表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/69

昔語り


 改めて、僕はメルティウス=ダンジェス。

 ダンジェスという男爵家の長男として産まれました。

 ダンジェス家は男爵と爵位の中では一番下ですが、とてもとても古い由緒ある家柄です。

 大昔、建国期において王のそばで右腕として活躍した魔法使いの英雄からはじまった家でそのころは一番上の公爵でした。

 しかし、建国して数百年、代を重ねるごとに零落していき、今では貧乏男爵という名ばかりの貴族として有名となってしまいました。

 貧乏でも、魔力はあるからいつか立身出世ができるのではと代々研鑽を重ねてきましたがどういうわけか一族皆、何かの呪いかと思われるくらい、魔法の素質は必ずあるがそれはわずかでしかありませんでした。

 

 建国の功労者として国から年金がかなりの額きますが、ただその禄喰むだけで何も生み出さないと他の魔法貴族たちからは見下されています。

 先祖の七光り、家柄を貶める一族。落ちこぼれの魔法使いの群れ。

 僕はそういう声を聞きながら育ちました。


 祖父母は温厚以外には特に何も特筆すべき点のない人で、父は周りの目があるからか周囲に無為にぺこぺことしている人でした。

 母は正妻と妾が一人ずついたのですがどちらが産みの親なのか実は知りません。


 どっちも自分の子ではないとあからさまにいうからです。


 というのも正妻は子爵家とはいえ魔力量の高いところからなんとか結納にいろをつけたりして得たところで、妾としている人も魔力があるから一代限りの士爵位という貴族になりと、そこからどうしてもと無理に引っ張ってきた人でした。


 士爵ならむしろもっと良縁があっただろうにどうしてだかこの家に嫁いできました。


 で、どちらも自分の子ではないというのはどういうわけか同じ日の同じ時に二人の母は子を産み、片方は死に、もう片方は生き残ったのですが、どうやらもう片方の方は魔力が異常に高いためになくなったというのです。

 そのため、英雄の隔世遺伝の可能性があるのではと父親もそうですが、死した子の母親にもその権利が国より与えられ、その亡骸は国の守護として称えられるともっていかれたというのです。


 亡骸を失って悲しむかといえばその逆で、むしろ死んで国に奉仕できると喜ぶのですが問題はどちらの母が死んだほうの母であるかということです。



 どちらの子も男の子であり、この際に、補助していたのは経験は豊富でも耄碌してきた老婆の産婆のみ、そして、二人同時にとりあげたあと、この産婆、どっちがどっちの子かわからなくなったからです。


 何をばかなと思うけども、事実、どちらも似た面差しで、はて右に置いたのがどの子か、左においたのがどの子か、わからなくなったのです。

 そうこうしているうちに、片方の子は産んだその翌日に死んでしまい、産婆はあまりのことに責任を感じたのか、その日の夜にショックで死んでしまったのです。

 わかるのは結局その耄碌した方の産婆のみだったので、さらに、そののち、誰が僕の母かわからないという結果をうみました。


 人の欲はひどいと幼い時分で達観しました。


 けど、僕はこうも思ったんです。

 


 自分が大成すれば、ひょっとしたら本当の母が名乗り出るのではないのかと。



 だから、落ちこぼれのとなんのと言われてもここを卒業できるだけの力量を示せば、きっと母は振り向いてくれる。


 そう思って、僕はがんばってるんだ。



 まさかここまでひどいというのはあまり考えなかったけど。


 でも、いつかは、きっと見方を変えてくれる。

 そう信じて、がんばるって、僕は決めてるから・・・・




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