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星の下の個室の中で


 ぱちり。

 目を開ける。

 いつの間にか丸まって柔らかな毛布の上にわしはいた。

 

 「いにゅ」


 丸まっていた体を伸ばし、動作確認・・・・ってロボかわしは。

 まぁ、ともかく、なんとなく体の調子は未だだるいが動けないほどでもない。

 んー、なんだろ?と思い、軽い気持ちでウィンドウを開けて見やれば


 名前:サン

 職業:使い魔 種族:猫  

 ランク1 猫


 ステータス

 

 筋力 1 

 敏捷 3(-2)

 生命 1

 魔力 7(-6)

 知力 5

 精神 1

 器用 2(-1)


 スキル

 猫魔術(Lv.3)地魔術(Lv.2)水魔術(Lv.2)火魔術(Lv.1)風魔術(Lv.1)光魔術(Lv.1)闇魔術(Lv.1)聖魔術(Lv.1)邪魔術(Lv.1)無魔術(Lv.1)


 敏捷と魔力の値が増えてるけど減ってる。


 どういうことじゃ?

 なんとなく現象としてはデスペナルティに似ているが、それでも敏捷と魔力の基本値が上がっているのが不思議である。

 死んでいないからか?

 まぁ、これはそもそも死んでしまったらこの世界のわし、おそらく一巻の終わりと思う。


 あと、地味に魔術レベルがあがっておった。


 演習場では動き回っていたからピコンという音には気がつかなかった。

 考えてみればあの音、けっこう小さいし、聞こえにくいのかもな



 さて、考えてもしょうがない。

 動くか。


 そう思い、ひょこりと動こうとしたら


 「サン!良かった、無事目が覚めたんだね」

 ほっとしたメルの声が聞こえた。

 手には服と糸のついた針を持っていた。

 何やら繕いものをしているようじゃが・・・・


 って、その服、制服じゃが、ところどころ焼け焦げている。

 もしやしてこれは


 「あ、もしかして、これのこと?」


 と儂の視線に気がついたのか手に持った制服を軽くあげた。


 「ちょっと穴があいちゃったからつくろっているところなんだ。これでも裁縫のうではそこそこあるからね」


 にこりと笑ってその焼けて穴のあいた服の繕いを再開した。

 その穴、さっきの演習場で儂をかばったときのやつじゃろ。

 

 というかそれ以外に考えようがない。


 メルのところにすりより前足をひざにかけた。

 

 「にゃ」

 「ん?もしかして、心配してくれたの?ん、ありがと。でも平気だよ、このくらい」

 そういって、また苦笑い。

 ほんとうによく浮かべる苦笑いをわしに見せた。

 

 「にゅ」

 なんか尻尾が垂れて儂、しょんぼりしてしまう。


 「あ、いや、別にほんとに平気だから。だいじょうぶだから、うん」


 一度言葉を切り、儂の両脇を抱えて軽くぎゅっと抱きしめた。

 「でも、だめだよ、危ないことしちゃ。使い魔の召喚は一生に一度。魔法使い限定。サンを失えば、僕には何も残らなくなっちゃうから」

 そういって、抱きしめる力を強める。


 ちょ、おい、かなりきつい。今、儂、筋力もないない状態じゃし、デスペナ状態じゃから優しく。

 言葉が通じないから軽くばたばたとしていたらメルも気がついて力をゆるめた。


 「あ、ごめん」

 

 そういって、太ももの上に載せ、背を優しく撫でた。

 「ふふ、かわいいな。使い魔云々なんてハズレもなにもないものだろうに」

 ふと、小窓のそとをメルは見上げわしも一緒にいた。

 小さい窓の外には夜空が広がり、星ぼしが垣間見えた。


 いつの間にかけっこう遅めの時間なんじゃろうな。


 

 にしても、なんというかふつふつとこうしているとこみ上げてくるものがある。

 この部屋は現在は個室状態じゃが、傷ついた少年がひとり、猫と一緒に薄汚れた部屋の中にいる。

 

 メルはまぁ、確かに、成績は悪いと周りからは言われているが、授業に対してはひたむきだし、努力もしている。

 それをなぜにここまでせせら笑われなければならないのか、理解に苦しむわ。



 「・・・・・」


 メルはしばらく黙って外を見上げ続けた。

 わしはそんな様子をじっと見て、ふと、瓶ぞこメガネの向こうの瞳を横顔から垣間見た。

 意志の強そうな綺麗な瞳じゃった。その瞳には涙が滲んでいるように見えた。


 「にゅー」


 つい、心配げに鳴いてしまう。

 

 「ん・・・あ、ごめん」


 なんか、謝ってばかりじゃな。

 意志の強そうな瞳をもっていながら・・・・いや、そういえばふと思うんじゃが、この子、瓶底眼鏡で瞳が見えないからけっこう損をしているが容貌はけっこういいんじゃないのか?

 そばかすの浮いた顔をしているが、そんなのとしが経てば消えていくものじゃろうし、現にうっすらな感じがする。


 

 磨けば光るタイプではないのか?



 そう考える儂をよそに、じっと儂を見つめていたメルがほぅとためいきをついた。


 「君は使い魔。僕の家族」

 そうぼそりとつぶやくと、何かを決意したような顔でメルは儂をぎゅっと抱き寄せた。


 「これからいうのはもしかしたら君にはよくわからない話かもしれないけど、聞いてくれないかい」


 メルはぽつりぽつりとひとり、儂に対して、まるで何かを洗い流すように自分のことを話し始めた。




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