陸
本日二度目の更新です。
すごく短いです。
「随分と懐かしい記憶を見ているね。」
後ろからかけられた自分が一番良く知る声にはっと我に返ると今まで“眺めていた”自分の過去の記憶が消え、周囲がなにもない真っ白な空間へと変わる。
どうやら、中庭で昔のことを思い出そうとしたことで“ここ”に意識が落ちたようだ。
「…過去を振り返るのが人間なのでしょう?」
「そうだね。過去を振り返り後悔したり懐かしむのが人間だよ。そんな感覚はした?紫苑」
「…あまり良く分かりませんが、こんなことはあったなーくらいでしょうか。ところで、貴方こそこちらに来るのは久方ぶりですね、シューヤ。」
そう言いながらゆっくりと振り返るとそこには自分と瓜二つの容姿、違うのは紫の髪と瞳をもつ子供の頃の姿の自分が立っているということだろうか。
「随分、その姿がお気に入りのようですね?子供の頃の自分を見ているようで私は違和感がありますが。」
「まあ、好きだからね、この姿は。好きに動けるし。」
「そうですか。それより、まだ眠っていなくてよろしいのですか?」
「平気平気。長年、いろんな器に寄生したことで穢れていたけど、それの浄化ももう終わったし、そろそろ元の場所に戻ろうかなって思ってさ。」
「でしたら、お返ししますか?」
「ううん、紫苑の中にあるからこそ心地良いからそのままで。これからも一緒が良いしね。」
「恩がありますから、それが望みでしたら。」
「うん、よろしく。」
シューヤと自分がそう呼んだ少年は安堵したような笑みを浮かべ、側にやって来るのに合わせて自分もしゃがむ。
しゃがんだ自分の行動にシューヤは首に手を回し、抱きついた。
「君には苦労をかけるね。」
「苦労などありませんよ?」
「優しいなぁ。僕の…………は。」
自分にしか聞こえない声でシューヤは何かを言えばその体は光の粒子に変わり、体へと溶けるように入り込んでいった。
一人になり、先程シューヤの言った言葉を思い出せば、無意識に親に褒められた子供のような顔で微笑む。
「貴方の期待を裏切ることは絶対にしませんから。」
そっと自分の胸に手をあて、中にいるシューヤに誓うように言葉を紡ぐ。
しばらくそのままでいたが、ふと誰かが中庭で眠っているであろう自分の体に声をかけているのに気づき、意識は眠っている体に引っ張られていった。




