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英雄は静かに暮らしたい  作者: 雅樹
アリオクレイア編
5/20

短いです。


5/11、訂正しました。


 

「主様。」

 

 

 帰宅途中の家の側、人のあまり来ない小道の奥から声がかかる。

 足を止め、そちらに顔を向けると陰に隠れるように誰かが立っていた。

 


「あの子達は大丈夫だったかい?“黒”。」

 

「はい、問題はありませんでした、が…。」

 

「が?」

 

「“陽華姫”も昼間に合流しており、今自宅に三人でおります。」

 

「……。」

 

 

 片手で口元を覆い、小さく息を吐く。

 まさかこうも早く見つかるとは、本当に“あの人に渡されたもの”は面倒なことを自分にさせたいらしい。

 


「分かった。彼方の将軍には連絡は?」

 

「“紫”が接触に成功したと連絡はありました。何かありましたら、報告します。」

 

「よろしくね。」

 

 静かに頷き、黒と呼ばれた者は奥へと消えていく。

 それを見送れば何事もなかったように歩き出し、家の前に着く。

 耳を組ませば隣の家から声が聞こえ、楽しそうな三人分の声に苦笑を浮かべながら、そちらの扉に手をかける。

 

 

「ただいま…。」


「あ、お帰り義兄様。」


「あー…えっと、そちらの子は?」

 

 

 まるで自宅のように寛いでいる、イクトにそっくりな少女を見ながら尋ねる。

 正体は分かっているが、あえて戸惑った反応を見せるのを忘れずに。


「えっと、彼女はイクトの双子の妹のリルだそうです。昼間に商業地区で出会って、連れてきました。」


「そうか…。」


「義兄様?」



 苦笑を浮かべた、いつもと違う自分の様子に気づいたのであろう飄舞は首を傾げる。

 中にいた双子はただ黙って自分を見上げていた。

 まるで観察するかのように。



「はじめまして、飄舞の義兄です。」

 

「リルよ!」

 

「リルちゃんだね。保護者と一緒に王都まで来たのかな?」

 

「え、あ、その…。」

 

「リルもコ…保護者のところから勝手に離れてやって来たみたいで…その…。」

 

 

 申し訳なさそうに尻尾と耳を下げるイクトにリルもつられるように耳と尻尾を下げる。

 チラリと飄舞を見れば、何か聞いたのか察したのか、目が合えば少し困ったように笑うだけ。

 

 

「一応、二人の保護者には連絡を取りました。この家のことも教えていますから迎えに来てくれることでしょう。」

 

「っ…。」

 

 迎えに来てくれるというところで双子はビクッと肩を震わせる。

 まるで何かを怖がるような表情に、将軍(あいつ)は厳しくしているのか身分がバレるのが嫌なのかなんて思いつつも、言葉を続ける。

 

 

「きちんとこちらからも説明しますから心配しなくて良いですよ?」


「そうだよ、二人は二人なんだから。僕も二人の味方だし、イクトにとって僕は親友なんでしょ?」

 

「!うん!」

 

「イクトばっかりずるい!私もひょーぶと親友がいい!」

 

「うえっ!?」

 

「リルよりボクの方が飄舞と長い付き合いだもん!」

 

「そんなにかわらないでしょ!?」

 

 

 飄舞を挟み、フーッと毛を逆立てながら威嚇しあう双子。

 挟まれた当の飄舞は何故ここまで懐かれているのか分からず困惑な表情を浮かべている。

 今までこんなことがなかったため困惑するのは当然なのだが、面白いため放置である。

 

 

「に、義兄さん…。」

 

「自分で頑張りなさい。」

 

「「飄舞!!」」

 

「ふぁ!?はい!!」


  

 二人に名前を呼ばれ、反射的に返事をする。

 そのまま二人が満足するまで揉みくちゃにされているのをずっと見ていた。

 こんな風に賑やかな日常も悪くないと思いながら。

 

 

 

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