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英雄は静かに暮らしたい  作者: 雅樹
アリオクレイア編
9/20

5/11、訂正しました。


飄舞目線です


 

 

「……これはこれは、メラジーンの騎士団団長殿。お久し振りですが…控え室にお集まりになる時間ですのにこんなところにいてよろしいのですか?」



 笑みを浮かべながら相手に恭しく頭を下げる義兄。

 それに合わせて飄舞も慌てて頭を下げる。


 何やら隣の義兄の言葉に嫌みのようなものが含まれているような気がした飄舞は頭を下げながらチラリと義兄を見た。

 目が笑っていなかった、…怖い。



「頭上げていいって。それより情報屋、なんか今日冷たくね?久しぶりに会ったのにそんな態度とるなよ。」



 頭をあげさせながらそう言う龍族の男は馴れ馴れしく義兄に絡む。

 なんだこの人と思いながらも相手が他国の騎士団団長という手前、飄舞はどうすることもできず見ていることしかできない。



「…暑苦しいので引っ付かないでいただけますか?」


「いっ…!?」


「!?」



 気持ちのいい音をたてて真顔になった義兄が男の頭を叩いた。

 その光景に飄舞は言葉を失い、顔を青くする。

 しかし、叩かれた本人はいたがりながらも怒っている様子はなかった。



「酷い…泣くぞ!?」


「泣けばいいんじゃないですか?」


「慰めろよ!!」


「嫌です。」


「あ、義兄様…?」



 目の前の光景が信じられずそっと義兄の袖を引く。



「あぁ、ごめんね放っておいてしまって。さぁ、会場に向かいながら話の続きをしようか。」



 いつもの笑みをまた浮かべ、飄舞の手を握って歩き出す。

 まるで今までいたのは幻だったように男を完全に無視して。



「良いんですか…あの方?」



 チラリと後ろを見れば男はずーんと落ち込んだように肩を落としている。

 とても偉い人には見えない。



「はぁ…、ソウリュー殿、貴方も会場に行くならご一緒に行きま…。』


「行く。」



 一言そう言えば側にすぐさまやって来て飄舞とは反対側、義兄の隣に並んで歩く。

 飄舞は何やら龍族なのに彼に犬の耳と尻尾が見えた気がしてならない。



「別に貴方に言わなくてもいいんですが、一応紹介しておきます。私の義弟の飄舞です。」


「は、はじめまして。」


「へー、お前が飄舞か。俺はメラジーンの近衛騎士団団長をしてるソウリューだ。こいつの恋び…。」


「嘘は教えないでください。」



 恋人と言おうとしていたのかそう言いつつ義兄に抱きつこうとしたところで強烈な肘の一撃がソウリューの鳩尾に入るのが見えた。

 呻き声をあげ、涙目になるが鍛えているためか膝をつくことはなく普通に横を歩いているのはすごいと思った。

 そして、義兄のいつもとは違った様子に飄舞は何故か胸の辺りがもやっとする。



「……悪いですが義兄様は僕のです。だから貴方のじゃありませんから。」



 義兄の腕に抱きつきながら相手を見上げ、睨むように宣言すると義兄は驚いた顔をし、ソウリューはへぇと言いながらにやりと笑う。



「…喧嘩するならおいていきますよ?」



 呆れたような表情で見ながらそう言うと慌てつつも素直に身を引いた。

 相手も同様に。



「先程、ソウリュー殿が言ったように英雄殿はこの国で幼少期を過ごしました。神殿で住むにはいろいろと面倒なことが多かったようで…。」


「なんてったって異界の巫女様とこの世界の創造主の間に生まれた子だ。何処の国も自分のところに取り込もうと考えるだろうなぁ。その分、このアリオクレイアはそういうのが一切ない珍しい国でさ。それにその時の女王が異界の巫女様の友人ってのもあったから。」



 急に話に入ってきたソウリューにまたムッとする飄舞だが、義兄に怒られるのは嫌なためあえてなにも言わない。



「大変だったんですね。」


「…まあ、生まれが生まれですしね。まあ、そのために消えた英雄殿がもし現れるんだとしたらこの国が一番可能性が高いんですよ。だから、各国の代表が集まるんです。」


「そうそう。しかも今回オレの国の代表はじいちゃんだしな。だから、俺はそれの付き添い。」


「クロガネ様が来てるんですか?」


「そうなんだよ、なんでも今回は英雄サマが来る気がするからワシが行くとか言い出してさー。自国の奥宮でじっとしてろっての。」


「クロガネ様って…現メラジーン国王の原竜王!?」


「…後で挨拶に行かないと怒られそうですね。」

 

「だろうねぇ。頑張れよ、情報屋。」



 三者三様の様子を見せているといつの間にか会場の前に着く。

 招待状とともに入っていた身分証を会場の扉の側に立っていた近衛に見せればゆっくりと扉が開かれ、義兄に手を引かれは中へと入る。

 中はまだ代表がやって来ていないのにも関わらず、賑やかな熱気に包まれていて、今日何度目かの驚きに包まれるのだった。

 

 

 

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