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プロローグ

 

「リヒト、君にお客様だよ。」

「……はぁ?」

 兄にそう言われ、リヒトは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

「兄さん、そういうのは勤務時間外に……」

「白いワンピースの可愛い女の子。知らない?」

 白いワンピースの可愛い女の子……?誰だソイツは。

「おっかしいなぁ……。駐屯地の門前でうろうろしてたから声をかけたらリヒト・シュテルン少尉はいらっしゃいませんか、って。心当たりない?」

 全くもって心当たりがない。

 リヒトは、もしや悪戯好きな兄、ヴィルヘルムの妄言なのでは……と、勘繰る。しかし、軍服を身に纏い“お仕事モード”のヴィルヘルムの目を見れば妄言などでは無いとわかった。では、ヴィルヘルムの悪戯でないとしたらリヒトを名指しで訪ねてきた女の子とは一体何者なのだろうか。

「まぁいいや。とりあえず女の子の所に案内するね。何か思い出すかも知れないし。」

 そう言われて「第二会議室」と書かれた部屋に案内される。

「お待たせ、アウレリアちゃん。リヒトを連れてきたよ。」

 アウレリア、それが俺を訪ねてきた女の子の名前なのだろうか。なんて考えていると兄に部屋に入るよう促された。目で合図され会議室の中に入ると、事前に言われていた通り白いワンピースを着た女の子がちょこんと座っていた。

 いや、言われた通りの女の子というのは少し語弊があるか。実際、女の子と言うには少し大人びていた。少女、と形容した方がいいのかもしれない。年齢は14,5歳だろうか。なんと言っても目を引くのは胸元まである真っ白な髪だ。

「あの……」

「あぁっ、はい!?」

 少女に声を掛けられリヒトは我に返る。しかし、海のように蒼い瞳にじっと見つめられると、今にも吸い込まれそうでリヒトは身動きがとれなくなっていた。

「あの、貴方がリヒト・シュテルンさん……ですか?」

「そう、ですけど……?」

 少女の質問に答えると、少女は今までの張り詰めていた表情が少し緩み小さな笑顔を見せた。

「よかった……これ……。」

 そう言って少女は封筒を差し出した。ずっと握りしめていたのだろうか。しわくちゃになったソレの封を切ると、中には便箋が一枚入れられていた。便箋を開くと、


 ディートリヒ・ズィーボルト、フランツ・ブリッツらと共にアウレリアを無事に俺の居るベルリンまで送り届けて欲しい。

 まぁ、要はアウレリアをベルリンまで護衛して欲しい。

 よろしく頼む。


 ロルフ・フォン・ザイドリッツ


「ロルフ・フォン・ザイドリッツ……この名前、どこかで……?」

 差出人の名前を反芻しているとヴィルヘルムが驚いた様子で声を上げた。

「え、ザイドリッツ隊長しらないとか嘘でしょ?」

「ザイドリッツ、隊長?どこの?」

「あぁ、もう!俺達が所属している大隊の隊長だよ!」

「あぁ……大隊長の名前ってそんなんだっけか……。」

 それにしても、何故大隊長サマの様なお偉いさんがこの少女____アウレリアの護衛を俺に名指しで頼むのだろうか。そもそもこの駐屯地はベルリンから離れているとはいえ、国内を移動するのに護衛が必要なアウレリアとは一体……。

 疑問は尽きないが、大隊長サマの命令とあらば軍人であるリヒトが従わない理由は無い。そうと決まればいち早くこの手紙に書かれた“お仲間”を探し出さなくてはならない。幸い、この二つの名前には心当たりがある。

「兄さん、ディートリヒとフランツの所属って調べられる?」

「調べるも何も……彼らは俺が士官学校の教師をしていた頃の元教え子だからね。すぐに分かるよ。連絡すればすぐに来てくれると思うけど?」

「士官学校の教師してたなんて初耳なんだけど……。まぁ、今はいいや。連絡してもらえると助かる。」

「りょーかーい。」

 間延びした返事でヴィルヘルムは会議室を後にした。


「おまたせー。ディートリヒとフランツを連れてきたよー。」

 ヴィルヘルムが会議室を後にしてから凡そ十分程だろうか。ヴィルヘルムはげんなりした顔の青年と、溌剌とした笑顔の青年を引き連れて登場した。

「久々に下山できたって言うのに……。大隊長か何か知りませんけど、何なんですか……。」

 山岳猟兵隊所属のげんなりした青年、ディートリヒが苦言を呈す。

「なんで?面白そうじゃん。あっ、リヒトだ。久しぶり〜」

 工作兵部隊所属溌剌とした笑顔の青年、フランツは如何にも楽しそうだ。

「あの……なんでこの面子が集められたのか僕聞いてないんですけど。」

「アレでしょ?お姫様の護衛、的な?」

 フランツの説明は間違っているようで、案外的を射ていた。

「まぁ、なんだ。この娘……アウレリア、ちゃん?をベルリンまで送り届ければいい……らしい。」

 アウレリアの肩を軽く叩くと、アウレリアは申し訳なさそうに肩を竦めた。

「そういう訳だから、皆頑張ってね。」

「あれ、ヴィルヘルム教官は行かないんスか?」

「うん、行かないよ?手紙に俺の名前は書かれてなかったし。俺は中隊長の仕事で忙しい。」

「僕だって暇じゃないんですけど……。」

「そりゃあ、俺だってそうだ。大隊長サマがなんで俺達を名指しでアウレリアの護衛に充てたのか知らんが……ここは従うしかない、だろ?」

「それはそうですけど……。」

 ディートリヒはリヒトの意見に同意しつつも、己の部隊を放ってまでアウレリアの護衛をしなければならない事に納得出来ない様子だ。暫く何かブツブツと唱えていたが、何かを諦めたようで「……わかりましたよ。」と吐き捨てるように呟いた。


 斯くして、「アウレリア護衛任務」は開始された。


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