。証拠って言われると物では出せないけど強いて言うなら俺の記憶かな」

「記憶?」

「うん。じゃあ向こうの世界での俺について話すよ。俺の名前は蒼真。向こうの世界では、勉強を学ぶ側の職業についてた。で、ある日勉強を習うところを学校って言うんだけど、学校へ行く途中誰かに殺されて気が付いたらここにいたってわけ。というわけで俺のことはそうだなぁ…ここは中世の時代っぽいし“ソーマ”って呼んで。信じてもらえるだけの証拠になるかな?」

「なるほど。完全には信じきれませんが、状況は呑み込めました」


 まだ疑っているような目に見えなくもないが当然だろう。俺だって親にいきなり「実は異世界から来た。黙っててごめんね。」なんて言われたら頭の無事を疑うし、すぐさま精神科へ直行するだろう。だが彼女は、まだ完全には信じていないものの、状況を把握したのだ。恐ろしいほど頭の回転が速い。


「信じてくれるの?」

「完全にとは言い切れませんがある程度は。それにあなたが前魔王ではないというのはなんとなく想像がついていました」

「なんで?」

「私には生まれつき、人のオーラを見ることができる魔眼の一種があるのですがそれを使っても原因は分かりませんがソーマさんのオーラが見えないんです」

「オーラが…みえない?オーラってなんぞや?」

「オーラというのはこの世界における精神を表した霧のようなものです。人によって様々ですが、善人ほど白に近く、悪人ほど黒に近く映ります。黒>灰色>白の順で悪いものが多く、オーラの色は一生変わらないのですが、大体の人は灰色で生まれます。そしてそれらの精神が強ければ強いほどオーラは濃くそして大きく映ります」


 俺はオーラの色が変わらないなら犯罪者とか減るんじゃないか?と思ったが彼女曰くオーラの魔眼を持つものが少ないのと、オーラを見るのに魔力が必要なためたくさんの人はみれないんだとか。残念。


「で、そのオーラがおれにはないから前魔王とは違う人だと何となくわかったってわけか」

「そうです。ですが本来あるはずのオーラがない人など聞いたことがないのですが…」


 ≪彼女はソーマのオーラが「ない」といっているが正しくは見えないのである。その理由は2つ。

 1つ目は、オーラの色にある。ソーマのオーラは異世界人だからかは定かではないが、感情の変化によってオーラの色がころころ変わるのである。怒っているときは赤、落ち込んでいるときは青など、様々な色のバリエーションがある。

 2つ目はオーラの量。ソーマの精神力は化け物レベルに強く大きいため、その人のオーラの量で使う魔力が決まる魔眼では一瞬にして魔力が枯渇してしまうため魔眼が自動的にブレーキをかけているのである。

この2つの特徴が合わさり、いつもはオーラを体の内に引っ込め、そして大きな感情の起伏があったときにその時の感情の色をしたオーラが解放されるというまさに異質と呼べる体質をソーマは持っていた。ソーマは、まだそんなこと知りもしないが。≫


「分かった。俺がみんなと違うのは残念だけど異世界から来た所為にしておこう。それでそろそろ話を戻して説明を再開したいんだけど…」

「分かりました。では、魔王についてから話しましょうか」

「お願いします」

「はい。えー本来魔王は、世界を滅ぼすために生まれてきた魔族です。前魔王は、99代目でソーマさんが丁度100代目になるということになりますね。そしてそんな魔王を打ち倒すために勇者が生まれました。そして勇者は時間をかけて仲間を増やし、力をつけここ魔王城へ攻め込むのです。それが丁度1年前に起きました。

 前魔王は歴代稀に見るやさしい魔王でした。強大な力を持っていながらその力に溺れることなく強大な軍勢をそろえることもなく、私たち魔王軍幹部数名と前魔王のその前の魔王時代からの護衛隊100名余りでこの城でまったり暮らしていたのです。ですが…あの勇者が…私たちのことを何も知らない勇者が!いままでの固定観念に囚われ、この城へ攻めてきたのです!!……失礼。少し取り乱してしまいました。…で、その当時私は別の街に食料などの資源を調達していました。

 そしてほかの幹部の能力で勇者の軍勢と戦っていると知らされた私はすぐさま魔王城へ戻りました。前魔王は元々争うことが嫌いで私が戻ってくるまでの間も勇者に戦わないことと、自分たちに戦闘の意思がないことを伝えたようですが…勇者は問答無用で無抵抗な親衛隊の一人を殺害し、強制的に前魔王と戦ったそうです。私が知らされてから戻ってくるまで2日もかからなかったですが、ようやく戻ってきたときには遅く、城は半壊し、魔王軍も幹部を含め全滅。勇者軍も勇者含め全滅していて前魔王は生きていましたが、その時には前魔王はすでに意識はなく、全身にひどい傷を負っていました。私も混乱していてそれからの記憶はありませんでした。それから私は、意識不明になっている前魔王の看病や再び襲われないように魔王城の防衛などを1年ずっとしていました。そして先ほど叫び声が聞こえて慌てて駆け付けたというのが現状です」


 彼女は途中怒ったり、最後は涙を流してまで出来事や自分の胸の内を語ってくれた。


 そっか。辛かったんだろうな。彼女にはとてもその一言で簡単に片づけられるような問題じゃないだろうけど俺にはそれしかかけてあげられる言葉がないな。それにしても俺で100代目ってきりがいいな。


