力尽きる少女
もうだめ……。
疲れ果てた私はその場にしゃがみこんだ。
もうここで構わない。
震える手でかごからマッチを一本取り出すと私のことを思って壁に擦りつける。
でも――
「え?」
口から漏れる声。
マッチは全く火を灯さなかった。
「どうして?」
またマッチを一本取り出して壁に擦りつける。
やっぱり火は灯らない。
何度試しても結果は同じ。マッチは火を灯さない。
「もしかして、他の人の願い事に使ってしまったから……?」
私が叶えられる願い事は終わってしまったの?
でも、まだ、4つめが残っているはず。
最後の希望を込めてマッチを一束、壁に擦りつける。
でも、やはり火が灯ることはなかった。
絶望に襲われ、そのまま倒れこむ。
目をつぶると次から次へと涙がこぼれてきて、雪に染み込んでいく。
勢いよく燃えるあたたかなストーブ。おいしそうなごちそう。たくさんのろうそくが輝く大きなクリスマスツリー。全てもう叶わない。大好きなおばあちゃんと天国にのぼることも出来ない。
私はバカなことをしたのかな。せっかくの魔法を自分ではなく他の人の願い事に使ってしまって。
それでも。
覚えていてくれればいいな。
私のこと。ひと時の夢を叶えた思い出のすみっこで良いから。私のこと、覚えていてくれればいいな。
明日の朝、ここで冷たくなった私を見下ろす中に1人でもいい。ただの貧しい少女としてではなく、私だから悲しんでくれる人がいますように。
そこで私の意識は途絶えていった。