 やっぱ勇者いるじゃん!しかも魔王サイドで話聞くと意外と残酷。しかも先代?になるのかな。温厚でなんも危害加えてないんでしょ。勇者と魔王の関係は難しいものがあるねぇ。前魔王は死んだのかな?今のところ俺の死んだ時期と前魔王の死んだ時期が丁度重なって世界の壁を越えて魔王の体に俺の魂が乗り移ったみたいな感じか。これからどうするかな。俺もできることなら温厚に旅がしたかったけどなこの姿で聖大陸とか行くと普通に斬られそう。よし!まずは1年前の戦争での俺の扱いと魔法やら魔王の力を使いこなせるかテストだな。


「あのさ…(すいませ…)」

「あ……」


 大きな部屋に2人の声がこだまする。そしてそのまま黙ってしまった。お互いしばらく黙っていたが最初に口を開いたのは彼女だった。


「…お先にどうぞ」

「そうか?じゃあお言葉に甘えて。えっと1年前の戦争で前魔王はどうなったことになってる?」


 これ1つでこれからの異世界生活に大きな支障が出る。


「勇者と相打ちで死んだことになっています」


 返ってきたのは1番最悪な答えだった。


「…まじか。このままの姿で旅にでたら絶対ダメじゃん。どうするかな」

「確か魔王の固有魔法で姿を変える魔法があります」


 そして返ってくる救いの言葉。


「あ、本当?なんて都合がいいんだ。でも俺魔法の適性ないかもしれん。現にオーラ見えなかったみたいだし。どっか魔法使ってもいいような場所ある?」

「そうですね。魔法適性がない可能性はありますね。魔法を使うんでしたら訓練場跡地がよろしいかと」

「わかった。行ってみよう」


 結果から言うと、全属性魔法および魔王の持つ固有魔法は全部使えた。身体能力は、前魔王のざっと2倍近くあるらしい。さらに魔力も無限みたいだ。普通魔法を使うと魔力が抜けるのが分かるらしいんだけど俺にはそれが無いというか、あるけど魔力が抜けたとたんに新しく魔力が補充されるから魔力切れを起こさないっぽい。とどめを刺すとするなら魔力が強すぎて10cmていどの大きさにしかならないはずの〈火球〉が最大1mくらいになったりとにかく全魔法の効果、及び威力が桁外れだとか…。まさにチーターですね。ありがとうございます。


 あと魔王の固有魔法に生成魔法〈クリエイト〉っていうのがあって、自分の作りたいものが生み出せるんだってさ。あとでいろいろ作ってみよう。


 そんなチート能力を手にしたが無事変身魔法が使えて安堵していると彼女が話しかけてきた。めずらしくオドオドしている。どうしたんだろ?


「すいません。さっき言いたかったんですが被ってしまって、言えなかったんですが魔法も使えることが分かりましたし今お願いしますね」

「ん?お願い?俺が出来ることならなんでも言っていいよ」

「ありがとうございます。ソーマさんはこれから旅に出るんですよね」

「予定ではそうだね。それがどしたの?」

「えっと非常に差し出がましいのですが…私にも変身魔法で姿を変えてもらって旅に同行させていただけないでしょうか」


 土下座しながら頼んできた。そんなに必死にならなくてもいいのに。そんなの答えは決まってるじゃん。


「…いやだ」

「え……そんな…」


 いやそんな目の端に涙浮かべなくても…あと最後まで話聞けよ。


「まだ話終わってないのにそんな絶望感出さないでもらえます?俺がダメって言ったのは、あなたが旅に同行するときっと手下みたいな感じになりそうだからで…」


 「それのなにがいけないんです?」みたいな顔をしてこっち見られても困るんだが。


「まぁ…その…なんだ。仲間として同行してくれるなら大歓迎って言おうとしたんだけど…どうかな?」

「…そうだったんですか?」

「うん」


 その瞬間彼女を抑えていた感情の防波堤が壊れたようだ。


「うわぁああああ―――――!!ごわがっだよ――――!!」

「ぐえぇ!」


 とんでもないスピードで俺に抱き着いてきた。不意を突かれて反応できなかった俺は、そのまま倒れてしまい抱き着かれたというよりホールドの形に近い感じになった。そして胸の感触を味わう暇もなくとんでもない怪力で締め付ける。俺の腕が悲鳴をあげている。


「いてててて!痛いって!!ちょっと緩めろ!!」


 そういうと緩めてくれたけど確実に骨逝った。あとで回復しとこう。


「うう…びっぐりじだよー!…ぐすん。見捨てられるかとおもったよー!」

「勘違いさせるような言い方でごめんな?」


 そんな感じで30分ぐらい慰めていると、落ち着いてきたようで今度は自分が何をしていたのか気づいたようで「はっ!」と離れて耳まで真っ赤にして俯いている。


 これが彼女の本性って感じか。なんていうか…どじっ子といいますか、天然といいますか。とりあえず幼い感じでかわいいな!


「そういえばさ、ずっと聞いてなかったけど名前なんていうの?」

「ミ、ミラです」

「ミラか…かわいい名前してるじゃんか!」

「かかか、かわいい!?」


 さらに顔を真っ赤にしてもじもじしている。素で言ったのだが完全に逆効果だったか。


「うん。そんな感じのミラのほうが好きだな。ミラはね完全無欠の秘書っ子よりも本性の元気いっぱいっ子の方が似合うよ」

「そ、そうですか」


 俺は手を出す。握手したいんだがこっちにそんな文化はないんだろうか?よくわからそうな顔をしているので勘違い覚悟で手を取り、握手をさせる。想像どおり「ちょ、ソーマさん強引ですよ!ま、まだ心の準備が…」などとほざいてるが無視をする。


「これは、握手って言って挨拶みたいなもんだ。ということでこれからよろしくミラ!」

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。ソーマさん」


 見た目は完全にエロい美女なんだがギャップがすごいな。


 異世界転移初日にして、俺に仲間が出来ました。


途中で出てきた≪≫はですね、天の声の説明です!…多分…メイビー…。

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